62 / 108
9.過去編
45一期一会と頬の色 ⑨
しおりを挟む
――直後。
同じくわずかな光が、うつろだったブロンズにともった。
「――ッ!」
九死での声なき反撃。暴発を恐れず、宮希は銃器と化した指に思いきり噛みついた。人の姿になっても残る猫特有の鋭い牙が人差し指に突き刺さる。
「な……ッ!?」
運が宮希に味方したか、あるいはチエアリの失態か、指先の源子は放たれることなく霧消した。ひるんだチエアリの隙をつく余力は、宮希にはない。
それは、チエアリの肩越しに見えた、東から現れた彼女の仕事だ。
「斬り裂け、游断ッ!」
風を切り、飛来する弧状の水の刃。振り返ったチエアリは、背中めがけて飛んでくるそれを、宮希を乱暴に突き飛ばしてかわした。標的を外した刃は、その向こうの宮希の手前で鋭く方向転換し、ブーメランのごとくUターンしていく。術者の元に戻った游断は、彼女の手に受け止められると、水となって零れ落ちた。
「そこまでだ、チエアリ!」
よく通るアルトが、水面に波紋を作るように響いた。部屋の中央に逃げた白衣の男を見据えるのは、想定外の姿をした敵を見ても、動揺より能力の看破を先んじた青い慧眼。後ろには、負傷した小豆色の猫を抱いた気弱そうな少女を控えさせている。
「ルシル……!」
霞冴の小さな叫びに、親友は視線だけで応じると、すぐさま抜刀して肉薄した。チエアリは冷静に右手を向けると、ルシルの足元の床に五芒星を浮かび上がらせる。足止めの星術、五針郭だ。
その厄介さを知っているルシルは、間髪入れずにジャンプし、文様の外に着地、再び走り出した。その二歩先に現れた星も身軽に飛び越える。
「ちょこまかと!」
時間差でいくつもの五芒星が床で光を放ちだす。文字通り足の踏み場もないチエアリとの距離は、ひとっ跳びに埋められるものではない。わずかな間隙を残して仕掛けられたトラップは、足をついた瞬間に発動し、一度つかんだらただでは離さないだろう。
だが、彼女にはわずかな間隙で十分だった。一目でルートを把握すると、地を蹴り、チエアリから逸れたあらぬ方向の足場に着地。鼻で笑ったチエアリを、次の跳躍時に体を空中で巧みにひねり、イレギュラーな動きで接近して見せて冷笑し返した。
チエアリの正面一メートル余り手前で背中を向けて着地し、隙ありと星術を撃つのを背面跳びにかわす。刀を持ったまま、手も使わずにバック宙で高さ一八〇センチにある頭を飛び越えると、逆に背後をとって落下ざまに斬りかかった。
「こざかしいね!」
ガキィン!と音を立てて刀が止められ、さしものルシルも目を見張った。チエアリの右手に握られた日暈のような武器を凝視する。飛輪は知っていても、チャクラムのように扱う手練は前代未聞だ。
チエアリは、霞冴にやったのと同じように、人間の腕力をもって刀を押し返した。押し負ければよろめくのを見越したルシルは、あえて柄から左手を離して抗力を逃がし、横にさばく。手ぶらを狙おうと、飛輪を持っていない左に回ったが、チエアリはそちらにも武器を顕現し、ルシルの胴を上下に分断しようと構えた。
「っ……!」
ルシルが果敢に迎え撃つ。左足を軸に体を回転させながら、動体視力を頼みに鎬で輪の外周を受け流す。抵抗を感じさせない一瞬のいなしの後、回転の動きを殺さず、その勢いで水平切りをかました。惜しくも胴をとらえ逃したが、白衣がテーラーカラーの下あたりからピリッと音を立てて横に裂けた。
チエアリが舌打ちし、残心をとるルシルの足を払った。長身の男の足は思っていたよりもリーチが長く、不覚にも仰向けに転ぶ。そこに星術のチャクラムが振り下ろされる前に、ルシルは思い切り足を跳ね上げて後転をきめた。目と鼻の先で、床に食い込む鋭い攻撃が炸裂するのを見ながら、高くバック宙に跳んで距離をとる。
その後を追おうとしたチエアリの背後で、幼くも力の限り張り上げた声が響いた。
「巡れ、渦波!」
振り返ると同時、視界いっぱいに広がる大きさの水の渦がチエアリに迫った。彼は不愉快そうに顔をしかめると、水流に手を持っていかれないよう方向を選んで渦波を切り裂いた。流れに押し流されて、少しばかり軌道がずれるが、すり鉢状の激流はすぐに形をゆがませ、ビチャチャッと床に零れ落ちた。その向こうに、やけに落ち着いた赤毛の少女を見た時には、肩と太ももの側面に二本、クナイが突き立っていた。
