魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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1年の長期休暇後のルセリア

84話 教会で再会し、そして出会う

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アンディアが編入してきて、三日が過ぎた。今日は先生が話していた教会に行く日だ。

この体に転生してからは、訪れた事はないが、過去には、訪れた事があると両親から聞いた。

大きな馬車にクラスのみんなが乗り込み、教会に向けて出発した。そして、馬車に乗っている間、先生が教会の説明をしていく。



この世界は太古の昔、神々が住む世界が混ざり合い誕生した。

人間を生み出した神、エルフを生み出した神、獣人を生み出した神、魔人を生み出した神など様々な神がこの世界に降り立った。そして最初に起こったのが、神々の戦争。その戦争は神が生み出された者達にまでおよび戦争は多くの犠牲と共に終わりを告げた。それもあって、今この世界では人間やエルフ、獣人、魔人たちの国ができているが、お互いに干渉しないようになっている。そして神々はこの世界を去っていなくなったと伝えられている。

今向かっている教会は、人間を生み出した神、オリンポス神を崇め奉っている教会。



前世の私は神様なんて信じていなかったが、別世界に転生した今、信じないといけないのだろうか?

そんなことを先生が説明しながら、私は考えていた。



しばらくして、教会が見えてきた。

地面が白い石で作られた大きな道を馬車が走り抜けていく。馬車から外を眺めると教会に向かっている人、教会から帰っている人と多くの人が馬車から見えた。



馬車が止まり、一人一人ゆっくり馬車から降りていく。全員が馬車から降りると、先生の誘導の元、教会に向かって歩き出す。教会に訪れた人達が、私たちを見てくるがそれは仕方がない。それもあり、私たちはいつもよりも無言で歩いている。王子であるアトラン、ロベルトもどこか緊張しているようで、王子でこれなのだから、

他の生徒は余計に緊張している。





「教会の内部は広く、多くの人が訪れているため、迷子になったり、はぐれることがあるかもしれない、もしも、はぐれたものはここまで来て、待っているように。もしくは教会で働いている者に助けを求めなさい」



先生が教会の大きな扉の前で私たちに向かって注意を促す。



「「「「「はい」」」」」」



「それでは、全員にこれを着てもらう」



先生が出したのは、白と黒の服で、修道院の人たちが着る服だという。周りを見ると同じような服を着ている人もいる。生徒達がザワザワと騒ぎ出すが



「これは、学園の授業の一環だ、将来、教会などで働きたい生徒もいると思う。そのための経験だと思え。そうでない生徒にとっても

これはいい経験になるはずだ。それにこの服は上から着ればいいだけだ」



先生がそう言うと、騒いでいた生徒達が静まり返る。何人かの生徒がどこで着替えるのか、不満を持ったのだろう。

渡された服をみんなが着ていく。

用は職業訓練?職業見学?職場体験?そういったものなのだろう。

教会に入ると、大きな聖堂があり、その奥には七柱の像があった。何百人も入れそうな聖堂に圧倒されながらも、

訪れた者はゆっくり前に歩いていく。その人の波に流されながらも私達は前に向かって歩いていく。

聖堂の半分くらいまで進んだ私は周りを見てみると、いつの間にか一人になっていた。周りを見るが、見知った顔はない。



「ちょっと、はぐれてしまったかしら」



これだけ多くの信徒、参拝する人がいるのだから仕方ないとあきらめ、私は人波に流されながら前に進んでいく。

すると、私の隣でいた人がなぜかチラチラ私の方を見て来る。



「せ、聖女様!!」



と大きな声で私に向けて叫んだ。

驚いて、声がした方を振り向くと、



「そ、村長さん?」



その声の主はレコーラ村の村長さんだった。どうして、ここに村長がいるのと思いながらも、村長が私を聖女と呼んだために、周りの人たちがこちらに注目してくる。

まずい!これはまずいわ!何かいい手はないかしら、



「違いますよ。村長さん、私の名前はセイシアでよ。セ・イ・ジ・ョではありませんよ」



少し大きめな声を出し、村長が名前言い間違えたように持っていく。かなり無理があるがこれしか思い浮かばなかった。

幸い、周りの人達は、村長がお年寄りということもあり、私の言ったことを信じた様で、興味をなくし歩き始める。

私は、村長の手を引き人の波がない壁際に移動する。

壁際までたどり着くと、



「どうして、村長さんが教会に?」



「そらーもちろん、オリンポス神にお祈りするためじゃよ」



あたり前の答えが返ってきた。



「それでは、どうして私のことを聖女様って呼んだんですか?」



「それは、聖女様がわしらの村を救ってくれたからじゃよ」



あくまで、私を聖女様と呼ぶようだ。



「私は、何もしていませんよ。ただ、村の人達を励ましただけです」



「そんなこたーない、城や学園から詳しい話は聞けなんだが、村の皆は聖女様にすごく感謝してるんじゃよ。本当にありがとう。ありがとう」



村長が私の手を両手で握り、力を入れる。高齢なのにかなり力が強い、いやそれだけ感謝してくれているのだろう。



「村の方はどうですか?」



「幸い発見も早かったし、亡くなったものはおらん、原因もわかったことから、村が国により処分されることもなかった。今はまた一から村のみんなと農業の方法を考えている最中じゃよ」



村長さんが笑顔で私の質問に答えてくれる。それを聞いて、良かったわと心から思えた。





このまま、村長から離れてもよかったが、注意しても私のことを聖女様と呼ぶので、目が離せない。

それからは、村長と一緒に人の波に戻り、ゆっくりと七柱の像が置かれている前まで進んでいく。

祈り方は両手を合わせて手と手を絡めて祈る。前世の世界と同じ祈り方だ。

自分の前に祈っている人たちの様子を眺めながら、自分の番がやってくる。

像の前に立ち手と手を合わせ、拝もうとしたとき、



「オリンポス神よ、どうか我が民をこの子をお救いください。お願いします」



大きな声で叫ぶ者がいた。膝を地面につき、何度もお願いしますと祈るフードを被った男その横には同じくフードを被った子供がいた。教会の者たちが慌てて駆け付け、どうされましたかと質問するが、男は祈っているだけで、神官たちの言葉を聞こうとしない。

何度もお願いしますと祈る男に、周りの信者や参拝にきている人たちが注目し始める。

神官たちは騒ぎになってはいけないと思い、力ずくで男をその場から放そうとする。するとフードが後ろにいき、顔が現れる。



「ま、魔人だ。魔人がいるぞ」

「魔人だって」

「うわぁああ。ほんとに魔人だ」



周りのものが驚き、より騒ぎになる。神官たちも男と子供から手をはなす。

肌が茶色く、耳が少しとがっていて、人間に似ていると言えば似ている。

私は初めて、魔人という人間以外の種族と出合った。

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