魔眼がみつめるこの世界～転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない～

１年の長期休暇後のルセリア

89話 台風のため今日は休み

アトランとアンディアからOKをもらってからの一週間は天気も良く平和な学園生活を送った。

そして明日は学校が休みという日の朝、私は窓を打つ雨の音で目を覚ました。

風が強く、窓が閉まっていても風がふいている音が部屋の中にまで聞こえて来る。

窓に近づき、外を眺めると、雨の量はそれほどでもないが、風が強く、庭に生えている

大きな樹が揺れていた。



「台風かしら？」



見たままの感想を口から言う。





私はメイドのアリサに着替えを手伝ってもらい。両親と朝食を摂るため、部屋を出る。

食事をする部屋に入ると、既に父と母は座って私を待っていた。

朝食が机の上に置かれ、



「いただこうか」



父が母と私を見て言ってくる。



「「はい」」



食事が始まりパンやスープ、サラダを食べていく。

心なしか、今日は食べるペースが遅いような気がする。



「ルセリア、今日は学園は台風のため、お休みになる。久しぶりにゆっくりしなさい。私もこれでは外出できないから今日はゆっくり過ごそうと思う」



その言葉を聞いて、あ！そっか！外は台風だったわ、と先ほど窓から見た状況を思い出す。



前世では台風であっても、仕事をしていればたいていのものは出勤しなくてはいけない、私もたいていの中に入っていたため、その感覚がぬけていないこともあり、台風の日であっても学園に登校しないといけないと、父に言われるまで気が付かなかった。



父から今日は学園がないから、ゆっくりしなさいと言われ、部屋に戻った私はベッドに横になる。

目をつむると、より外の風や雨の音が鮮明に聞こえて来る。



そういえば、ジオテゴニアから帰還しているときに、馬車から見たヒチメンタ男爵の土地の稲畑、大丈夫かしら？



目を覚まし、数週間前のことを思い出す。

馬車の中から稲畑を見ているときに、予知の魔眼が発動し、見た光景が前日まではきれいになびいていた金色の稲畑が、台風により無残な景色になっていて、農民たちはその状態の畑を前に



「収穫日前だったんだぞ」

「どうすんだよ！これじゃ、俺たち、、、、生きていけないぞ」

「領主様に相談を！」

「バカヤロー、領主様だって、苦しい生活をしている。それにこんな状態じゃ、税金を

は納められない」

「せめて、台風が、あと3日後だったら、すべての稲を収穫できていたのに、チクショーーー」



と後悔や不安の声を出している光景だった。



それをみた私は父にこの領土の名前を教えてもらい、国境まで護衛してくれたジオテゴニア国の衛兵に予知で見た内容を書いた手紙を女王陛下に届けるようにお願いした。

予知の魔眼のことを知っているの人は限られているし、きっと女王陛下なら何とかしてくれるだろうと思ったから。





稲畑のことを思い出したら、お昼はお米が食べたくなってきた。

今日は学園も休みだし、久しぶりに料理をしようと私は厨房に向かった。

厨房に入り、お米が入っている袋の中を見ると量が残り少ない。

ジオテゴニア国を出るときに、お土産にお米をもらったが、両親や友達や料理人たちに、お米料理を作ってあげたため、思っていたよりずっと早くなくなりそうだ。





お米の輸入が出来てらいいのになぁ。と思いながら私はお米を炊いていく。

今日作るお米料理はシンプル、おにぎりだ。塩を混ぜるだけの単純なものだ。

最初は、恐る恐るお米を食べていた両親と料理人たちも、米が凄く他の料理と合うことがわかり、今では抵抗なく食べている。



昼食は、私が作ったおにぎりを両親と一緒に食べ、残ったおにぎりは料理人たちが奪い合い、ちょっとした問題になったと後からその話を料理長から聞いた私は笑ってしまった。



食べ物の恨みは恐ろしいというけれど、ほんとね。





台風のため、学園には行けず、外にも出られない日になったけど、私は両親や屋敷のみんなと楽しく過ごすことができた。