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1年の長期休暇後のルセリア
95話 案内役として立ちます
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広間に入り、陛下が待つ玉座に進んでいく。周りは貴族たちが何人もいるが、以前の王子達の誕生祭
の人数に比べれば少ない。極秘の訪問と反王族派の貴族を招いていないこともあり、それだけで少し安心する。
貴族たちは、獣人が我が国の服を着ているところに驚くが、私が案内役として、獣人の先頭を歩いているのが分かると、王族以外の貴族はより驚ろく。
誰より驚いているのが、アストライア公爵つまりは私の父だ。
後で、絶対に怒られると思いながら、歩いていく。
そして国王と王妃の前で私たちは全員、頭を垂れた。
「面をあげよ」
その言葉で私が顔を上げると、獣人たちも顔を上げる。(獣人たちにはなるべく私と同じ行動をしてと頼んでいた)
「長旅、ご苦労であった。今夜はそなたたちのために歓迎パーティーを準備している。楽しんでくれ。
ルセリア・アストライア公爵令嬢、案内役ご苦労。大儀であった」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
それから私は案内役として、王侯貴族の皆に犬獣族の使者たちを紹介していく。ある程度、私が紹介し終えた後はサンガが一歩前に出て、
「ユースティテ王国の王侯貴族のみなさま、今回はこのような場を設けてもらい、ありがとうございます。アストライア公爵令嬢より、紹介していただいた。犬獣族の長の子サンガでぼざいます。これは父上からの書状でございます。どうかご確認を」
そう言って懐から一通の手紙を取り出す。側近の一人がその書状を受け取り、玉座の陛下へと手渡す。封を開け、陛下が手紙に目を通すと少し驚くが、すぐに、
「なるほど、、、。あいわかった。ここに書かれている内容を前向きに考え、近いうちに答えを出そう。それでは、獣人の方々はごゆるりと我が王城でお過ごしくだされ」
その言葉と共に獣人たちの謁見はひとまず何事もなく終わった。
広間から出た獣人たちは緊張の糸が切れたのか、はぁはぁ、と音を立てながら息継ぎをしていた。
私も額を触ると少し汗がにじんでいる。しばらくして、従者の人たちが陛下が獣人の皆様のために部屋を用意しているとのことで、部屋に向かい歩き出す。案内された部屋は大きな客室間で、数十人でも余裕ではいる部屋だった。すでに、獣人たちの荷物も置かれている。全員が部屋に入ると、従者の方が、
「パーティーの時間になりましたら、また、お呼びに参ります」
と言ってドアを閉めて戻っていく。本当は私もここで出て行ってもよかったのだけど、心配だから一緒にこの部屋にいる。
なぜなら、ドアが閉まると何人かの獣人が服を脱ごうとしたり、高い装飾品や絵画に触ろとしたからだ。
私が注意するとやめてくれたが、油断ができない。
皆を監視していると、サンガがそばに来て、
「どうだった。俺の受け答えは?」
「よかったですよ。流石、犬獣族長の子ですね」
「だろー、あれくらい、俺なら簡単さ」
すっごい喜んでいる。本来なら陛下への挨拶はダイロンさんでもよかったのだが、私がダイロンさんに頼んでいるときに、「その役は、俺の方がふさわしいだろ」と言って、ダイロンさんからサンガに変わったのだ。うまくいったからよかったけど、内心はヒヤヒヤだった。
父親に褒めてもらいたいのか?かっこつけたいのか?目立ちたいだけなのか?よく分からないわ。
「ところで、アストライア公爵令嬢。あの手紙にはどのような内容が書かれていたのですか?」
「そうだ。俺も知りたい」
ダイロンとサンガが手紙に着いて尋ねて来る。
そう、あの手紙は急遽、私が書いた手紙なのだ。だって、獣人のみんなはどう見ても文字なんてかけなさそうだし、もし変なことを言って質問されたらどうなるか。
手っ取り早い手段として、長からの手紙を陛下に渡すという形に持っていくことで、余計な質問がでないように持っていったのだ。
「秘密です」
内容は言えない。なぜなら、本来は陛下が目を通すようなものではない文章が書かれているし、ましてや他の人に言えるはずもない。
{国王陛下、大変申し訳ありません。どうかこの手紙を読まれたら、早々にこの謁見を終わらせてください。犬獣人との同盟はまた後日答えを出すという形にもっていってください。お願いします。 ルセリア・アストライアより}
