フィライン・エデン Ⅱ

夜市彼乃

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7.追想編

33姫殺しのラピスラズリ 前編

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 風切り音。乾いた打突のが炸裂し、鍔迫り合いが始まる。水を打ったように静まり返った道場で、木刀が触れ合って生まれる小さなささやきだけが耳に届くのが、見る者たちの緊張を引き上げていく。
 三名の審判に見守られる中、対峙する二人。赤い布の額金をした長身の少年は、苛立たしげに眉根を寄せていた。自分の肩までしかない小柄な少女が、怖じもせずににらみ上げながら体重をかけてくるのが、小生意気で仕方ないのだ。
 少年は、木刀を握る手に力をこめ、勢いよく少女を突き飛ばした。観戦者たちはどよめくが、大きく飛ばされた少女が、転ぶ前に強く床を蹴り、高く後方宙返りをして着地するさまを見て、一層大きな感嘆を漏らし、拍手まで付加した。高い身体能力を持つ猫とはいえ、ここまでの身のこなしを見せる者は少ない。
 宙を舞っていた、額金の白い帯と、一つに結わえられた長い黒髪が、華奢な背に落ちるより早く、少女は床を鋭く蹴っていた。甲高く勇ましい叫声をあげながら、上背のある相手にも果敢に飛びかかる。弾丸のごとく突っ込んできた少女に面食らいながらも、少年は斬撃を辛くも受け止めた。だが、とっさに防御した彼の手元が緩んだのを、少女は見過ごさなかった。
 カカァン、と連続して二つの音が反響する。次の瞬間には、木刀が一本、弧を描いて飛んでいき、大きな音を立てて床にたたきつけられた。持ち主が、それを拾いに行くことはない。切っ先が少年の喉仏に突き付けられている時点で、三人の審判が一様に白旗を挙げている時点で、勝負ありだ。
 割れんばかりの拍手を浴びながら、両者は礼をして場外へと退いた。ギャラリーの視線は、額金を外して髪を整える、齢九つの少女に集まっている。
「さっき、いったい何をしたんだ?」
「いったん下に打ち落としてから、手元が緩んだところですり上げたんだよ。にしても速かったな」
「あの強い子、誰?」
「双体は見たことないのか? 村長のお孫さんだ」
「村長の? 病弱な、あの?」
「違う違う、分家のほう」
「ああ――」
 タオルで汗をぬぐっていた少女は、そうささやきあう主体双体入り乱れた観客たちの方を向いて、ふと目をしばたたかせた。瑠璃色の瞳は、その奥、道場の外から中をのぞく人物を、じっと見つめていた。
 小声の賞賛には目もくれぬ彼女の耳を、どこかの誰かの声が素通りする。
「――河道さんとこのお嬢さんか」

