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1年の長期休暇後のルセリア
80話 ルイビット商会の会長と
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なぜだろう?
馬車の中では私はアンディアが横にいて、目の前には大人の男の人たちがいる。アンディアが心配でついていこうと決めたのは私だけれど、何とも言えない空気がただ酔っている。しかもこの馬車、普通の馬車ではなく、貴族たちが利用していてもおかしくないほど豪華な馬車だ。
「あの?どこに向かっているんですか?」
恐る恐る手を挙げて、男たちに質問する。
男の一人が顔を上げ、
「旦那様がお待ちになっている。建物です」
その答えを聞いた。アンディアが
「父さんが?」
と勢いよく、顔をお上げ、男たちに尋ね返した。
私とアンディアはお互いに顔を合わせる。忙しいと聞いていたお父さんがアンディアのことを待っている。
それだけ心配したのか、怒らせてしまったのか、あるいは・・・
考えれば考えるほど、不安な顔をしているアンディア。
私はアンディアの手を握り、
「大丈夫よ」
と言うことしかできなかった。私が手を握るとアンディアも握り返してくれた。目の前の男たちは何とも言えない表情をして私たちを見ていた。
やがて、馬車が止まり、男たちが馬車から出て、私たちをエスコートする。私とアンディアはゆっくり馬車から降りる。降りた目の前には、豪華なホテル?の前だった。周りを見てみると上流貴族のような方々が、ホテルに執事や使用人と一緒に入っている。明らかに私とアンディアの服装は場違いと言える。屋敷に帰れば、ドレスなどはあるけど、今は制服だ。制服を着て入るような場所ではない。そう思いながらも、男たちは
「さぁ。参りましょう」
と言って私たちはそれについていく。男の一人がフロントのようなところで受付を済ませ、私たちのほうに戻ってくると、
「旦那様は最上階のスイートルームでお待ちです。お二人はどうか着替えをしてください着替えの部屋は準備しておりますので」
やっぱり、そうよね。と思いながらも、私は自分の服装とアンディアの服装を見る。
馬車の中で聞いた話だが、アンディアの着ている服は家出した時の服ではなく、その服を売ったお金で買った服だという。思い切って家出したのはいいが、お金をもって出てこなかったようで、銭腹は代えられず、服を売ってお金を得たという。家出は3日前からだけど、よく無事だったわね。と話を聞いた私はその時思った。
いくら王都の治安が良くても、犯罪はある。また貧富の差が大きいのも事実だから、ある意味では目立たない格好を選んだアンディアは正解だったのかもしれない。
私は衣裳部屋に案内され、中に入ると、豪華な衣装が並べられていた。
「うわー!」
心の底からの感想だ。屋敷にも衣裳部屋はあるが、ここまですごくない。何より、部屋の中には着替えを手伝ってくれる人たち(女性)がいて、私が着る衣装を選んでいく。
「かわいらしいドレスでもいいんじゃないかしら?」
「いえ、もっと大人のようなセクシーなドレスのほうが?」
「深紅の髪がおきれいなのでそれに合った服を?」
と何だか、私が着るドレスで口論が始まった。
「どれがよろしいでしょうか?」
と尋ねられるが、どれも素敵ですね、と答えると、女性たちの目つきが変わり、そこからは私は着せ替え人形のように、彼女たちが選んだ服を着せられていくのだった。
やがて、着るドレスも決まり、服だけではなく、今度は髪の手入れ、そして化粧までされた。
もはや、王城に向かうときの準備のようだ。
今さらだがアンディアのお父さんとはどんな人物なのかという疑問が浮かんだ。私としては父と子が仲直りするところがみられたら、良かったね、と言ってそのまま帰ろうかと思っていたのだが、これはそんなことで帰れるような雰囲気ではない。私は恐る恐る女性たちに
「あの?アンディアのお父さんはどのような方なのですか?」
私が尋ねると、女性の一人が
「ルイビット商会の会長ですよ」
「え!!!ルイビット商会って、あのルイビット商会ですか?」
「はい、そうでございます」
ルイビット商会。宝石やバックや時計などを販売しているブランドメイカーだ。庶民が手にするにはあまりにも高く、バックだけでも金貨10枚からといった、お金持ちたちを相手にしている商会だ。