忌々しげにクナイを抜きながら、渦波をおとりにして回り込んだ灰色猫を睥睨する。
「人の姿とは驚いたが、目線が高いと小さな相手への注意がお留守だな」
「こしゃくな……!」
長い尾を振りぬいた体勢のコウに、星粒の散弾が降り注ぐ。彼は素早く逃れながら銀髪の少年の姿になると、足の裏のスパイクを利かせてぎゅっとターンし、左手に宿した不可視の刃で斬りかかった。チエアリが大きく後退してかわすと、見計らったようにその背後をルシルが襲う。心臓を狙った突き技と、チエアリが体をそらしつつ引き際に放った、本来の大きさである手のひらサイズの飛輪が交錯し、互いの肩から赤と黒の霧を散らさせた。
総司令部の窮地に現れた闖入者たちの乱戦を、霞冴は座り込んだまま目をむいて見ていた。そこへ、最後に西階段から上ってきた長身の少女が駆け寄ってきた。
「霞冴!」
「あっ……霊那……!」
亜麻色の髪をした同期の一人・神守霊那は、やって来るや否や、自身も傷だらけなのに霞冴に回復術を施した。背中に当てられた手から心地よい温度が伝わり、痛みや疲労が少しだけ遠のく。
「ありがとう、霊那。でも、私より宮希を……」
「見な、撫恋がやってるよ」
霊那が示すほうへ視線を振ると、白髪の少女が同じようにして宮希の回復に努めていた。そのそばには、白い首輪をした猫が倒れこんでいる。白虎隊所属の、一つ上の先輩だ。四名で突入したはずの白虎隊。最後の一人は見当たらない。
「霊那……隊長はどうしたの……?」
「三階でチエアリに……。……そっちこそ、永遠はどうしたんだ」
尋ねられた瞬間、胸に杭を打ち込まれたような痛みが走った。潤みだす瞳を見て、霊那はそれ以上を遮るように「そうか」とだけ言った。
「あたしたち執行部が四人や五人で頑張ってきたところ、三人で頑張ってきたんだな。しかも、うち一人は絶対にとられちゃいけない王将の駒。……きつかったろ」
声をつまらせてうなずく霞冴に、霊那は労りの笑みを見せて背中をさする。
「でも、もう大丈夫だ。生き残った仲間が終結した今、最後の戦いだよ。……霞冴、休みたいところだろうが、お願いだ。いま一度だけ、力を貸してくれ」
真摯な瞳でターコイズをのぞき込み、霊那は術を収めた。まだ完全に癒えきってはいないが、これ以上の術の使用は、彼女の負担になってしまう。
霞冴は手元に転がる二振りの刀に視線を落とした。多くの命を奪った大規模侵攻に、決着をつける時だ。自分だけじゃなく、他の誰かだけじゃなく、自分と、信頼しあった仲間たちで。ルシルやコウ、霊那たちと――そして、永遠とともに。
「うん……!」
両手で柄を強く握り、視線を挙げた先、ルシルとコウを薙ぎ払ったチエアリが咆える。
「一騎打ちを邪魔した上に袋叩きとは美しくないな! 君たち、それでも人間以上の存在か!」
「命をもてあそぶお前が美しさを語るなッ!」
立ち上がったルシルから、同じだけの気迫で怒号が飛んだ。
「人間は愚かだ。自然を破壊し、戦争を起こし、平気で命を奪う! そんな愚かな人間と同じ罪を犯すお前に、高尚な美しさなど語る資格はない!」
「何を……!」
神経を逆なでされたチエアリがまなじりを決する。肩を上下させて息を整えたルシルが、チエアリに視線を据えながら呼号した。
「出番だ、メル!」
「はい、ルシルさん」
壁際に寝かせたうとめを見守っていた双体のメルは、蚊の鳴くような声でそう応じると、足音も立てずに駆け寄り、猫の姿に戻ってパートナーの肩に飛び乗った。ルシルと同じ視線の高さになると、やはり小さな小さな声で言霊を唱える。
「伸びろ、撓葛」
二本の太いつるが床を突き破って伸び上がる。腕を拘束しようとうごめくそれらを、チエアリは鼻を鳴らして飛輪で払いのけた。つるはくねくねと動き回り、しつこくまとわりつこうとする。業を煮やしたチエアリは、両手から天の川のごとき銀色の奔流を放って根こそぎ断ち切った。ついでにその手をルシルとメルのほうへ向けようとして――。
「頭上注意、時すでに遅し、です」
ガゴン、と鈍い音がして、落下物がチエアリの頭部を直撃した。荒く伐採したような太い木の幹だ。つるに気を取られている間にメルが召喚した鈍器は、チエアリを一瞬とはいえ脳震盪状態に陥れた。ふらついた足元を銀の瞳で見つめるコウが、振り返りもせずに相棒を呼ぶ。