***

 稽古終わり。道具を片付け、モップがけも済むと、彼女は紺袴の裾をひるがえして、戸に背を預けて待っていた彼のもとへ駆け寄った。まだ汗の浮かぶ顔をほころばせて尋ねる。
「お待たせ、コウ。どうしたの、私に用事でしょう?」
「用事ってほどでもねえけど、おつかいの帰りに通りかかったから、一緒に帰ろうと思ったんだよ。もう稽古も終わる時間だろうって思ってさ。けど、長引いてたみたいだな。まさか練習試合だったとは」
「うん、だからひとも多かったでしょう。……ずっと待っててくれたんだ」
「顔見せた以上、先に帰るのも悪いからな」
「ふふ、ありがとう。でも、ごめん、もう少しかかる。シャワーを浴びてきたいから」
「構わねえよ、待ってるから。行ってきな」
「はーい」
 うなずくと、足早に道場の裏へ向かう。これ以上待たせまいと急ぐ幼馴染に、コウは「滑るなよー」と声をかけた。
 河道家といえば、ここ垂河たるが村で知らない者はいない。分家とはいえ、村長の家系であり、コウの家の倍ほどもある邸宅に住んでいる。もちろん、本家はそのまた倍ほどあるのだが、コウにとっては同じようなものである。そんな河道邸が、何の因果か、ただの大工の家である大和家のすぐそばに位置していた。そういうわけで、コウと河道家令嬢・ルシルは、竹馬の友と呼べる関係であった。
 家族以外では誰よりもルシルのそばにいたコウから見て、彼女の印象を一言で表すなら、「凛々しい」というものだった。濃い青色の目はきりりとツリ目がちで、声は高すぎず落ち着いたトーン。謹厳実直で頭もいい。通っている剣術道場では、年上の男子も負かすほどの実力の持ち主だ。女の子らしすぎない、彼女のそんなところが、コウにとっても親しみやすかったのかもしれない。
 しばらくして、湯あみを終え、着替えたルシルが、髪も拭かずに戻ってきた。腰まで垂れる長い黒髪は、ワンピースの背中にぴったりと張り付いてしまっている。
「おい、服濡れてるって。風邪ひくぞ」
「だって、コウが待っていたから、急いで……」
「気にしなくていいっつの。ほら、タオル貸せ」
 ルシルが、手にしていたタオルを渡すと、コウはそれで濡れた髪を丁寧に包んだ。
 自分の頭なら、乱暴に拭って終わりだ。だが、この見事なロングヘアを手荒に扱うわけにはいかない。黒蜜を流したように艶やかで、指を通せば引っかかることなくするりと抜けていく。良家の淑女らしく、と本人も手をかけて伸ばしているのだ。風が吹けばきれいになびき、夕焼けの中では美しいコントラストを見せ、宵闇の中でさえ月の光を反射して存在感を示す。そのたびに、隣に立つコウの目を奪ってやまなかった。
「……どうしたの?」
 声をかけられ、コウはハッと我に返った。いつの間にか手が止まっていたようだ。
 慌てて、再び髪の水気を取ってやりながら、彼はごまかすように問うた。
「そ、そういえば、練習試合だから生徒の親兄弟が来てたんだろ? お前のとこは?」
「母さんも父さんも、午前中は忙しいんだって。でも、もう昼も過ぎたし、ご飯の準備をしているのではないかな。そうだ、よかったら、お昼は私の家でどう?」
 普通のひとなら恐れ多いと遠慮するセリフだ。だが、コウはもう数えきれないほど、河道家の敷居をまたいでいる。ルシルもまた、コウの家に遊びに行ったり、そこで食事の厄介になったりしている。今さら気兼ねすることでもなかった。
 おつかいの届け物も済んでいたので、コウはルシル宅で電話を借りて、家族に一言伝えてから、ごちそうになることにした。
 門を開けて敷地内に入り、家屋をぐるりと囲む庭を横切って玄関へ向かう。すりガラスの引き戸を開き、「ただいま」と「おじゃまします」を同時に言って、二人が靴を脱いでいると、
「おかえり、お姉ちゃん。あっ、コウ君も来てたの?」
 二階へ続く階段から軽やかに飛び降りてきた白猫が、幼さの残る高い声とともに出迎えた。ルシルと同じ純白の毛並みに、アクアマリンのような澄んだ水色の目。凛々しく活発なルシルとは対照的に、内気でおしとやかな彼女が、河道家のもう一人の息女、ユキルだ。
「うん、道場で会ってね。お昼を一緒にしようと思うんだけど、いいかな」
「もちろん! お母さんに伝えておくね。ちなみに、今日の練習試合はどうだった?」
「まあ、いつも通り……かな」
「そっか、優勝か! おめでとう!」
 二本足で立ち上がり、肉球でぽふぽふと拍手をするユキルに、コウが話しかけた。
「たまには見に行きゃいいのに」
「わたしも、お姉ちゃんのかっこいいとこは見たいんだけど、剣術道場ってなんだかピリピリして怖くって。声も大きいから、びっくりしちゃうし」
「ユキルは静かなところで小説を読むのが好きだものね」
「うん! そうだ、今日読んだところがとってもドキドキしちゃうのよ。ご飯の時に、お話聞いてね。ついに二人の距離が……はわわわ」
 両の頬に手を当て、恥ずかしそうに身をよじる二歳年下の少女を見て、姉と幼馴染は心に花畑が広がったように和んだ。
 しばらくときめいていたユキルは、あっと思い出したように声を上げ、ルシルを見上げた。
「お姉ちゃん、お菓子、ちゃんと買えた?」
「うん、水曜限定のアレ。源子化してるけど、持ってるから大丈夫」
 ルシルは虚空を手で示して言うと、コウを振り返った。
「今日、お見舞いに行くつもりなんだ。コウも一緒に来る?」
「ああ……本家か。緊張するんだけどなー……」
「私と一緒なら大丈夫でしょ。行こう。ユキルは午後は友達と約束があるっていうし、二人より三人のほうが楽しいじゃない」
「……わかったよ、手土産だけ取りに帰るから、昼飯終わったら待っててくれ」
 コウはしぶしぶうなずいた。しぶしぶ、ではあるが、本家の令嬢とも仲が悪いわけではない。一人の友達ではあるので、顔を合わせるのはそれなりに楽しみではあった。