各国に店舗を構え、その売り上げはすさまじく、王国予算並みとさえ言われている。
そんな人ならこのホテルのスイートルームを利用するのもわかる。
やばい!!今さらながら緊張してきた。王城に訪れたときは、両親がいたし、他にも多くの貴族たちがいたから、それほど緊張はしなかったけど、今は私一人だけ。これはヤバいわ。
胸を抑えると心臓はドクドクと勢いよく動いている。その音は、耳にも届くくらいだ。
衣裳部屋のドアが開き、先ほどの男たちが
「では、どうぞこちらに」
と私を案内してくれる。そして大きな扉の前まで案内された私は扉の前で立ち止まり、男たちがゆっくり扉を開けていく。
部屋の中はとても広く、入り口のドアからは部屋のすべては見えない。ただ、最上階で壁がガラス張りということもあり、素晴らしい眺めが堪能できる部屋だ。
その中央では大きなテーブルに座る大人の男性が一人と、髪型が違うが正装したアンディアが座っていた。
私が部屋に入ると、男性が立ち上がり、
「ようこそ。ルセリア・アストライア公爵令嬢。私はルイビット商会の会長バース・ルイビット。お会いできて光栄です」
私の名前を?少し固まってしまったが、相手が相手なので部下に私のことを調べさせたのだろう。
私は勇気を出し、机のほうに歩いていく。そして、一礼してから
「初めまして、バース会長。ルセリア・アストライアです」
と自己紹介をする。テーブルのそばに執事服を着た人がいて、一つの椅子を後ろに下げて
私を先導してくれる。私が椅子の前までくるとゆっくり椅子を前に出し、座るように先導してくれる。
そして、座るとバース会長にお辞儀をして、部屋から出ていった。
私の右斜めにはバース会長が目の前はアンディアがいる。三角形に座っている。
横目でバース会長を見ると、とても社交的な大人の人で黒いタキシードが何とも似合う。貫禄もあり流石、ルイビット商会の会長だと思った。目の前にいるアンディアを改めてみると、確かにバース会長と似た雰囲気がある。当の本人は少し、恥ずかしいような、申し訳ないよな顔で私をちらりちらりと見ていた。
「話したいことも、色々あるが、まずは食事をしよう。何でも、食べ物を買おうとしているときに捕まえたと報告を受けたからね」
机の上にあった鈴を鳴らすと、扉が開き執事服を着た人達がテーブルの上に料理を置いていく。
こうして、私たち三人の食事会が幕を開いたのであった。
馬車の中では私はアンディアが横にいて、目の前には大人の男の人たちがいる。アンディアが心配でついていこうと決めたのは私だけれど、何とも言えない空気がただ酔っている。しかもこの馬車、普通の馬車ではなく、貴族たちが利用していてもおかしくないほど豪華な馬車だ。
「あの?どこに向かっているんですか?」
恐る恐る手を挙げて、男たちに質問する。
男の一人が顔を上げ、
「旦那様がお待ちになっている。建物です」
その答えを聞いた。アンディアが
「父さんが?」
と勢いよく、顔をお上げ、男たちに尋ね返した。
私とアンディアはお互いに顔を合わせる。忙しいと聞いていたお父さんがアンディアのことを待っている。
それだけ心配したのか、怒らせてしまったのか、あるいは・・・
考えれば考えるほど、不安な顔をしているアンディア。
私はアンディアの手を握り、
「大丈夫よ」
と言うことしかできなかった。私が手を握るとアンディアも握り返してくれた。目の前の男たちは何とも言えない表情をして私たちを見ていた。
やがて、馬車が止まり、男たちが馬車から出て、私たちをエスコートする。私とアンディアはゆっくり馬車から降りる。降りた目の前には、豪華なホテル?の前だった。周りを見てみると上流貴族のような方々が、ホテルに執事や使用人と一緒に入っている。明らかに私とアンディアの服装は場違いと言える。屋敷に帰れば、ドレスなどはあるけど、今は制服だ。制服を着て入るような場所ではない。そう思いながらも、男たちは
「さぁ。参りましょう」
と言って私たちはそれについていく。男の一人がフロントのようなところで受付を済ませ、私たちのほうに戻ってくると、
「旦那様は最上階のスイートルームでお待ちです。お二人はどうか着替えをしてください着替えの部屋は準備しておりますので」
やっぱり、そうよね。と思いながらも、私は自分の服装とアンディアの服装を見る。
