魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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1年の長期休暇後のルセリア

79話 追われる理由は

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お互いに自己紹介をしながら、露店があるほうに歩いていく。

スキップをしながら、嬉しそうに歩いているアンディアはとても呑気で自由な子だと思った。

なぜ、男達に追われていたのか、尋ねたかったけど、そこまで尋ねるのはどうかと思った。

しばらく、歩いていると大きな広場にでた。そこには露店が並んでいて、多くの人が露店で

買い物をしていた。



まるで、前世の朝市のようだ。大きな道の端にテントを立て、そこで商売をする。私も何度か買い物したことがある。食べ物から始まり、装飾品、服など、何でも売っている。同じ食べ物でも値段が違うし、味も違う。服でも違う国の服を売っている露店や自国の服を売っている露店などまちまちだ。



少し、ワクワクしながら、アンディアと露店を見て歩いていく。歩いていると、他の店よりも行列ができている露店があった。



「さぁー。今話題の新しい料理、鶏のから揚げだー。一口でも食べれば、病みつきになるぞー。さぁ、食べてみてくれー」



露店で唐揚げを売っている男の人が元気に叫んでいる。



唐揚げ??この世界で唐揚げはなかったのでは?と思いながら、アンディアも気になったのか露店のほうに向かって歩き出す。露店の前まで行くと、唐揚げの香ばしい香りや油がはじける音が聞こえてきた。露店では、何人かのスタッフが流れ作業で作っている。肉を切って下味をつける人、鶏を揚げる人、唐揚げを紙に包んでお客に渡しお会計をする人、楽しそうに唐揚げを作っている。お金を払い、唐揚げを受け取ったお客は熱々の状態にかぶりついて、幸せそうな顔をしている。

それを見たアンディアは



「これ食べてみたい!!」



と笑顔で私に話しかけてきた。露店の看板を見て値段を確認して払える値段だと思い。



「そうね。並びましょう」



私も味が気になるし。

20人以上並んでいる行列の最後尾に向かう。並んでいる間はすることがなく、周りの様子を眺めながら順番が来るのを待つ。しばらくして、アンディアが私に話しかけてきた。



「ごめんね。迷惑かけて、、、」



いきなり、アンディアが謝ってきた。何が?というほど馬鹿ではない。私を巻き込んだことを謝っているんのだろう。



「あの男たち、父さんの部下なんだ」



「お父さんの部下?どうして逃げていたの」



「・・・僕が家出したから」

「い、家出?」



少々、声のボリュームが大きくなってしまい。並んでいた人達が私たちの方を向く。

慌てて、何でもないです。アハハハーと誤魔化す。



周りが落ち着くのを待って、アンディアに尋ねる。



「どうして、家出なんて?」



「・・・3日前、僕の誕生日だったんだ。それなのにお父さん、僕の誕生日のことを忘れていていつも仕事のことばっかりで、僕と遊んでくれないんだ。だから、誕生日の日だけは一緒に過ごそうと約束していたのに、仕事に行ってくるって朝から出て行ってしまったんだ。だから、家出して困らせてやろうと思ったんだ」



何とも、わかるような、わからないような理由だ。でも、それだけお父さんに相手してほしかったのだろう。



「お母さんは?」

「お母さんは、僕が小さいとき、病気で亡くなったよ」



それを聞いて、余計に父親に相手してほしかったのだろう、と私は思った。前世の世界でも親が子供の面倒を見ず子供が非行に走るなんてことはテレビで何度も見てきた。子供の成長に、親は欠かせない存在であることを

改めて実感した。



「これからどうするの?」

「考え中だよ」

「そう・・・」



会話はそこで終わり、唐揚げの順番が来るのを待った。







そして、あともう少しで順番が回ってくるというところで、



「アンディア様!見つけましたよ」



‘‘???‘‘

いつの間にか、先ほどアンディアを追っていた男たちが私たちを取り囲んでいた。アンディアは逃げようとするが、大の男たちに囲まれていては逃げ出せないし、女の私が戦えるとは思いえないし、何より、アンディアから話を聞いた今となっては、逃げだしたり、助けようと思う気持ちはなくなっていた。家族間の問題だし、第三者の私が割って入るのもおかしな話だ。





あっけなく、アンディアは捕まってしまい、



「くそー、離せ、離せ」



男の肩に担がれて、足や手をバタバタさせているが、子供の力では無意味な抵抗だ。アンディアを捕まえた男たちが次に私の方を見て来るが、両手を上げて、何もしません降参しますと私は行動で表す。



男たちは私の態度を見て、



「一緒に来ていただけますか?馬車を用意しておりますので、ぜひ、旦那様と会っていただきたいのですが?」



「???私がですか」



「ええ、ぜひ」



知らない人たちに着いていくのもどうかと思ったが、アンディアのことが気になり



「わかりました」



と答えると、唐揚げを食べることなく、男たちが用意している、馬車のほうに向かい始める。

馬車にのるまで、アンディアは男の肩の上で暴れていた。

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