フィライン・エデン Ⅱ

夜市彼乃

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9.過去編

43一水盈盈と暗黒の師走 ④

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***

 みちねは学校、宮希と永遠は開発部室に出向いているとあって、霞冴一人で総司令部室の留守番をしていた時。
 一人でも黙々と作業する彼女に君臨者がご褒美を授けてくれたのか、青龍隊の報告書を持ってきたのはルシルだった。時間に余裕もあったので、少し立ち話をしていると、ルシルが廊下を気にしながら小声で尋ねた。
「司令官とは……まだ気まずいのか?」
 反射的に顔をこわばらせた霞冴は、下を向いてぼそぼそと答えた。
「うん……もう半年くらい」
 ルシルは、霞冴の気持ちはとっくに知っていた。そのような経験のないルシルは、的確なアドバイスができないことを申し訳なく思いつつ、日々自分のことのように気を揉んでいたのだった。
 ルシルが言葉を探していると、霞冴が力なく笑った。
「去年の今頃は、私の心はすっごく弾んでたよね。護衛官になれるって、信じて疑わなかった。宮希は他のひとが護衛官になる可能性も口にしてたのに」
 彼は自分の言ったことに忠実に判断した。過度な期待をしたのは霞冴のほうだ。
「……宮希は、負けた私にがっかりはしなかった。でも、腐ってる私には、もう幻滅してると思う。八月の初めごろまで、しきりに話しかけてきてくれてたけど、中旬くらいから、それもなくなったし。……忙しいのに、私のことなんてずっと気にかけてられないよね。昨日の夜も、どこかへ行かなきゃいけないみたいだったし、今日もせかせかしてる。前だって、仲が良かったわけじゃないけどさ。でも、心地よかったんだよ。……もう、あの時みたいには戻れないのかな……」
 これも、ルシルの経験のないことだ。学業も剣術も優秀だった彼女は、挫折らしい挫折をしたことがない。上司のうとめが言う「強さ」を追い求めて失敗することはあるが、まだまだこれからつかみとれる余地のあるものだ。やり直すことのできない霞冴の敗北と同一視することはできない。
 それでも、ルシルには、はっきりと言えることがあった。
「大丈夫だ、霞冴。お前次第だよ。お前が元に戻れば、その心地よさはまた迎えてくれる。司令官は、きっと変わっていないとも。だって、前と変わらず霞冴のことをよく見ているから」
「え……」
 確証があるかのように明言するルシルに、霞冴は青い瞳で根拠を問うた。ルシルは深い瑠璃色で見つめ返し、淡く笑った。
「この前、うとめ隊長のおつかいでここへ来た時、司令官に聞かれたんだ。霞冴は右腕をケガしているようだが、何かあったのかって。お前、コウに吹っ飛ばされて腕を打ったこと、司令官には言ってないんだろう?」
「う、うん……。っていうか、自分で湿布貼ったから、麒麟隊にも伝えてないし、知ってるのはルシルとコウだけのはず……」
「でも、司令官は知っていた。痛そうにしていたか、腕の動かし方に違和感を覚えたんだろう。ちゃんと見ているんだよ、お前のことを」
 どくん、と胸が鳴った。枯れた大地に鳴動とともに泉がわくような、そんな感覚だった。わきだした温かいものが、心をいっぱいに満たしていく。
「風羽谷さんにも、護衛官じゃなくても司令官は霞冴のことを見ていてくれる、って励まされたんだろう? 私もその通りだと思うよ。勇気がいるとは思うが、頑張って向き合ってみな」
 優しく、元気づけるようなまなざし。いつだって頼もしい親友に諭され、霞冴は覚悟を決める数秒ののち、力強くうなずいた。よしよし、と頭を撫でられる。
「応援しているぞ、霞冴」
 そう言ってルシルが去った後、霞冴は報告書を所定の位置に置きながら、心の中で独白した。
(宮希は、私があんな態度をとっても、どうにか話をしようとしてくれていた。それすらも私は避けて避けて、逃げてたのに、それでも宮希は私のことを見てくれてた。私のほうが年上なのに、いつまでこんなふうに甘えてるんだろう)
 霞冴は、幾本にも枝分かれした願望の根元に立った。認められたい。そばにいたい。守りたい。名前で呼んでほしい。その根源にあるのは、ただ一つ。