「いけ、波音!」
「あいさー!」
コウの隣に躍り出た波音は、メルほどの術の精度を持たないものの、精一杯の集中力で攻撃の殺傷力を引き上げた。
「斬り裂け、游断っ!」
飛び出した水の刃がチエアリのすねを切りつける。傷口から霧を吐き出させながらも、チエアリは何とか踏みとどまった。だが、もう身軽な回避はできまい。
「降りろ、メル!」
「下がれ、波音!」
それぞれの指示に従って後輩が離れるのと同時、ルシルとコウは足を封じられたチエアリを挟み撃ちに狙った。ルシルは刀で、コウは手刀で急所をさらいに行く。
「二人一緒に来たところで、こちらも武器は二つだ!」
チエアリは両手に大きな飛輪を顕出させると、双方に向かって腕を広げるように振り回した。肉薄するわずかな時間のうち、ほんの一瞬だけ二人の視線が合う。竹馬の友の目くばせは、この一瞬で事足りる。
チャクラムのように振り立てる中空円盤は、当たれば刃物並みの傷を負うこと請け合いだ。だが、二人の足は止まらなかった。刹那の逡巡が命取り。勇猛と無謀の境目を突き進み、両者の得物がたった一度の賭けに出た。
ギイィンッ……と、金属が細かく振動するような甲高い音が鳴り響く。同時、ルシルの二の腕と、コウの脇腹がえぐられ、床に赤いものがしたたった。
痛みに顔をしかめながらも、二人は力を緩めない。その間で、男は両腕を広げたまま動きを止めていた。
「なんだと……ッ」
腕を左右に引っ張られる。正しくは、両手に持った飛輪を、真ん中の空洞に差し入れられた刀と手刀によって。
捨て身の策略にかかり、移動も方向転換もできなくなったチエアリの正面から、霊那が疾駆する。ある程度の距離を確保すると、すでに詠唱を済ませた星術を言霊とともに撃ち放った。
「隔て、銀漢ッ!」
突き出した手のひらから銀色が噴き出す。水のようで水にあらず、川の急流のように見える極小の光の群れだ。鉄砲水のように迫る銀漢が、両手のふさがったチエアリを飲み込もうと迫る。
飛輪を解けば逃れようがあるが、そうすればルシルとコウは黙っていない。三方向からの攻めに追い詰められたチエアリは、目を血走らせて怒号をあげた。
「う……おおおああッ!」
口元に銀色が球状に渦巻いたかと思うと、咆哮とともに前方へ激流を噴出した。気勢を具現化したように、声の続く限り銀漢はほとばしり、霊那のそれとぶつかり合う。正面衝突した二方向からの銀漢は、接触面から大きく隆起し、押し負けたほうへ勢いよく流れ込んだ。激浪は霊那を舌打ちごと飲み込んで突き進み、壁に当たって波しぶきを上げる。
「愚策だったな!」
チエアリは両手からふっと飛輪をかき消した。力の均衡を崩してよろめいた二人へ、そのまま弧状に光る衝撃波を食らわせる。ルシルもコウも、大きく突き飛ばされて床を何周か転がった。
――その時には、すでに鈍く光る切っ先が白衣の背を見据えていた。
「やあぁぁぁッ!」
殺気に振り返ったチエアリに突進するアリスブルーの疾風。右の刀を盾のように構え、左の剣先で体の中心を狙いすます。その距離、もう幾ばくもない。
半身の姿勢からすぐさま後方へ正対し、チエアリが両手を突き出す。黒衣の奥の心臓へ向けて源子を蓄える。
「うおおおおおッ!」
「行けぇぇぇぇっ!」
チエアリの雄たけびと、倒れた二人の重なった絶叫が交錯する。白刃が閃く。一等星が輝く。
ほぼ同時に二つの光の筋が交差した。一方は胸の真ん中を貫いて背中で残心の反射光を放ち、もう一方は弧状の衝撃波となって高速で滑空した。
衝突音。散らばる星屑のきらめき。何にも阻まれることなく飛んでいった衝撃波が、向こう側の壁を大きくえぐった。
視線を胸元に手繰り寄せたチエアリが見たのは、白衣の下の黒いシャツに突き刺さった刀。その柄は、置いてけぼりにあったように誰の手にも握られていなかった。
そして最後に、彼は殺気が淡色の髪を翻して頭上を舞っていることに気づいた。
チエアリを飛び越えた霞冴が、空中で体をひねりながら、残った刀の柄頭を空いた左手で握る。
久々に両手で刀を持ったような、悪くない違和感を感じながら、手抜かりの一切ない最高の一太刀を振り下ろした。振り向きかけたチエアリの肩口から斬り込んだ刀身は、背中から突き出たもう一本の刀の先端を避けて通り、脇腹までを走り抜けた。
