フィライン・エデン Ⅱ

夜市彼乃

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10.三日月の真相編

46三日月のひそむ風雲 ①

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「ええ、ええ……そうでしたか。帰ってくるのは明日でしたか……。すみません、勘違いしておりまして」
 鳥居の朱色が斜陽に照らされて、より一層鮮やかに輝く。色づいた木の葉も、石畳の参道も、金色の光を放ち、数時間先に迫りくる宵闇が信じられないほどの、まばゆい光景を作り上げている。
 そのずっと奥。立ち並ぶ灯篭の列を抜け、手水舎も通り過ぎた先、拝殿に向かって左手にある社務所兼家屋の前に、その女性は立っていた。否、女性と見紛うほどの長身ではあるが、まだ高校生くらいの少女だ。薄茶色の長い髪を揺らし、何度も頭を下げている。
 その後ろにもう一人、小柄な少女がいるが、こちらは腕を組んで、何やら不機嫌そうだ。
 社務所の玄関先にいる恰幅のいい婦人の、少し間延びした抑揚のある声に、長身の少女は大きな手ぶりとともに応じる。
「え? ……いえ、そんな! どうぞお構いなく。また改めて出直しますので。……はい、どうぞよろしくお願いいたします」
 何度も頭を下げる少女へ向けた、愛想のいい婦人の声。その後、かたんとドアの閉まる音がした。
 ふう、と息をつくと、少女は踵を返して、後ろで待っていたもう一人の少女のもとへ戻ってきた。まだ小学生と思しきあどけない彼女は、ふくれっ面でにらみ上げると、一言に精いっぱいの恨みを込めて言い放った。
「無駄足」
「ごめんごめん」
 長身の少女はばつが悪そうに笑うと、自分と同じ薄茶の頭をくしゃくしゃと撫でた。落胆しているのは彼女も同じだったが、やはり姉の自分がしっかりしなければならないし、体力があるとはいえ、まだ小学生の妹を、無駄に歩かせたことに良心の呵責を感じていた。
 今後、少々予定の変更が必要のようだ。ホテルの滞在も伸ばさなければならないし、こうなってはサプライズ訪問もやめたほうがいいだろう。神主婦人から、自分たちが来訪したことを本人に知らされれば、サプライズも何もあったものではないし、その上で無言で訪ねるのは、もはや無作法の感が強くなる。
 けれど、最優先事項として、可及的速やかに、このへそを曲げたかわいい妹を何とかしなければならない。
 少女は、妹の名を呼ぶと、幼子に向けるような笑顔とともに、お詫びの品を提案する。
「ホテルのロビーのゲームセンターで遊び放題」
 ぶすくれた妹は、仏頂面のまま、つんと明後日の方向を向いてしまった。お気に召さなかったようだ。
「アニメチャンネルのテレビカード購入」
 代替案を出してみるものの、さらにそっぽを向いてしまう。
「本日限定、午後十一時就寝の許可」
 体までそらして完全によそを向く。明後日どころか、来年か再来年の方向だ。
 遊び盛りで、アニメが好きで、いつも十時就寝に不満を垂れている妹の欲求を満たす、魅力的な埋め合わせだと思ったのだが、彼女の機嫌は直らない。
 腕を組み、視線をさまよわせ、うーんと考えた末、少女の頭の上でピコンと電球が光る。母が存命のうちから、天真爛漫な二人の妹の世話をしてきた長女の観察眼は侮れない。
 駅を出て最初に見えた曲がり角、ショーケースの中で確かに妹の視線を奪ったものを、彼女は知っている。
 わざと考え込むようにタメを作った後、ふてくされた妹を横目でうかがいながら、少女はぽそっと、魔法の言葉を唱えてみた。
「……駅前のケーキ屋さんで一品」
 その瞬間、来年だか再来年だかから、愛すべき妹は今ここに戻ってきた。その顔は、満面の笑みに彩られている。