 好きだ。姉・みらいとも、幼馴染のつかさやまつりとも、親友のルシルやコウとも違う色彩と温度で、茄谷宮希のことが好き。
 どの願望も、そこから生まれたものだった。今、枝先で肥大化して幹をも傷めようとしている「護衛官になりたかった」という思いも、その一つ。だが、それは霞冴が本当に欲しかったものではない。
(私が欲していたのは、護衛官の座じゃない。私の願いは、彼に認めてもらうこと。彼のそばにいさせてもらうこと。彼を守ること。護衛官は、守りたいという望みの一つの手段でしかない。今の私は、そのたった一つにこだわって、手元に残せるはずの信頼や絆……もっと根っこに近い大切なものさえも捨てようとしている)
 胸のそばで、拳を握る。強く、強く。これが決意の固さだというように。
(向き合おう。ちゃんと謝って。そして、私は私のやり方で、宮希のそばにいる)
 この際、永遠の前でも構わない。誰に見せても恥じない自分で、宮希と正対しよう。
 そう誓い、一つ深呼吸した霞冴の背後で――音を立てて、扉が開く。
「あっ……」
 自然と振り返った霞冴は、小さな後輩とばっちり目が合った。執行着姿の彼が手にしているのは、開発部室に行くときに持っていた書類だろう。
「お、おかえり」
 無意識のうちに目をそらしながら、霞冴はふと、宮希の姿が見えないことに気づいた。
 一人で戻ってきた永遠は、霞冴が視線だけできょろきょろしているのを見て、書類を大机に置きながら一言よこした。
「司令官なら麒麟隊舎だよ」
「え、あっちにも用事あったんだ」
 出ていくときは、開発部室に行くとしか言っていなかったのに。だが、多忙な宮希のことだ、急遽予定が入ることもあろう。
 そんな霞冴を、おめでたいものでも見るような目で見ると、永遠は温度のこもらない声を投げた。
「なに勘違いしてるの」
「え?」
「倒れたんだよ。司令官。さっき、廊下で」
 その言葉を解すると同時、霞冴の顔からさっと血の気が引いた。出した声は震えていた。
「ど、どうして……何があったの? 熱でもあったの!?」
 尋ねてから、ハッとした。その時点で、去年までよく見ていたはずの、彼の顔色も眼中になかったことに気づいたのだ。前までは、忙しくて疲れているとき、青白い顔をしているのを見ては心配していたというのに。
 言葉もなくうつむいた霞冴の耳に、追い打ちのため息が届いた。
「……ほんと、何にも気づいてなかったんだね」
 返す言葉もなかった。黙り込んだ霞冴を見て、永遠は白銅の瞳をよそへとやった。
「……ぼくは司令官の代わりに荷物を持って帰ってきただけで、あとで麒麟隊に戻って様子を見に行くつもりだったけど……」
 ギィ、と椅子の音がした。ゆっくりと顔を上げた霞冴を、足を投げ出して座った永遠が見つめている。彼が腰を下ろしているのは、窓際、通信機器やディスプレイが置かれている机の前だ。
「……まあ、ついでだから、留守番代わってあげてもいいよ。今、白虎隊が出てるみたいだから、モニタリングもしとくし」
 ぶっきらぼうな表情と声。そのせいで、一瞬耳を疑ったが、霞冴はすぐにうなずいて走り出した。
「ありがとっ!」
 叫んで、総司令部室の扉をはね開け、中央隊舎も飛び出す。似たような外観の建物の中から、たがうことなく麒麟隊の擁する医務室がある棟を見つけて、慌ただしく中に入った。急ブレーキがギリギリ利くくらいの速度で廊下を駆け抜け、目当ての部屋へたどり着くと、乱暴なノックとともに室内へと足を踏み入れた。
「宮希っ……!」
「時尼さん?」
 入口に一番近いところにいた白衣の隊員が驚いた顔で呼んだ。麒麟隊で最も新人の少女、春瀬深翔だ。年上だが、つかさと同期なので、そのつながりで少しだけ話したことがある。
「み、深翔さん、宮希が倒れたって……!」
「落ち着いてください、時尼さん。もう安定しているので、大丈夫ですよ」
 深翔の口調には余裕があり、おそらく本当に大事ではないのだろう、と推測された。けれど、だからといってすぐに安心することはできなかった。
 まだ不安そうな霞冴に、深翔は少し待つよう言いおいて、カーテンつきのベッドの並びへ足を運んだ。奥のほうへと消えた深翔を、他数名の麒麟隊員のちらちらとした視線を浴びながら、じっと待つ。
