魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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1年の長期休暇後のルセリア

82話 学園に編入生がくる

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屋敷に帰ってきた私は両親や使用人たちに、心配させたことを謝った。精神はともかく、肉体はまだ、12歳の少女であるため、自分としては、特に問題ないと思うことでも、問題になる様だ。

父親からも母親からも詳しい経緯を話しなさいと言われ、アンディアとの出会いから話す形となった。

お昼にルイビット商会のものからいきなり屋敷に使いの者が来た報告を受けたときは、二人とも驚いたと。公爵家の父はルイビット商会の会長であるバースさんと今までに何度か会ったことがあるようで使いに来た者とも見知った人だったため、信じることが出来たそうだ。



両親との話も終わり、自室に帰ってきた私は、服が皺になることもおかましなく、ベッドに倒れこんだ。色々な意味で今日は疲れた。

ベッドでうつ伏せになりながら、まずは天井に目が行く。数分間天井を見た私は今度は部屋の壁に目を向ける。

そこには、父親や母親、そして今までにもらったものが飾られている。その中には、装飾品もあり、ルイビット商会の品もいくつかあった。信じられない話だが、有名ブランドメーカーの会長と一時ではあるが食事をしたということを今さらながら実感する。本当に転生してからは、驚くことばかり経験させられる。ルセリアが貴族ということもあるが自国の王族や他国の王族、さらにはブランドメーカーの会長とも交流した。前世では、到底経験することのできないことだ。

そんなことを考えながら、いつの間にか私はベッドで眠っていた。







次の日になり、馬車に送られ学園に登校した私はクラスの生徒に挨拶を済ませ、自分の席に座り、先生が来るのを待つ。

アトランとロベルト、そしてステラとシルフィも席に着き先生が来るのを待つ。ただいつもとクラスの雰囲気が違う。

小声で何人かの生徒が今日このクラスに編入生が来る、と話しているからだ。それを聞いた生徒が「誰だろう?」「男かな?女かな?」「貴族のかたか?」などそのことでクラスが少し騒がしくなっている。学園に編入生が来るのは珍しいことなのか分からない私は、アトランに尋ねてみた。



「珍しいと言えば珍しいですが、今回は特に珍しい部類に入る生徒ですよ」



その口調から、既にどんな生徒が編入してくるのか知っているようだった。







しばらくして、先生がクラスに入ってくる、それと同行して、一人の男子がクラスに入ってくる。

ゆっくり教壇のところまで歩いてきた男子を見た私は小声で



「ウソ?アンディア?」



他の生徒に聞こえないくらいの音量で口から言葉が出ていた。

クラスを見渡すアンディアと目が当ってしまう。私は瞬きを繰り返しながら、アンディアは悪戯が成功した子供のように笑う。



「今日からこのクラスに編入するアンディア・ルイビットだ。急な編入だが、みんな仲良くしてくれ」



先生が言うと、アンディアが一歩前に出て、



「アンディア・ルイビットです。父の仕事の都合上、急な編入になってしまいましたが。皆さん、今日からよろしくお願いします。」



アンディアが自己紹介を済ませると、何人かの生徒たちが騒ぎ出す。



「ルイビットっていったか?今」

「ルイビットってあのルイビットか?」

「まさかルイビット商会の・・・・」

「俺、パーティーで見たことあるぜ」



ルイビットという名前で、気づく生徒が表れた様で、クラスが先ほどよりも騒がしくなる。中にはルイビットという名前を知らない生徒もいるようで、驚く生徒や疑問に思う生徒、特に何とも思っていない生徒とカオスな空間ができている。





「それでは、アンディアの席は窓際のあそこだ」



先生に指示を受け、アンディアは自分の席に向かい、腰を下ろす。

それからは騒がしい一日になる。休み時間は、アンディアに質問する生徒が彼を囲み、ルイビット商会の事や彼のことについて尋ねる光景が一日続いた。

放課後になる頃には、大分落ち着き、アンディアに質問する生徒も数人くらいになっていた。



「三日後は、一年全員で、教会に見学実習にいく。みんなもそのつもりでいてくれ」



先生が予定事項を説明し授業が終わる。教会の訪問、言うなれば遠足のようなものだ。

みんなが帰り支度をし始める。もちろん私も支度の準備をしているとアンディアが私に近づいてきた。



「ねぇ、ルセリア。今から一緒に露店行かない」



「・・・え?」



周りの目を一切気にしないアンディアは皆が聞こえる声で私に言ってきた。

急に私に話しかけたため、クラスの生徒はもちろん、アトラン達も驚ろく。



少しの間、無音になる。クラスの全員が驚いている中で、当の本人は一人、笑顔で笑っていた。
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