どす黒い霧が噴き出す。喉に引っかかるような苦悶の叫びが上がる。白衣をはじめとした衣服まで霧に変えながら、チエアリは最期に体をひねり、霞冴の喉をえぐろうと腕を伸ばした。空を引っ掻きながらにじりよった右手は、残心の姿勢を崩すことなく静止した霞冴の白い首へ――爪の先さえ届くことなく、ぼろぼろと崩れ落ちて黒煙と消えた。
断末魔の声も聞こえなくなった後に、乾いた音が落ちる。
役目を終えた永遠の刀が、音を立てて床に転がっていた。
「……終わった……」
霞冴はその場にガクンと座り込んだ。安堵より達成感より、強い倦怠感が先に心身を支配し、しばし呆然とした。
そこへ、ルシルとコウがふらつきながらやってくる。
「大丈夫か、霞冴」
「うん。ルシルとコウこそ……あっ、霊那は!?」
「あたしも無事だよ」
振り向くと、長耳の猫の姿になった霊那がゆっくり歩み寄ってくるところだった。
「この姿になって結界術を使ったおかげで、抵抗も少なくてしのぎ切れた」
「よかったぁ……」
まだ震える足で立ち上がる霞冴のもとへ、メルと波音も駆け寄ってきた。再び双体になったメルの腕の中には、丸くなったうとめが収まっている。最後に、左手で主体の先輩を抱え、右手を宮希の背中に添えた撫恋が歩み寄ってきた。これで、塔内で生き残ったメンバーはすべてのようだった。
宮希が、これ以上体力を消耗しないよう声量を落として問う。
「青龍隊、白虎隊、朱雀隊、総司令部……東西南北全ての棟から集結しているのか?」
「はい。全ての階段がこの部屋につながっていたのですね」
「おかげで倒せたようなもんだから、助かったね」
「ありゃ全員で協力しねえと無理だったな」
誰もかれも、緊張の糸が切れたのか、放心した面持ちだった。
そんな彼らを見回して、宮希が一言、口にした。
「……どういうことだ?」
同じくわずかな光が、うつろだったブロンズにともった。
「――ッ!」
九死での声なき反撃。暴発を恐れず、宮希は銃器と化した指に思いきり噛みついた。人の姿になっても残る猫特有の鋭い牙が人差し指に突き刺さる。
「な……ッ!?」
運が宮希に味方したか、あるいはチエアリの失態か、指先の源子は放たれることなく霧消した。ひるんだチエアリの隙をつく余力は、宮希にはない。
それは、チエアリの肩越しに見えた、東から現れた彼女の仕事だ。
「斬り裂け、游断ッ!」
風を切り、飛来する弧状の水の刃。振り返ったチエアリは、背中めがけて飛んでくるそれを、宮希を乱暴に突き飛ばしてかわした。標的を外した刃は、その向こうの宮希の手前で鋭く方向転換し、ブーメランのごとくUターンしていく。術者の元に戻った游断は、彼女の手に受け止められると、水となって零れ落ちた。
「そこまでだ、チエアリ!」
よく通るアルトが、水面に波紋を作るように響いた。部屋の中央に逃げた白衣の男を見据えるのは、想定外の姿をした敵を見ても、動揺より能力の看破を先んじた青い慧眼。後ろには、負傷した小豆色の猫を抱いた気弱そうな少女を控えさせている。
「ルシル……!」
霞冴の小さな叫びに、親友は視線だけで応じると、すぐさま抜刀して肉薄した。チエアリは冷静に右手を向けると、ルシルの足元の床に五芒星を浮かび上がらせる。足止めの星術、五針郭だ。
その厄介さを知っているルシルは、間髪入れずにジャンプし、文様の外に着地、再び走り出した。その二歩先に現れた星も身軽に飛び越える。
「ちょこまかと!」
時間差でいくつもの五芒星が床で光を放ちだす。文字通り足の踏み場もないチエアリとの距離は、ひとっ跳びに埋められるものではない。わずかな間隙を残して仕掛けられたトラップは、足をついた瞬間に発動し、一度つかんだらただでは離さないだろう。
だが、彼女にはわずかな間隙で十分だった。一目でルートを把握すると、地を蹴り、チエアリから逸れたあらぬ方向の足場に着地。鼻で笑ったチエアリを、次の跳躍時に体を空中で巧みにひねり、イレギュラーな動きで接近して見せて冷笑し返した。
チエアリの正面一メートル余り手前で背中を向けて着地し、隙ありと星術を撃つのを背面跳びにかわす。刀を持ったまま、手も使わずにバック宙で高さ一八〇センチにある頭を飛び越えると、逆に背後をとって落下ざまに斬りかかった。
