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8.神隠し編
37問二:運命の日はいつですか 前編
しおりを挟む「ヴァン様……そのお顔」
「ああ。私は火傷など負っていなかったのだ。全てはエルの本性を確かめるための狂言だった」
キラキラ輝きを放っているようにも見える銀色の髪。
包帯から解放された上半身は筋肉が引き締まり、たくましい。
この世の奇跡だとしか思えないほどのその顔立ち。
そんなヴァン様が私を優しそうに見つめている。
私は恥ずかしくなり、目を逸らした。
「君にはすぐ明かすつもりだったんだ。だけど、どうしても君を試したくなってしまった」
「試す……ですか?」
「ああ。君はエルと同じで、私の外見と財産が目的なのではないかと思ってね……最初はエルの気持ちを確かめるためだけだったが……君を一目見た瞬間に、目的が変わってしまった」
ヴァン様は眩しそうに目を細め、私の顔を見つめ続ける。
「自分の中身を見てほしかったんだ。そして君は私の容姿など気にすることなく、普通に優しく接しくれた。それが嬉しくて……気が付けば私の心の中はクリスで一杯になっていたんだ」
「…………」
「エルの目的はすでに把握している。クリスが何故ここにいるのかも理解している。私は既に全部分かっていたんだよ。そして私は君を試していた。」
そう言うとヴァン様は跪き、私の手を取る。
「お互い様なんだ……だから気にしないでほしい。そして私を許してほしい。そして……クリス。私と一緒になってほしい」
「ヴァン様……」
涙が止まらない。
まさか、ヴァン様からそんなことを言われるだなんて。
あまりの感激に言葉が出なかったので、代わりに涙を流しながら大きく頷く。
ヴァン様はホッとし、素敵な笑みを向けてくれた。
私はグチャグチャになった顔で、笑顔を作る。
不細工なんだと思う。
だけど彼は、嬉しそうに笑っている。
それだけで幸せだった。
いつか幸せに……
その幸せが、本当に舞い込んでくるなんて。
本当に夢のようだ。
その上、ヴァン様という素晴らしいお方から求婚されるなんて。
「エルリーンの考え通り、彼女との婚約を破棄させてもらおう」
「はい。妹の望みのままに、ですね」
クスクスと笑い合う私たち。
こうしてエルの計画通り、ヴァン様と彼女の婚約を解消させることとなった。
いまだに信じられないが、優しくて暖かいヴァン様は目の前にいる。
彼は微笑を浮かべながら、私の身体を抱きしめた。
私はこれ以上ないほどの幸せを感じながら、彼の胸に抱かれ続ける。
どうか夢じゃありませんように。
そしてこの幸せが永遠に続きますように。
私はそう祈りながら、ヴァン様の胸の鼓動を感じていた。
「ああ。私は火傷など負っていなかったのだ。全てはエルの本性を確かめるための狂言だった」
キラキラ輝きを放っているようにも見える銀色の髪。
包帯から解放された上半身は筋肉が引き締まり、たくましい。
この世の奇跡だとしか思えないほどのその顔立ち。
そんなヴァン様が私を優しそうに見つめている。
私は恥ずかしくなり、目を逸らした。
「君にはすぐ明かすつもりだったんだ。だけど、どうしても君を試したくなってしまった」
「試す……ですか?」
「ああ。君はエルと同じで、私の外見と財産が目的なのではないかと思ってね……最初はエルの気持ちを確かめるためだけだったが……君を一目見た瞬間に、目的が変わってしまった」
ヴァン様は眩しそうに目を細め、私の顔を見つめ続ける。
「自分の中身を見てほしかったんだ。そして君は私の容姿など気にすることなく、普通に優しく接しくれた。それが嬉しくて……気が付けば私の心の中はクリスで一杯になっていたんだ」
「…………」
「エルの目的はすでに把握している。クリスが何故ここにいるのかも理解している。私は既に全部分かっていたんだよ。そして私は君を試していた。」
そう言うとヴァン様は跪き、私の手を取る。
「お互い様なんだ……だから気にしないでほしい。そして私を許してほしい。そして……クリス。私と一緒になってほしい」
「ヴァン様……」
涙が止まらない。
まさか、ヴァン様からそんなことを言われるだなんて。
あまりの感激に言葉が出なかったので、代わりに涙を流しながら大きく頷く。
ヴァン様はホッとし、素敵な笑みを向けてくれた。
私はグチャグチャになった顔で、笑顔を作る。
不細工なんだと思う。
だけど彼は、嬉しそうに笑っている。
それだけで幸せだった。
いつか幸せに……
その幸せが、本当に舞い込んでくるなんて。
本当に夢のようだ。
その上、ヴァン様という素晴らしいお方から求婚されるなんて。
「エルリーンの考え通り、彼女との婚約を破棄させてもらおう」
「はい。妹の望みのままに、ですね」
クスクスと笑い合う私たち。
こうしてエルの計画通り、ヴァン様と彼女の婚約を解消させることとなった。
いまだに信じられないが、優しくて暖かいヴァン様は目の前にいる。
彼は微笑を浮かべながら、私の身体を抱きしめた。
私はこれ以上ないほどの幸せを感じながら、彼の胸に抱かれ続ける。
どうか夢じゃありませんように。
そしてこの幸せが永遠に続きますように。
私はそう祈りながら、ヴァン様の胸の鼓動を感じていた。
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