馬車の中で聞いた話だが、アンディアの着ている服は家出した時の服ではなく、その服を売ったお金で買った服だという。思い切って家出したのはいいが、お金をもって出てこなかったようで、銭腹は代えられず、服を売ってお金を得たという。家出は3日前からだけど、よく無事だったわね。と話を聞いた私はその時思った。
いくら王都の治安が良くても、犯罪はある。また貧富の差が大きいのも事実だから、ある意味では目立たない格好を選んだアンディアは正解だったのかもしれない。
私は衣裳部屋に案内され、中に入ると、豪華な衣装が並べられていた。
「うわー!」
心の底からの感想だ。屋敷にも衣裳部屋はあるが、ここまですごくない。何より、部屋の中には着替えを手伝ってくれる人たち(女性)がいて、私が着る衣装を選んでいく。
「かわいらしいドレスでもいいんじゃないかしら?」
「いえ、もっと大人のようなセクシーなドレスのほうが?」
「深紅の髪がおきれいなのでそれに合った服を?」
と何だか、私が着るドレスで口論が始まった。
「どれがよろしいでしょうか?」
と尋ねられるが、どれも素敵ですね、と答えると、女性たちの目つきが変わり、そこからは私は着せ替え人形のように、彼女たちが選んだ服を着せられていくのだった。
やがて、着るドレスも決まり、服だけではなく、今度は髪の手入れ、そして化粧までされた。
もはや、王城に向かうときの準備のようだ。
今さらだがアンディアのお父さんとはどんな人物なのかという疑問が浮かんだ。私としては父と子が仲直りするところがみられたら、良かったね、と言ってそのまま帰ろうかと思っていたのだが、これはそんなことで帰れるような雰囲気ではない。私は恐る恐る女性たちに
「あの?アンディアのお父さんはどのような方なのですか?」
私が尋ねると、女性の一人が
「ルイビット商会の会長ですよ」
「え!!!ルイビット商会って、あのルイビット商会ですか?」
「はい、そうでございます」
ルイビット商会。宝石やバックや時計などを販売しているブランドメイカーだ。庶民が手にするにはあまりにも高く、バックだけでも金貨10枚からといった、お金持ちたちを相手にしている商会だ。
各国に店舗を構え、その売り上げはすさまじく、王国予算並みとさえ言われている。
そんな人ならこのホテルのスイートルームを利用するのもわかる。
やばい!!今さらながら緊張してきた。王城に訪れたときは、両親がいたし、他にも多くの貴族たちがいたから、それほど緊張はしなかったけど、今は私一人だけ。これはヤバいわ。
胸を抑えると心臓はドクドクと勢いよく動いている。その音は、耳にも届くくらいだ。
衣裳部屋のドアが開き、先ほどの男たちが
「では、どうぞこちらに」
と私を案内してくれる。そして大きな扉の前まで案内された私は扉の前で立ち止まり、男たちがゆっくり扉を開けていく。
部屋の中はとても広く、入り口のドアからは部屋のすべては見えない。ただ、最上階で壁がガラス張りということもあり、素晴らしい眺めが堪能できる部屋だ。
その中央では大きなテーブルに座る大人の男性が一人と、髪型が違うが正装したアンディアが座っていた。
私が部屋に入ると、男性が立ち上がり、
「ようこそ。ルセリア・アストライア公爵令嬢。私はルイビット商会の会長バース・ルイビット。お会いできて光栄です」
私の名前を?少し固まってしまったが、相手が相手なので部下に私のことを調べさせたのだろう。
私は勇気を出し、机のほうに歩いていく。そして、一礼してから
「初めまして、バース会長。ルセリア・アストライアです」
と自己紹介をする。テーブルのそばに執事服を着た人がいて、一つの椅子を後ろに下げて
私を先導してくれる。私が椅子の前までくるとゆっくり椅子を前に出し、座るように先導してくれる。
そして、座るとバース会長にお辞儀をして、部屋から出ていった。
私の右斜めにはバース会長が目の前はアンディアがいる。三角形に座っている。
横目でバース会長を見ると、とても社交的な大人の人で黒いタキシードが何とも似合う。貫禄もあり流石、ルイビット商会の会長だと思った。目の前にいるアンディアを改めてみると、確かにバース会長と似た雰囲気がある。当の本人は少し、恥ずかしいような、申し訳ないよな顔で私をちらりちらりと見ていた。
「話したいことも、色々あるが、まずは食事をしよう。何でも、食べ物を買おうとしているときに捕まえたと報告を受けたからね」
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