「言ったね?」
 最初からその答えを待っていたかのように、ニッと晴れやかな笑顔。してやったりの小憎たらしい表情だが、幼いころから変わらぬ花より団子の精神は、姉の目には愛くるしくしか映らない。
 食い意地の張った根性は、父にも母にも似ていない。だが、強いて言うなら――。
 文脈は違えど、妹も姉と同じ人物を思い浮かべていた。それはそれはたいそういたずらっぽい、優越感に浸った笑みを浮かべて、彼女は弧を描く唇の前に人差し指を置いた。
「姉ちゃんには内緒やけんね、姉貴?」

***

 どんな朝にも、日は昇る。
 この季節、太陽は日増しにお寝坊になっていく。今日も昨日よりわずか遅めに顔を出した太陽は、早朝の静謐に包まれる神の社を見下ろした。
 日向の国から姉妹が訪ねてくる、その十時間前のことである。
 昨日の曇天のせいで一日ぶりとなった景色を眺めた太陽は、おや、と首をかしげた。
 いつもこの時間には、薄茶色の長い髪をした妖精のような少女が、外に出て袴姿で竹刀を振ったり、時々巫女装束で舞の練習をしたりしているのだが、今日はその姿が見当たらない。
 彼女こそ寝坊か、としばらく見守るものの、ついぞその日、宿坊の一室から居候の娘が出てくることはなかった。
 一日見ない間に、いったいどこへ行ってしまったのだろうか。
 そんなことを考えながら、天上へと昇りつつあった太陽は、やがて彼女とその双子の妹、そして彼女らの級友たちを、別の場所で見つけた。
 普段の居場所から遥か西。三方を山に囲まれた盆地に、極彩色を許さない碁盤目状の町並み。学術都市ならではの先進性を秘めながら、瓦ぶきも石畳も捨て去らずにゆかしく佇む、わびさびの地。
 いにしえの都――京都で。
「うぉぁぁ~っ、うまか~っ!」
「なあ、雷奈」
「生八つ橋、最っ高~! ニッキが癖になるぅ~っ!」
「ちょっと一言いいか」
「なんね? あ、わかった、氷架璃も欲しいっちゃろ? はい、あーん……」
「ちっげーよ! なんで映画村まで来ておいて、観光よりなにより真っ先に土産物屋に行って、生八つ橋買ってその場で食ってんだよ! 普通帰ってからだろ! 『修学旅行楽しかったなー、あんなとこ行ったり、こんなもの見たりしたなー』って思い出にふけりながら、家で開けるもんだろ! 見ろよこの町並みを! 感じろよこの雰囲気を! 今を生きろよ!」
 もどかしさに手をわきわきさせながら天を仰いで叫ぶ氷架璃を、通りすがっていくちびっこ忍者たちが笑いながら指さす。少し離れたところでは、浅葱色のだんだら模様をした羽織の男性が、苦笑しながらも、げにとうなずいていた。
 雷奈たちが立っているのは、両側を瓦屋根の家屋の並びに挟まれた砂の道だ。いくら京都が古き町並みといえど、未舗装路はきょうびお目にかかれない。フィライン・エデンで自然のままの道を歩き慣れ、希兵隊本部で瓦屋根の建物を見慣れている雷奈たちが特殊な部類だ。
 そうはいっても、軒先のたてすや赤ちょうちんなどは、フィライン・エデンでも目に映ることのない品々だ。まして、光丘では見たこともない。実際に映画撮影にも使われる、江戸の町の本格再現。おしなべて木造建築、そこに砂の道とあって、アスファルトにコンクリート塀の現代の街とは違う、温かい赤茶色が視界を満たしてくれる。
 雷奈たちが修学旅行で京都にやってくるのは、今回が二回目だ。フィライン・エデンと出会う前の年、最初の修学旅行で、皇学園中等部三年生御一行様は、京都を行先に選んでいた。
 時間のループといっても、そこで起きる出来事がそっくりそのまま繰り返されるわけではないため、修学旅行先の希望も変わるらしい。そういうわけで、去年は北海道が多数決で可決されていた。