 やがて、深翔が手で指し示した、最も奥の隅っこにある一角への立ち入りが許可された。四方を囲む薄桃のカーテンをそっとめくると、薄手の掛布団に胸の下まで覆われた細い体が、目の前の寝台に収まっていた。
「宮希……!」
 裏返る寸前の声で呼び、霞冴は横向きに寝ている宮希の肩に触れた。癖なのか、枕を抱えるようにして目を閉じていた彼は、そっとまぶたを上げて霞冴を見上げた。
「時尼……なぜ……」
「永遠に聞いたの、倒れたって。どうしたの、大丈夫?」
 いつにも増して顔色の悪い宮希は、一度小さく息を吐き、触れれば壊れそうな小声で答えた。
「貧血を起こしただけだ……開発部室から帰る途中、くらっときた……」
 世間的には、ようやくその職の新人を抜け出そうかという年齢だ。だが、三大機関の一角を担う最高司令官の仕事量は、その比ではない。十分、体への負担も大きいだろう。
 ちゃんとご飯を食べているか、と聞きかけて、霞冴は口をつぐんだ。去年は、食が細くなっていれば、それにも気づけていたのに。今年度に入り、どれだけ自分が宮希を見ていなかったかを思い知らされた。
 何も言わずに宮希を見つめていた霞冴に、彼はまばたきを一つだけして、言葉をかけた。
「なんか……久しぶりだな」
「え?」
「お前がこうして目を合わせてくれるの。名前を呼んでくれるのも」
 ズキ、と胸の奥が痛んで、霞冴は反射的に目をそらした。けれど、すぐに、それがずっとやってきた逃げだと気づいて、宮希の目に視線を戻す。彼は、先ほどより少し力を取り戻した声で言った。
「すまなかったな、時尼。お前はずっと悩んでいたのに、きちんと話をするのにこんなにも長い時間がかかってしまった。表面だけ撫でるような対応をして、お前の心の深いところに関われていなかったな」
 霞冴は目を見開くと、懸命に首を振った。
「あ、謝るのは私のほうだよ! ごめんなさい、護衛官になれなかったからって、すねたような態度とって。……すごく、反省してる」
「構わないさ……お前も、剣術にプライドがあったんだろう。悔しかったのはわかる」
「……それもあるけど、でも……」
 違う、と霞冴は唇をかんだ。確かに、打ち込んできた時間、道場での戦績、師範から奥義を教わるほどの実力。それらが、剣術では負けたくないという強い思いを形成している。それは、矜持と呼べるものだ。
 あの時、霞冴の強みであるスピードの面で永遠に凌駕されたのは悔しかった。プライドが傷ついたというのも否定できない。だが、それ以上に、全力をかけたあの戦いで勝ちたかったのは――。
「宮希」
 霞冴は、彼の冷えた右手をぎゅっと握った。前かがみになって、できる限り目線を合わせる。驚いたようにわずかに揺れる瞳を正面から見据えて、霞冴はありったけの心を言葉に込めた。
「私、やっと気づいた。私は護衛官になりたかったんじゃない。キミを守りたかったの。それが、私の本当の願望。だから……護衛官じゃなくてもいいから、キミを守らせて。そこに刀はなくとも、この手で宮希を支えさせて」
 葛藤の末にたどり着いた信念をたたえるシアンを、宮希は目をそらすことなく見つめていた。驚きの波は過ぎ去り、凪の湖面のように静かなまなざしを霞冴に注ぐ。
 馬鹿にされるだろうか。否定されるだろうか。
 それでもいい。これが、自分の本当の気持ちだ。
 霞冴は一瞬たりとも視線をそらさず、返事を待った。
 やがて、宮希はふっとわずかに目を細めると、
「……ああ。頼むぞ、時尼」
 そう言って、霞冴の瞳の中に初めて微笑を映した。見間違いかと思うほど、淡い淡い笑みだった。
 変わらぬ呼称が傷跡にしみる。けれど、ようやくまっすぐに視線を受け止められた。そこに込められた信頼を感じた。それだけで、霞冴は心から笑うことができた。
 これからは、今の気持ちを忘れることなく力を尽くしていきたい。光り輝くものに魅了され、ぶれそうになったときは、ここに戻ってくればいい。そうすれば、もう道をたがえることなく、本来の目標に向かって進んでいけるだろう。
 心地よい沈黙の中、再び通いあったことを確かめ合う間があって――。