***

 典型的な日本家屋の様相を呈する、垂河村の村長一家の邸宅。ほかの家も和風なつくりではあるが、このように縁側や納屋があるところは一つとしてない。代々の長が受け継ぐ家であるからして、かなり年を重ねているが、それがまた風情であった。
 村長の義理の娘、すなわち、これから会うルシルの従姉の母親が、双体姿の二人を案内する。長い廊下の先、ふすまで仕切られた一角が、目的地の部屋だ。コウは何度か来たことがあり、ルシルなど足しげく通っているので、部屋の場所は熟知しているのだが、毎回家のひとについていくのが礼儀だ。
 障子の前に着くと、人間姿の母親は、四角い菓子箱を胸の前に持ち上げた。
「このお菓子、本当に頂いていいの? 三人でお話しながら食べたらいいのに」
「いえ、どうぞ皆さんで召し上がってください。せっかく十二個入りなので、二つずつであまりなく分けられます」
「そう? じゃあ、ありがたく頂戴するわね。コウ君もありがとう。さあさ、行ってあげて」
 母親が廊下を引き返していくのに一礼して、ルシルは一声かけてから、ふすまを開いた。
「おじゃましまーす……」
 畳に障子、違い棚と、書院造らしい趣。しかし、そこに置かれている調度品は、鮮やかなピンクのふちの姿見や猫足のキャビネットなど、わびさびには程遠いものだ。ラックにかけられているのはリボンやフリルのついたおしゃれな服。和の味を醸し出すはずの掛け軸さえ、「病弱上等!」と書かれた上になぜかリボンがあしらわれ、畳から一段高い床板に置かれたなぎなたは、鍔がショッキングピンクな上に、やはりなぜかリボンがあしらわれている。
 そんな部屋の真ん中で、白い布団に下半身を覆われたまま体を起こし、読書をしている黒髪の少女は、単体で見ると純潔で素朴な深窓の令嬢だが、部屋のアレンジ具合が趣味を反映しており、まあ、そういう人物であった。
 ルシルと同い年の従姉は、二人が入ってくると、ハードカバーのページから視線を上げることなく口を開いた。
「今朝のルシル。まず、朝のうちに武知屋に行って望月まんじゅうを買い、その後道場で稽古。今日もさんざん相手を打ちのめした後、昼食をとってからここへ直行」
 言葉の余韻が溶け去ってから、彼女は白い面を上げた。面食らった顔で立ち尽くす二人に、ルビーのような赤い瞳で微笑みかける。
「違う?」
「いや、違わない……どうしてわかったの?」
「ふすまの向こうで聞こえた会話から、十二個入りのお菓子ってことはわかった。ルシルがいつも行く武知屋のお菓子の中で、十二個入りは望月まんじゅうしかないわ。水曜限定販売だけど、今日ここへ来ることが決まったのは先週の土曜日。ってことは、先週の水曜に買ってきたわけもなく、今日買ってきたのには違いないわね。でも、稽古が終わってから買いに行ってたら間に合わないから、朝のうちに行った。この時間だから、私のお母さんは昼食を勧めてくるだろうけど、世話にはなるまいとお昼は食べてくるに違いない」
「今日が稽古だと伝えていたっけ?」
「シャンプーのにおいがするのよ。ここまで香るってことは、洗いたて。この時間に頭を洗ったってことは、稽古があったからでしょう?」
「……さんざん相手を打ちのめしたっていうのは?」
 こればかりは何の手掛かりもないはず、と尋ねたルシルに、彼女はいたずらっぽく笑む。
「いつものことじゃない」
「まいったよ」
 苦笑して、ルシルは両手を挙げた。
 こじゃれた、お茶目な彼女だが、遊び好きな一方で、ずば抜けて頭がいい。よく、こうして相手の行動を見抜いては、驚く顔を見て満足そうに笑う。学校にも、ルシルたちより一年早く入学したのだ。病弱でなければ、飛び級で既に卒業していてもおかしくなかった。
「コウも、こんにちは。元気してた?」
「ああ。お前は?」
「元気いっぱいよ!」
「嘘つけよ」
 いつもの茶番に始まり、睦まじく話し込む三人。ルシルとコウは、小康状態の病人を時折気遣うことも忘れない。明るくふるまってはいるが、一度、歓談中に倒れたこともあるので、油断は禁物だ。
「そういえば、もうすぐ新学期ね。ルシルたちは最高学年かぁ」
「……うん」
「そんな顔しないでよ。私だってすぐに追いついちゃうんだから。あ、でも、このまま留年続けたら、ユキルと同じ教室になったりして? それはそれで楽しそうね」
「こらこら……」
 ややもすれば現実のものになってしまいかねないブラックジョークを諫めるルシル。
 二人の会話を聞きながら、コウは「最高学年」という単語を頭の中で反芻していた。
 卒業したら、おそらく家業を継ぐことになる。親は、上京も視野に入れていいと言ってくれているが、中央地方でやりたいことも特にない。
 きっと、ルシルもここにとどまるだろう。村長の血筋の者として、この村の維持管理に携わっていくに違いない。
 この時はまだ、彼の予想は過たず正しかったのだった。
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