「こざかしいね!」
ガキィン!と音を立てて刀が止められ、さしものルシルも目を見張った。チエアリの右手に握られた日暈のような武器を凝視する。飛輪は知っていても、チャクラムのように扱う手練は前代未聞だ。
チエアリは、霞冴にやったのと同じように、人間の腕力をもって刀を押し返した。押し負ければよろめくのを見越したルシルは、あえて柄から左手を離して抗力を逃がし、横にさばく。手ぶらを狙おうと、飛輪を持っていない左に回ったが、チエアリはそちらにも武器を顕現し、ルシルの胴を上下に分断しようと構えた。
「っ……!」
ルシルが果敢に迎え撃つ。左足を軸に体を回転させながら、動体視力を頼みに鎬で輪の外周を受け流す。抵抗を感じさせない一瞬のいなしの後、回転の動きを殺さず、その勢いで水平切りをかました。惜しくも胴をとらえ逃したが、白衣がテーラーカラーの下あたりからピリッと音を立てて横に裂けた。
チエアリが舌打ちし、残心をとるルシルの足を払った。長身の男の足は思っていたよりもリーチが長く、不覚にも仰向けに転ぶ。そこに星術のチャクラムが振り下ろされる前に、ルシルは思い切り足を跳ね上げて後転をきめた。目と鼻の先で、床に食い込む鋭い攻撃が炸裂するのを見ながら、高くバック宙に跳んで距離をとる。
その後を追おうとしたチエアリの背後で、幼くも力の限り張り上げた声が響いた。
「巡れ、渦波!」
振り返ると同時、視界いっぱいに広がる大きさの水の渦がチエアリに迫った。彼は不愉快そうに顔をしかめると、水流に手を持っていかれないよう方向を選んで渦波を切り裂いた。流れに押し流されて、少しばかり軌道がずれるが、すり鉢状の激流はすぐに形をゆがませ、ビチャチャッと床に零れ落ちた。その向こうに、やけに落ち着いた赤毛の少女を見た時には、肩と太ももの側面に二本、クナイが突き立っていた。
忌々しげにクナイを抜きながら、渦波をおとりにして回り込んだ灰色猫を睥睨する。
「人の姿とは驚いたが、目線が高いと小さな相手への注意がお留守だな」
「こしゃくな……!」
長い尾を振りぬいた体勢のコウに、星粒の散弾が降り注ぐ。彼は素早く逃れながら銀髪の少年の姿になると、足の裏のスパイクを利かせてぎゅっとターンし、左手に宿した不可視の刃で斬りかかった。チエアリが大きく後退してかわすと、見計らったようにその背後をルシルが襲う。心臓を狙った突き技と、チエアリが体をそらしつつ引き際に放った、本来の大きさである手のひらサイズの飛輪が交錯し、互いの肩から赤と黒の霧を散らさせた。
総司令部の窮地に現れた闖入者たちの乱戦を、霞冴は座り込んだまま目をむいて見ていた。そこへ、最後に西階段から上ってきた長身の少女が駆け寄ってきた。
「霞冴!」
「あっ……霊那……!」
亜麻色の髪をした同期の一人・神守霊那は、やって来るや否や、自身も傷だらけなのに霞冴に回復術を施した。背中に当てられた手から心地よい温度が伝わり、痛みや疲労が少しだけ遠のく。
「ありがとう、霊那。でも、私より宮希を……」
「見な、撫恋がやってるよ」
霊那が示すほうへ視線を振ると、白髪の少女が同じようにして宮希の回復に努めていた。そのそばには、白い首輪をした猫が倒れこんでいる。白虎隊所属の、一つ上の先輩だ。四名で突入したはずの白虎隊。最後の一人は見当たらない。
「霊那……隊長はどうしたの……?」
「三階でチエアリに……。……そっちこそ、永遠はどうしたんだ」
尋ねられた瞬間、胸に杭を打ち込まれたような痛みが走った。潤みだす瞳を見て、霊那はそれ以上を遮るように「そうか」とだけ言った。
「あたしたち執行部が四人や五人で頑張ってきたところ、三人で頑張ってきたんだな。しかも、うち一人は絶対にとられちゃいけない王将の駒。……きつかったろ」
声をつまらせてうなずく霞冴に、霊那は労りの笑みを見せて背中をさする。
「でも、もう大丈夫だ。生き残った仲間が終結した今、最後の戦いだよ。……霞冴、休みたいところだろうが、お願いだ。いま一度だけ、力を貸してくれ」
真摯な瞳でターコイズをのぞき込み、霊那は術を収めた。まだ完全に癒えきってはいないが、これ以上の術の使用は、彼女の負担になってしまう。
