魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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136話 獣人達との別れ

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今日で短いようで長かった、獣人達との滞在が終わる。

今私とステラ、そして獣人たちはユースティテ国王陛下と王妃、そして王子、王女、・・・・あと貴族が何人もいる謁見の間にいた。王族である陛下と王妃は玉座に座り、その横に王子と王女が立っている。貴族は両端に高位順に並んでいる。私とステラもそこに並び獣人たちを見ている。そして中央には先頭がサンガで獣人たちの代表として、片膝をついている。

その後ろには、使者のダイロンとそのほかの獣人たちがサンガと同じ姿勢でいる。



「この度は、本当にありがとうございました。犬獣人族を代表し、ここにお礼申し上げます」

サンガが片膝をついたまま姿勢で王に礼を言う。

まだ、子供であるし、言い方がこれまでのサンガっぽくないと思いながら、恐らくダイロンにしゃべり方や言葉などを覚えさせられたのだろうと、聞いていて思った。

私とステラはその様子を貴族たちが並んでいる側から見ていた。

ステラは昨日までは、野菜ジュースの試作と獣人の体調観察に忙しく、髪や肌の状態が貴族の令嬢とは言えない状態になっていたが、何とか昨晩と朝の化粧で、昨日会った時にはあった目の下のクマがきれいに消えていた。流石だわ。



「獣人の者たちが、元気になってきているとルセリア嬢やステラ嬢から色々報告を受けていたのでな、初めて会った時よりも顔色がいいことは、私でもわかる。獣人たちの問題が一つ解決できたことは、本当に良かった。また何かあったなら、我が国を頼るとよい。できる限りのことは力を貸そう」

国王は玉座に座り、笑顔で獣人たちに告げた。

そう告げると、しばらくしてサンガの頬に涙が流れる。サンガはその涙に気づいているのかいないのか、居ないのか服やハンカチでふくこともせず。今度は両膝を地面につけて、今度は深々と頭を下げる。額に地面をつくほどに、

「あ、、あ、、ありが、、、ござぃ、ました。ほん、、とうに、、、ありがとうございました。」

それを見たダイロンも同じように、

「私からも今この場で感謝申し上げます。ユースティテ王国の皆様のおかげでこれからは大事な民を失わずに済みます。この御恩は一生忘れることなく犬獣人族の中で語り継がれることでしょう。我々をお救い頂き、心より感謝しております。」

そういって、頭を下げて平伏する。平伏するとき、ちょうど私とステラの方を見てきた。

そして堰を切ったかのように他の獣人達全員、大人子供関係なく「ありがとうございました」「野菜ジュース美味しかったです」「…ありがとうございます…‼︎」と感謝を口にしていった。中にはサンガと同じで泣きながら感謝を申す獣人もいた。



それから、獣人たちが落ち着くまで待ち、宰相が一歩前に出て、今後のことをいろいろ話始める。

これから獣人との国交が始まるということで、そこそこ難しい話になっていた。内容の中には、ステラが試作した野菜ジュースの輸出(提供)などや医師の派遣なども含まれていたり、今度はユースティテ王国から使者を使わすので、獣人の国の案内を頼みたいなど。ユースティテ王国のものは獣人の国に訪れた事がないため、まだ何が王国にとって利益になるか分かっていないため、現地を見て判断するつもりなのだろう。



サンガもダイロンも快く快諾し、帰還次第すぐに犬獣人族の族長(サンガの親)や他の族長たちにも相談し、すぐに返信の使者を使わすと、プログラムはすべて終わり、私とステラ、そして何人かのものが獣人達を見送るため王城の門まで一緒に歩いていく。これが最後になるかもん知れないと思っている獣人の何人かは、歩きながら干渉に浸っていた。約一週間だったが、色々な思い出がこの王城でできたのだろう。門までくると獣人が乗れるだけの馬車が用意されていた。

その様子に、獣人達を驚いているが、同盟国、貿易国になるかもしれない使者を歩かせて帰国されるというのもどうかということだ。王国の面子にもかかわってくる。



幼い獣人たちは少しはしゃぎながら、馬車に乗り込んでいく。大人の獣人は私たちの方を向いてお辞儀をしてから、馬車に乗り込んでいく。



そして、残るはダイロンとサンガだけになる。

ダイロンが他の獣人と同じようにお辞儀をしたあと、すぐに歩み始める。しかし馬車ではなくステラがいる方向へ、カタカタと音を鳴らしながらステラの前で止まると、



「ステラ様」

ステラは驚いて、「はい」と答えると、

「この度、…我ら犬獣人の問題にご協力いただき、ありがとうございました…‼︎」

と、その場に平伏した。その言葉、行動にこれまでのステラへの感謝がこもっていた。伯爵令嬢が自分たちのために、毎日毎日、野菜ジュースを試作したり、身体の様子を気にかけ声をかけてくれたことに、

ステラも口調や行動からダイロンの真意が伝わり、少し顔を赤くする、

「お立ちなさい。まだ問題は解決していないでしょう。それに、今度王国からの使者には私も同行しようと思いますので、感謝はその時にお願いしますわ」



ステラのその言葉にダイロンは驚き、



「・・・え?本当ですか?、、、ぜひ我が国にいらしてください。その時は私がご案内させていただきます」

立ち上がり、まっすぐにダイロンはステラの顔を見る。

「期待しているわ」

ステラの答えを聞いて、ダイロンは馬車のほうに歩いていき、馬車に乗り込んだ。



残るはサンガだけになる。サンガもダイロンと同じようにお辞儀をしたあと、歩み始める。ステラのほうに行くのかと思いきや、なぜか、その行先はどうやら私のようだ。

あれ?今回私はステラほど活躍はしていないと思うのだが、それとも最後に文句の一つでも行って帰るのだろうか?と想像しているうちに、サンガが私の前までゆっくりとそのまま彼に歩みより止まった。

ふと、サンガの顔を見ると、涙目になりながら、その目は私から離そうとしない。

サンガは今思っている心情を話し始めた。
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