 凶報が、温かい空気を鋭く切り裂いた。

「ピッチ……?」
「……オレのだ」
 枕元に置いていた黒い筐体を手に取ると、宮希はゆっくりと体を起こした。
「起き上がって大丈夫なの?」
「もう平気だ。大事をとっていただけで」
 早口でそう言うと、彼はピッチに応答した。
「オレだ、宮希だ。どうした、永遠」
『体調の優れないところすみません。緊急です』
 彼の声は切迫したものだった。宮希がここへ運び込まれた時、「ゆっくり休んでてください」と言い置いて行った永遠が連絡を取ってくるほどだ。よほどのことと見受けられた。
 わずかに漏れた声を、霞冴も拾っていた。緊張した面持ちは彼女も一緒だった。
「何があった」
『派遣中の白虎隊から連絡がありました。苦闘の末、二名が意識不明の重体です。すぐに麒麟隊への手配を、とのこと』
「わかった、直接伝えておく。容体は。運んで帰れそうか」
『一名は副隊長で、背中に深い刺傷を負っています。出血多量。もう一名は遠野撫恋さん、外傷は目立ちませんが、電撃を受けています。どちらも今は主体なので、連れて帰るには問題ないそうです』
「了解した。……ダークの反応は一つだけだったはずだが、そんなに手ごわかったのか」
『いえ、ダークは無傷で討伐しました。問題はそのあと現れたものです』
「なに?」
 永遠は、一度唾を飲み込んで、最も危惧されていた事態の発生で宮希の鼓膜を震わせた。
『――チエアリです』
 広い目で見れば、これがかの侵攻の幕開けだった。