霞冴は手元に転がる二振りの刀に視線を落とした。多くの命を奪った大規模侵攻に、決着をつける時だ。自分だけじゃなく、他の誰かだけじゃなく、自分と、信頼しあった仲間たちで。ルシルやコウ、霊那たちと――そして、永遠とともに。
「うん……!」
両手で柄を強く握り、視線を挙げた先、ルシルとコウを薙ぎ払ったチエアリが咆える。
「一騎打ちを邪魔した上に袋叩きとは美しくないな! 君たち、それでも人間以上の存在か!」
「命をもてあそぶお前が美しさを語るなッ!」
立ち上がったルシルから、同じだけの気迫で怒号が飛んだ。
「人間は愚かだ。自然を破壊し、戦争を起こし、平気で命を奪う! そんな愚かな人間と同じ罪を犯すお前に、高尚な美しさなど語る資格はない!」
「何を……!」
神経を逆なでされたチエアリがまなじりを決する。肩を上下させて息を整えたルシルが、チエアリに視線を据えながら呼号した。
「出番だ、メル!」
「はい、ルシルさん」
壁際に寝かせたうとめを見守っていた双体のメルは、蚊の鳴くような声でそう応じると、足音も立てずに駆け寄り、猫の姿に戻ってパートナーの肩に飛び乗った。ルシルと同じ視線の高さになると、やはり小さな小さな声で言霊を唱える。
「伸びろ、撓葛」
二本の太いつるが床を突き破って伸び上がる。腕を拘束しようとうごめくそれらを、チエアリは鼻を鳴らして飛輪で払いのけた。つるはくねくねと動き回り、しつこくまとわりつこうとする。業を煮やしたチエアリは、両手から天の川のごとき銀色の奔流を放って根こそぎ断ち切った。ついでにその手をルシルとメルのほうへ向けようとして――。
「頭上注意、時すでに遅し、です」
ガゴン、と鈍い音がして、落下物がチエアリの頭部を直撃した。荒く伐採したような太い木の幹だ。つるに気を取られている間にメルが召喚した鈍器は、チエアリを一瞬とはいえ脳震盪状態に陥れた。ふらついた足元を銀の瞳で見つめるコウが、振り返りもせずに相棒を呼ぶ。
「いけ、波音!」
「あいさー!」
コウの隣に躍り出た波音は、メルほどの術の精度を持たないものの、精一杯の集中力で攻撃の殺傷力を引き上げた。
「斬り裂け、游断っ!」
飛び出した水の刃がチエアリのすねを切りつける。傷口から霧を吐き出させながらも、チエアリは何とか踏みとどまった。だが、もう身軽な回避はできまい。
「降りろ、メル!」
「下がれ、波音!」
それぞれの指示に従って後輩が離れるのと同時、ルシルとコウは足を封じられたチエアリを挟み撃ちに狙った。ルシルは刀で、コウは手刀で急所をさらいに行く。
「二人一緒に来たところで、こちらも武器は二つだ!」
チエアリは両手に大きな飛輪を顕出させると、双方に向かって腕を広げるように振り回した。肉薄するわずかな時間のうち、ほんの一瞬だけ二人の視線が合う。竹馬の友の目くばせは、この一瞬で事足りる。
チャクラムのように振り立てる中空円盤は、当たれば刃物並みの傷を負うこと請け合いだ。だが、二人の足は止まらなかった。刹那の逡巡が命取り。勇猛と無謀の境目を突き進み、両者の得物がたった一度の賭けに出た。
ギイィンッ……と、金属が細かく振動するような甲高い音が鳴り響く。同時、ルシルの二の腕と、コウの脇腹がえぐられ、床に赤いものがしたたった。
痛みに顔をしかめながらも、二人は力を緩めない。その間で、男は両腕を広げたまま動きを止めていた。
「なんだと……ッ」
腕を左右に引っ張られる。正しくは、両手に持った飛輪を、真ん中の空洞に差し入れられた刀と手刀によって。
捨て身の策略にかかり、移動も方向転換もできなくなったチエアリの正面から、霊那が疾駆する。ある程度の距離を確保すると、すでに詠唱を済ませた星術を言霊とともに撃ち放った。
「隔て、銀漢ッ!」
突き出した手のひらから銀色が噴き出す。水のようで水にあらず、川の急流のように見える極小の光の群れだ。鉄砲水のように迫る銀漢が、両手のふさがったチエアリを飲み込もうと迫る。
飛輪を解けば逃れようがあるが、そうすればルシルとコウは黙っていない。三方向からの攻めに追い詰められたチエアリは、目を血走らせて怒号をあげた。
「う……おおおああッ!」
