魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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1年の長期休暇後のルセリア

102話 獣人たちに問題の原因を話す

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夕方になり、獣人たちがいる部屋に料理人たちと従者が料理を運ぶ。それに同行するは、私とステラだ。
部屋に入ると、獣人たちは待ってました!と言わんばかりの表情で見て来る。
ステラが、立って興奮している獣人たちに、
「まずは、座ってください。それがマナーですわよ」

と少し大きめな声で注意すると、「あ、そっか!」、「急げ急げ!」と声を出し、席についていく。そして、全員が席に着いたところで、
「それでは、食事に入りますが、まずは食前酒です」
ステラがそう言うと、料理たちが、各テーブルにグラスに入った食前酒を置いていく。これまでとは、違う食事の仕方に疑問を持った獣人がざわつくが、私とステラが前に立ち、説明をしていく。

「今皆様の前に置かれた飲み物は食前酒と言います。食前酒の役割は、アルコールで適度に胃を刺激し食欲を増進させること。 唾液や胃液など消化液の分泌も促されるので、消化器官への負担を軽減させる働きもあり。 また、食事が出るまでの会話を弾ませ、場の雰囲気を明るくするのも重要な役割があります。アルコールがダメな獣人のかたには、アルコールが入っていないものを用意しております。」

私が説明をすると、獣人たちはグラスを持ち、中に入っている黄緑色の液体を眺めたり匂いを嗅いだりし始める。刺激臭はなく、甘酸っぱい匂いなので、獣人たちも少し警戒はしているようだが、最終的には警戒をとく。

「それでは、乾杯しましょう」

私とステラがグラスを持つ、それにならい獣人たちもグラスを片手で持ちあげる。

「乾杯!」と唱和したのち、私とステラがグラスに口を付けると、獣人たちも私たちにならい食前酒を飲んでいく。一気に飲み干す獣人やゆっくり飲む獣人と様々だが、全員グラスに口を付けていることを私とステラは緊張の眼差しで見ていた。それから、しばらく無言の時が流れる。やがて、獣人たちから「うまいな、これ」「甘くて、さっぱりして飲みやすいわ」「これは何だ?」と飲んだ感想を言っていく。感想に耳を傾けていたが、誰も不味い、飲めないという言葉が出てないことに安堵する。
飲み終わったグラスを獣人たちはテーブルに置いていく。何人かの獣人が少し勢いをつけてグラスを机に置いたため、‘ドンッ”と音が鳴るが、中身が空なので机の上は汚れていない。その音が聞こえるたびに、私とステラはお互いの顔を見る。
心の中ではお互いにガッツポーズをしながら、お互いに手を握り合う。


しばらくして、全員が食前酒を飲み終える。
私は一歩前に出て、獣人たちに今飲んだ、食前酒の感想を訪ねる。獣人達が、
「うまかった」「また飲みたいです」「今まで、水以外は飲んだことが中たので、新鮮な経験をしました」「どうやって、作ったんですか?」「お代りはあるのか?」など、色々質問や感想を話してくる。どうやら本当に気に入ってくれたようで、みんなまた飲みたいといった顔をしている。

ザワザワしている雰囲気の中で私は
「この食前酒は、皆様、・・・犬獣人族の問題を解決できるかもしれないお薬なんです」

その言葉と共に先ほどのザワザワがウソのように今度はシーーと静まり返る。
みな目をパチパチさせながら、こちらを見てくる。
「ど、どういうことですか?ルセリア様、ステラ様」
おどおどしながらダイロンが尋ねてくる。それを見ながら、ステラは一度、フーーっと深呼吸をしてから説明をし始める。

「まず、私達があなた方を見たところ、犬獣人族の問題は食生活からきていると結論づけました。城のものから話を聞きましたが、あなた方はここに来られてから肉料理しか食べていないと、穀物、野菜、果物といったものは口にされていないと」

「そ、それは、、、そうですが、、それが我が一族の問題とどうかかわってくるのですか?」

ステラは”ハーー”と溜息を吐いてから、「いいですか?・・・・・・」と説明する。
獣人たちにわかりやすいように、肉ばかりの生活で起こる体の症状、野菜不足によって起こり得る身体の症状を話していく。聞いている私も、びっくりするくらいステラはわかりやすいように説明している。その証拠に、獣人たちはステラから目をそらさず、真剣な顔で話を聞いている。

ステラが話し終えると、今度は獣人たちが少しづつ騒ぎはじめる。今まで知らなかった知識を話され、一族で問題になっていた原因がまさか食事にあったことに驚きを隠せない様子。

ステラの説明が終わって少したったとき、はっ、と何かに気づいたような顔でダイロンが私を見て来る。そして、自分が持っているグラスと私を交互に見て来る。その様子を気にしたのか?サンガが「どうした、ダイロン?」と声をかける。心の中で「ごめんなさい」と謝りながら、私はステラの前まで行き、

「この食前酒ですが、実は野菜と果物から作られています」
私がそう言うと、獣人たちは騒ぎはじめる。今まで掟で肉以外のものをほとんど口にしてこなかった獣人からすれば、野菜と果物を口にしたことに驚きを隠せない様子だ、しかし段々それは驚きから掟を破ってしまったという事実に思い当たったのか、何人かの獣人たちがあたふたし始める。そして、獣人が私たちを睨んだ目で見て来る。

その視線を受けて、ステラの身体が少し震える。無理もない、伯爵令嬢として生きてきたステラからすれば、睨まれることなんて、ほとんど経験がないのだろう。

「皆さん、犬獣人族の掟で、”肉以外は食べてはいけない”という掟があるのは知っています。しかし今皆様は野菜や果物を”食べた”のではなく”飲んだ”のですよ」

???獣人の皆が言っている意味が分からないといった顔をしている。

さぁ、ここからは、納得できるように説明していかないといけない。
獣人達に何とか納得してもらうために、そして掟という古い鎖を壊していくためにも。
私は獣人たちに説明をしていく。
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