***

 のちの報告によれば、一部始終は次の通りだった。
 西部地方、親松から御里山を超えた向こうにある町に現れたダークを倒した白虎隊は、帰路についていた。
 ちょうど御里山を迂回して帰る途中だった。閃光とともに、五名の隊員は分断された。出所を探ると、彼らと同じ身体的特徴をした黒猫だった。
 クロでもダークでもないその姿を見て、真っ先にチエアリだと気づいた隊長は、すぐさま陣形を整えるように指示。しかし、分断された状態から態勢を立て直すまでの間に、撫恋がチエアリの雷術の餌食となった。残りが速やかに反撃に移ったものの、通常の雷猫よりもはるかに巧みな磁場操作で刀を奪われた副隊長が背中を刺された。とっさに主体に戻って的を小さくした彼は、二撃目を逃れ、その隙を突いて隊長や霊那らが何とか致命傷を食らわせた。決死の猛攻によって、チエアリは黒い霧と化して消えていった。最期に不気味な笑みを残して――。
 麒麟隊へと担ぎ込まれた撫恋は、数時間ののちに意識を回復し、次の日には歩けるようになった。だが、刀で体を貫かれ、あまつさえチエアリによってわざと刀身を引き抜かれた副隊長は、失血により息を引き取った。霞冴たちが希兵葬を体験したのはこれが初めてだった。
 七月の三者会議の時点で、宮希は、そして残りの二機関の長は、この事態を予見していた。豪雨による土砂崩れで復興が遠のき、市民が鬱憤を募らせているはずの親松近辺で、クロやダークが多く出現するかと思いきや、逆に減ったという現象。これを説明する一つの可能性は、検出センサーに引っかからない場所に留まっているため、というものだ。しかし、彼らは通常、気ままに移動することを考えると、長いスパンで目減りしたままというのは不自然だ。
 そうでないとすると、次に考えられるのは格段に厄介なケース。負の感情はたいていクロを生み、より強い、あるいは多数の感情だとダークが生まれる。また、クロが多数集まってダークに生まれ変わることもある。同様にしてもう一段階進むと、ダークよりも凶悪な存在、すなわちチエアリが生まれてしまう。
 仮に、親松の住民の不服や怒りが多量のクロやダークを生んだとして、それらが離散しない間にどこかでチエアリとなった場合、当然クロやダークの検出数は減る。厄介なことに、チエアリはクロ類検出センサーには反応しない。このセンサーは、猫たちのクロの気配を感じるメカニズムを応用したものであるため、猫たちが感じることのできないチエアリの気配は、センサーでも検知できないのだ。よって、邪悪な者たちが一見減ったように見えて、より厄介な存在がどこかに隠れ潜んでいる、という状況が出来上がってしまう。三人は、この事態を危惧していたのだ。
 宮希は、三者会議があった直後の寄合で、チエアリの出現の可能性を隊員たちにも示唆していた。そのため、彼らにとって、今回のことはまったくの寝耳に水というわけではなかった。しかし、災いは忘れたころにやってくるもの。一仕事終えて息をついたところで、気配もなく忍び寄ったチエアリに奇襲されたのだった。
 この一件の後、宮希は三者会議に加え市民に発信するための情報提供で多忙を極めた。次の日も、その次の日も、宮希が外出するたびに、永遠がちょこちょことついていくのを霞冴は見送っていた。かつてならば、それだけで心が腐っていく心地だったが、今の彼女は胸を張って留守を任せてもらっていた。
 少しでも仕事を進め、もう宮希に無理をさせることのないように。疲れているようであれば、ペンも書類も取り上げて、休め休めの一点張りをしたりもした。これが、心機一転した霞冴なりの宮希の守り方だった。
 一方、執行部はしばらく穏やかでない雰囲気が続いていた。次は我が身かと構えるルシルは、メルに「死ぬときゃ死ぬんです」と身も蓋もない励ましを受け、うとめはカヅチと一度、真剣な作戦会議を行った。動揺するみゅうや後輩をなだめるコウは、彼女らの不安を顧みようとしない隊長のレノンに不満を募らせていた。副隊長がやられる瞬間を見ていた霊那は、気丈に振舞いながらも、少なからずショックを受けており、気を失っていたおかげで惨状を目の当たりにすることのなかった撫恋が、自分も危なかったものの、逆に彼女を慰める役目を果たした。
 幸いなことに、その後、チエアリが出現することはなかった。十分な警戒をして出動するものの、標的のダーク以外が姿を現すという不測の事態には至らなかった。
 だが、依然として親松周辺のダーク出現数は低いままだった。おかげで復興も順調に進んでいたので、それが功を奏しているのかもしれないが、土砂崩れがあったあの時期のリバウンドがチエアリ一体で済んだというのは怪しい、と宮希は神経を尖らせていた。
 そして、十二月。
 冬はくろというが、ここまで暗黒の年の瀬は、今を生きる若き隊員たちにとってまったくの未経験であった。
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