口元に銀色が球状に渦巻いたかと思うと、咆哮とともに前方へ激流を噴出した。気勢を具現化したように、声の続く限り銀漢はほとばしり、霊那のそれとぶつかり合う。正面衝突した二方向からの銀漢は、接触面から大きく隆起し、押し負けたほうへ勢いよく流れ込んだ。激浪は霊那を舌打ちごと飲み込んで突き進み、壁に当たって波しぶきを上げる。
「愚策だったな!」
チエアリは両手からふっと飛輪をかき消した。力の均衡を崩してよろめいた二人へ、そのまま弧状に光る衝撃波を食らわせる。ルシルもコウも、大きく突き飛ばされて床を何周か転がった。
――その時には、すでに鈍く光る切っ先が白衣の背を見据えていた。
「やあぁぁぁッ!」
殺気に振り返ったチエアリに突進するアリスブルーの疾風。右の刀を盾のように構え、左の剣先で体の中心を狙いすます。その距離、もう幾ばくもない。
半身の姿勢からすぐさま後方へ正対し、チエアリが両手を突き出す。黒衣の奥の心臓へ向けて源子を蓄える。
「うおおおおおッ!」
「行けぇぇぇぇっ!」
チエアリの雄たけびと、倒れた二人の重なった絶叫が交錯する。白刃が閃く。一等星が輝く。
ほぼ同時に二つの光の筋が交差した。一方は胸の真ん中を貫いて背中で残心の反射光を放ち、もう一方は弧状の衝撃波となって高速で滑空した。
衝突音。散らばる星屑のきらめき。何にも阻まれることなく飛んでいった衝撃波が、向こう側の壁を大きくえぐった。
視線を胸元に手繰り寄せたチエアリが見たのは、白衣の下の黒いシャツに突き刺さった刀。その柄は、置いてけぼりにあったように誰の手にも握られていなかった。
そして最後に、彼は殺気が淡色の髪を翻して頭上を舞っていることに気づいた。
チエアリを飛び越えた霞冴が、空中で体をひねりながら、残った刀の柄頭を空いた左手で握る。
久々に両手で刀を持ったような、悪くない違和感を感じながら、手抜かりの一切ない最高の一太刀を振り下ろした。振り向きかけたチエアリの肩口から斬り込んだ刀身は、背中から突き出たもう一本の刀の先端を避けて通り、脇腹までを走り抜けた。
どす黒い霧が噴き出す。喉に引っかかるような苦悶の叫びが上がる。白衣をはじめとした衣服まで霧に変えながら、チエアリは最期に体をひねり、霞冴の喉をえぐろうと腕を伸ばした。空を引っ掻きながらにじりよった右手は、残心の姿勢を崩すことなく静止した霞冴の白い首へ――爪の先さえ届くことなく、ぼろぼろと崩れ落ちて黒煙と消えた。
断末魔の声も聞こえなくなった後に、乾いた音が落ちる。
役目を終えた永遠の刀が、音を立てて床に転がっていた。
「……終わった……」
霞冴はその場にガクンと座り込んだ。安堵より達成感より、強い倦怠感が先に心身を支配し、しばし呆然とした。
そこへ、ルシルとコウがふらつきながらやってくる。
「大丈夫か、霞冴」
「うん。ルシルとコウこそ……あっ、霊那は!?」
「あたしも無事だよ」
振り向くと、長耳の猫の姿になった霊那がゆっくり歩み寄ってくるところだった。
「この姿になって結界術を使ったおかげで、抵抗も少なくてしのぎ切れた」
「よかったぁ……」
まだ震える足で立ち上がる霞冴のもとへ、メルと波音も駆け寄ってきた。再び双体になったメルの腕の中には、丸くなったうとめが収まっている。最後に、左手で主体の先輩を抱え、右手を宮希の背中に添えた撫恋が歩み寄ってきた。これで、塔内で生き残ったメンバーはすべてのようだった。
宮希が、これ以上体力を消耗しないよう声量を落として問う。
「青龍隊、白虎隊、朱雀隊、総司令部……東西南北全ての棟から集結しているのか?」
「はい。全ての階段がこの部屋につながっていたのですね」
「おかげで倒せたようなもんだから、助かったね」
「ありゃ全員で協力しねえと無理だったな」
誰もかれも、緊張の糸が切れたのか、放心した面持ちだった。
そんな彼らを見回して、宮希が一言、口にした。
「……どういうことだ?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
リタイア賢者の猫ファーストな余生
HAL
ファンタジー
猫が大好きだが、重度の猫アレルギーの少年、カズキ。異世界に召喚され、魔法でアレルギーを直してもらったカズキは、夢見ていた猫との生活のため、復活した邪神と戦った。