流石に言えないわ、このような内容の手紙を国王陛下に出したなんて。
何度も尋ねて来る二人を無視して、私はパーティーでのマナーについて獣人のみんなに話始めた。
の人数に比べれば少ない。極秘の訪問と反王族派の貴族を招いていないこともあり、それだけで少し安心する。
貴族たちは、獣人が我が国の服を着ているところに驚くが、私が案内役として、獣人の先頭を歩いているのが分かると、王族以外の貴族はより驚ろく。
誰より驚いているのが、アストライア公爵つまりは私の父だ。
後で、絶対に怒られると思いながら、歩いていく。
そして国王と王妃の前で私たちは全員、頭を垂れた。
「面をあげよ」
その言葉で私が顔を上げると、獣人たちも顔を上げる。(獣人たちにはなるべく私と同じ行動をしてと頼んでいた)
「長旅、ご苦労であった。今夜はそなたたちのために歓迎パーティーを準備している。楽しんでくれ。
ルセリア・アストライア公爵令嬢、案内役ご苦労。大儀であった」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
それから私は案内役として、王侯貴族の皆に犬獣族の使者たちを紹介していく。ある程度、私が紹介し終えた後はサンガが一歩前に出て、
「ユースティテ王国の王侯貴族のみなさま、今回はこのような場を設けてもらい、ありがとうございます。アストライア公爵令嬢より、紹介していただいた。犬獣族の長の子サンガでぼざいます。これは父上からの書状でございます。どうかご確認を」
そう言って懐から一通の手紙を取り出す。側近の一人がその書状を受け取り、玉座の陛下へと手渡す。封を開け、陛下が手紙に目を通すと少し驚くが、すぐに、
「なるほど、、、。あいわかった。ここに書かれている内容を前向きに考え、近いうちに答えを出そう。それでは、獣人の方々はごゆるりと我が王城でお過ごしくだされ」
その言葉と共に獣人たちの謁見はひとまず何事もなく終わった。
広間から出た獣人たちは緊張の糸が切れたのか、はぁはぁ、と音を立てながら息継ぎをしていた。
私も額を触ると少し汗がにじんでいる。しばらくして、従者の人たちが陛下が獣人の皆様のために部屋を用意しているとのことで、部屋に向かい歩き出す。案内された部屋は大きな客室間で、数十人でも余裕ではいる部屋だった。すでに、獣人たちの荷物も置かれている。全員が部屋に入ると、従者の方が、
「パーティーの時間になりましたら、また、お呼びに参ります」
と言ってドアを閉めて戻っていく。本当は私もここで出て行ってもよかったのだけど、心配だから一緒にこの部屋にいる。
なぜなら、ドアが閉まると何人かの獣人が服を脱ごうとしたり、高い装飾品や絵画に触ろとしたからだ。
私が注意するとやめてくれたが、油断ができない。
皆を監視していると、サンガがそばに来て、
「どうだった。俺の受け答えは?」
「よかったですよ。流石、犬獣族長の子ですね」
「だろー、あれくらい、俺なら簡単さ」
すっごい喜んでいる。本来なら陛下への挨拶はダイロンさんでもよかったのだが、私がダイロンさんに頼んでいるときに、「その役は、俺の方がふさわしいだろ」と言って、ダイロンさんからサンガに変わったのだ。うまくいったからよかったけど、内心はヒヤヒヤだった。
父親に褒めてもらいたいのか?かっこつけたいのか?目立ちたいだけなのか?よく分からないわ。
「ところで、アストライア公爵令嬢。あの手紙にはどのような内容が書かれていたのですか?」
「そうだ。俺も知りたい」
ダイロンとサンガが手紙に着いて尋ねて来る。
そう、あの手紙は急遽、私が書いた手紙なのだ。だって、獣人のみんなはどう見ても文字なんてかけなさそうだし、もし変なことを言って質問されたらどうなるか。
手っ取り早い手段として、長からの手紙を陛下に渡すという形に持っていくことで、余計な質問がでないように持っていったのだ。
「秘密です」
内容は言えない。なぜなら、本来は陛下が目を通すようなものではない文章が書かれているし、ましてや他の人に言えるはずもない。
{国王陛下、大変申し訳ありません。どうかこの手紙を読まれたら、早々にこの謁見を終わらせてください。犬獣人との同盟はまた後日答えを出すという形にもっていってください。お願いします。 ルセリア・アストライアより}
流石に言えないわ、このような内容の手紙を国王陛下に出したなんて。
何度も尋ねて来る二人を無視して、私はパーティーでのマナーについて獣人のみんなに話始めた。
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