 だが、その特徴や魅力が具体的に想像しやすい京都は、今年、再び思い出作りの地として返り咲いた。北海道、京都、長野、沖縄の四択のうち、沖縄に投票した雷奈たちの希望は敗れた形になる。
 しかし、さすがは観光業において一日の長を誇る京都、少女たちを落胆させはしなかった。要は、二年前に八坂神社や清水寺、金閣寺といったメジャーなスポットを堪能した彼女らを、京都国立博物館に下鴨、映画村と一つも被ることのない新天地にいざなったのだ。
 特に映画村への期待は当初から高く、ゆえに彼女らの気分が上々なのも無理はなかった。
 新撰組隊士の男性に比較的一番近いところに立っていた芽華実は、恥ずかしそうに笑って会釈すると、リュックサックからウェットティッシュを取り出して、雷奈の口を拭った。
「ちょっと大げさだったけれど、氷架璃の言う通りよ。せっかく京都まで来て、こんな面白い場所にまで来ているんだから、楽しまないと。フー、地図は出せた?」
「ええ、今ちょうど。……写真館、忍者屋敷、手裏剣道場……珍しいものでいっぱいね」
「ほんとだね」
 短く答えただけで、その後はどこか所在なさげにそわそわとしているのは、学ラン姿のアワだ。氷架璃は雷奈から生八つ橋を取り上げながら、どこか不愛想な彼をなじる。
「何さ、そんなに私たちと回るのが嫌か? 男子グループでわいわいやりたかったのかよ」
「別に君たちと一緒にいるのが嫌なんじゃないよ。ただ……」
 唇を尖らせる彼が蒸し返しているのは、二学期が始まってすぐにおこなわれた、修学旅行の行動班決めのことだ。
 アワにもそれなりに行動を共にする同性の級友たちがいるのだが、そろいもそろって彼を雷奈たちの班にぶちこんでしまったのだ。昼休みにその話が持ち上がり、何で仲間はずれにするのさ、とアワが抗議すると、彼らはニヤニヤ笑って一様にフーを目で示した。よく一緒にいて、仲良さげに話しているのを、日ごろからばっちり見られていたのである。大変余計なお世話だと思いつつも、その日のホームルームで、正式に別班に分けられてしまった。
「……なんか、いじられてる感じがしてさ」
「ハーレム状態にさせられてるのがか? いいじゃん、やらせとけよ。人外的なボロが出ても、この班ならモーマンタイだし」
 詳細な事情は話していないアワは、いささか的を外した氷架璃のフォローに不満げにしたが、やがて諦めたようにため息をついた。
「まあ、いっか。フー、どこか行きたいところはあったかい?」
「うーん、迷っちゃうけど……とにかく、この古い町並みを散策するだけでも楽しそうだなーって」
「ならば、このスタンプラリーに挑戦するのはどうだ?」
 しばらく沈黙を貫いていた雷華が、ずいっとスマホの画面を差し出した。シーズンイベントで、様々な場所に設置されているスタンプを集め、その絵柄の頭文字をつなげて合言葉にすると、景品がもれなく当たる抽選に参加できる、というものだった。もちろん、合言葉のSNSへの拡散は厳禁と書いてある。守られるのかどうかは定かでないが。
 氷架璃と芽華実も、そして幸せな味を胃に送り込んだ雷奈も、その画面をのぞき込む。
「へー、こんなのやってたのか。ってか、珍しいな。雷華がこういうのに積極的になるなんて」
「うむ、私も散策はしたいのでな。どうせならば、目的的におこなってはどうかと思った次第だ」
「雷華のお母さん代わりの耀さんが、時代劇が好きやったらしかと。それで、雷華も時々一緒に見てたけん、映画村は楽しみにしとったみたいとよ」
「時代劇……」
 もしかして雷華の口調って、と心の中で考察する氷架璃を置いて、話は進んでいく。
「でも、時間は間に合うかしら。こういうのって、かかりっきりになっちゃうでしょう?」
「そうなのか? このようなもの、実際に行ったことがないゆえ、わからぬのだ」
「確かに、時間切れで何のアトラクションも体験できないのはもったいないわね」
「あ、じゃあ、手分けするっちゃか?」
 名案、とばかりに雷奈が人差し指を立てる。
「普通のスタンプラリーって、一つの台紙に全部のスタンプがそろっとることが条件っちゃろ? ばってん、今回のスタンプラリーは、合言葉さえわかればよか。ってことは、手分けしてスタンプば集めて、持ち寄れば時間短縮になるったい」
「えー、せっかくの班行動なのに、バラバラに探すのかよ」
「まあ、その作戦なら十分に時間は余るから、面白いものを発見したらそれをシェアしてみんなで行くっていうのもありだよね」
「でも、一回バラバラになると、次みんな集まるのが大変よー。私たちの二の舞よー」
「そうか、それもそうだな……」
 ふむふむとうなずいていた一同は、直後、「ん?」とその首を横に倒した。会話人数が一人増えた気がした。
 ぱっと声のほうを見ると、そこにいたのは、シナモン色のロングヘアに花の髪飾りを付けた、編み上げリボンのブラウスの少女。しばらくぶり、と手を振ってあいさつする彼女に、雷奈たちは「なーんだ」と相好を崩した。
「リーフだったっちゃか。今日は店番はよかと?」
「ええ、休みをもらってるから」
「奇遇ね。こんなところで会うなんて……」
「こんな……」
「ところで……?」
 アワとフーの尻すぼみな言葉が、水を打ったような静寂をもたらす。しばらく、この状況を解釈する間があった後、
「……ええええ!? あれ!? なして!? なしてここにいるっちゃか!?」
「おい、ここ京都だぞ!? ワープフー…むぐっ」
「と、東京からは遠いはずでしょう? どうして……」
 周囲を気にして氷架璃の口をふさいだ芽華実に、リーフはこともなげに返す。
「どうしてって、旅行よ。アウトドアの秋ということで、みんなで京都旅行に来たの。日帰りだから、ここにしか来られなかったけれど、いい場所ね」
「よくやる……」
 彼女らにとっては、光丘ですら人間界という未開の地なのだ。その上で、さらに光丘から離れた土地に足を延ばす勇気たるや、若者の活力のなせる業だろう。
 と、そこで何かに気づいた氷架璃が首をひねる。
「ん、待てよ。みんなって誰だ?」
「ファイと、リンと、ユウと、彼女が誘ったシルクと麗楽うらら、それにユメよ。ここに入園するときに、わけあってばらばらに入っちゃってね。一応、ちょっと遊んでから集合とは言ったけど、なかなか集まんなくてさ。メールは送ってるんだけど、返事がなくて……」
 リーフはスマホを見ながら少々不安げにしているが、雷奈たちの不安は別方向で計り知れない。
 ファイは今日も何らかの理由で何らかを燃やそうとしていそうだし、リンはまだ義務教育を卒業したばかりの世間知らずだ。ユウはしっかりしているが、容姿が人間離れしているので目立っていないか気がかり。シルクと麗楽も同じ理由で浮いていそうなうえ、学者の性質上、好奇心に任せて無茶をしていないか心配だ。ユメに至っては、突然手のひらサイズのカプセル「ユークリッドの玉手箱~n個入ればn+1個入る、帰納法帰納法!~」からどでかい発明品を取り出して、補導では済まされない大ごとになりかねない。
 もう一度メールしようかしら……とスマホを操作するリーフの前で、うつむいたままの雷奈が、やはりうつむいたままの仲間たちへ向けて、音頭をとった。
「……みんな」
「おう」
「ええ」
「うむ」
「ああ」
「うん」
「……手分けしよう」
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