そして、いつしか大賢者と呼ばれていた少年は、仲間と共に見事に邪神を討伐して帰って来た。
「俺、これからは猫と静かに暮らすんだ・・・」
もう、戦う必要はない。
だが、そんな彼を周囲の人間が放っておく訳もなかった。
これは、国王の奸計(?)によって学院へ入学したり、世界の秘密を解き明かしたり、猫の為に魔物と戦ったりと、色々な騒ぎを起こしながら、失った青春を取り戻していく、一人の少年の物語。
・・・・・・多分。
他サイト様でも掲載しております。
兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが
アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。
右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。
青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。
そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。
青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。
三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。
【登場人物紹介】
マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。
ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。
クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。
ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。
デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。
ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。
ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。
【お知らせ】
◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。
◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。
◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。
◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。
◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。
◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。
◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。
※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界から来た皇太子をヒモとして飼うことになりました。
おのまとぺ
恋愛
ある日玄関の前に倒れていた白タイツコスプレ男を助けた森永メイは、そのまま流れで一緒に暮らすことになってしまう。ロイ・グーテンベルクと名乗る男は実は異世界から来た本物の王子で、その破天荒な行動は徐々にメイの生活を脅かしはじめーーーー
「この俺の周りをウロつくとは大層な度胸だな」
「殿下、それは回転寿司です」
◆設定ゆるゆる逆転移ラブコメ(予定)
◆ヒーローにときめくようになったら疲れている証拠
◆作者の息抜き用に書いてるので進展は遅いです
更新時間は変動します
7:20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる