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76話 自由課題
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長期休暇も残り数日となり、今の私は宿題もとい課題に追われていた。半年間学んだ内容の復習と自由課題というものがある。要は自分で課題を見つけ、自分で研究するものだ。前者はこの数日間を使い終わったが、後者が何をしようか悩んでいて、まだ決まっていない。シルフィやリーネットに尋ねたと、シルフィは自身で小説を書き提出するという。リーネットは両親が作っている野菜の育て方と収穫についてというレポートのようなものを提出するという。数日前にお茶会に呼ばれ行ったときに、ステラにもたずねたが、何と医学についての勉強をしていて、そのレポートを出すという。何でもステラの夢は医者になることだと、話してくれた。貴族が医者というのはどうなのかと思うが、視診の魔眼を持っているステラならまさにもってこいの職業なのではないかと思った。12歳という歳で、もう将来のことに向けて頑張ているステラは本当にすごい。
「将来か?」
このルセリアの身体に転生して半年がたつが、未だに信じられないと時々思うことがある。前世の知識の中に『胡蝶の夢』という話があるが、それにも該当しないと思う。いつか本当のルセリアに身体を返す時が来るのかも知れないと今までに考えたことはあった。
「ハァー。とにかく今は課題をやらなくちゃ」
悩んだ末に、ジオテニア国の学校についてのことをレポートにして提出しようと考えた。女王がわざわざ他国の学校での学ぶ場を提供してくれたのだから、良かったこと、学ぶべきことなど少しでも学園がよくなればと、私の意見もプラスしてレポートを書いていくことにした。
書いているときに、ふと手が止まる。
「そういえば前世では部活動というものがあったが、学園にはないわね」
スポーツといったものが、この世界にはまだなじみがないようだ。サッカー、テニス、野球、色々なスポーツが頭の中に浮かんでくる。私はバスケ部だったなぁと前世を思い出す。
確か友達に誘われて、バスケをすることになったんだっけ?確かその時、バスケのアニメにはまっていたからやってみたいという気持ちもあったため、入部したんだ。やってはみたものの、練習が本当にきつくて、走りっぱなしの基礎練習ばかりで、放課後2時間半の練習の中で試合をするのが30分だけ、後はただ基礎練習ばかりだった。夏休みなんて熱い体育館に行くのが嫌で、何度もずる休みをしていた。それでも私は2年からレギュラーに選ばれたが、何と3年生になるときにレギュラー候補の生徒が3人も練習の辛さや家庭の事情でやめてしまったのだ。そのため、主力がかけた我が部は毎年県大会まで出ていたが地区予選で負けてしまった。そのこともあり、高校は部活に入らなかった。
思い出すと久しぶりにやってみたい気持ちになるが、ボールもゴールもないため断念するしかない。両親にお願いしたら、作ってくれそうではるが、なんか大変なことになってしまいそうな気がするので黙っておくことにした。料理のこともあるし、公爵令嬢の私が何でこんな様々なことを知っているのか、不思議がっているはずだろうから、これ以上は何も言うまい。うん。
結局その日はレポートを書くことに一日を費やした。
夕食のとき、今日の自由課題について両親に話してみた。両親が学園に通っていたときも同じ課題があったらしく、父親は政治の事、母親は花の種類についてレポートを書いたと話してくれた。本当に自由な課題なのだなぁ、と聞いていて思った。
「ルセリア、もうすぐ学園が始まるが、準備はでいているかい?」
「はい、今日で学園の課題も終わったので、後はのんびりと待ちます」
「そうかい、それはよかったよ」
父親と話していると、母親が話に入ってくる。
「ルセリア、お願いがあるのだけど?」
「何ですかお母様?」
「実は近々、夫人会が行われるのだけど、珍しい料理を作ってもらいたいのだけど」
「どうしてですか?お母様」
「なんでも、学園の生徒から唐揚げのことを聞いた親が、ルセリアの料理に興味をもったらしくて、次の夫人会でぜひ食べてみたいと要望があったのよ」
「唐揚げを作ればよいのですか?」
「夫人会は言わば、お茶会だから軽食やお菓子でいいのだけど、何かないかしら」
「軽食もしくはお菓子ですか、夫人会はいつなんですか?」
「3日後なんだけど」
「・・・3日後ですか?」
「ごめんなさいね。いきなりこんなこと言って、どうかしら?」
「・・・考えてみます」
素直に無理ですと言えばいいのだが、この母親からのお願いには断れない自分がいる。明日考えてみよう、学園の課題も済んだるから、もしできなくても、許してくれるよね。よし。明日は料理の創作日になるかなぁ。私は前世の知識から自分が作れそうな軽食、お菓子を考えながら眠りについた。
*『胡蝶の夢』・・・夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも実は夢でみた蝶こそが本来の自分であって今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話
「将来か?」
このルセリアの身体に転生して半年がたつが、未だに信じられないと時々思うことがある。前世の知識の中に『胡蝶の夢』という話があるが、それにも該当しないと思う。いつか本当のルセリアに身体を返す時が来るのかも知れないと今までに考えたことはあった。
「ハァー。とにかく今は課題をやらなくちゃ」
悩んだ末に、ジオテニア国の学校についてのことをレポートにして提出しようと考えた。女王がわざわざ他国の学校での学ぶ場を提供してくれたのだから、良かったこと、学ぶべきことなど少しでも学園がよくなればと、私の意見もプラスしてレポートを書いていくことにした。
書いているときに、ふと手が止まる。
「そういえば前世では部活動というものがあったが、学園にはないわね」
スポーツといったものが、この世界にはまだなじみがないようだ。サッカー、テニス、野球、色々なスポーツが頭の中に浮かんでくる。私はバスケ部だったなぁと前世を思い出す。
確か友達に誘われて、バスケをすることになったんだっけ?確かその時、バスケのアニメにはまっていたからやってみたいという気持ちもあったため、入部したんだ。やってはみたものの、練習が本当にきつくて、走りっぱなしの基礎練習ばかりで、放課後2時間半の練習の中で試合をするのが30分だけ、後はただ基礎練習ばかりだった。夏休みなんて熱い体育館に行くのが嫌で、何度もずる休みをしていた。それでも私は2年からレギュラーに選ばれたが、何と3年生になるときにレギュラー候補の生徒が3人も練習の辛さや家庭の事情でやめてしまったのだ。そのため、主力がかけた我が部は毎年県大会まで出ていたが地区予選で負けてしまった。そのこともあり、高校は部活に入らなかった。
思い出すと久しぶりにやってみたい気持ちになるが、ボールもゴールもないため断念するしかない。両親にお願いしたら、作ってくれそうではるが、なんか大変なことになってしまいそうな気がするので黙っておくことにした。料理のこともあるし、公爵令嬢の私が何でこんな様々なことを知っているのか、不思議がっているはずだろうから、これ以上は何も言うまい。うん。
結局その日はレポートを書くことに一日を費やした。
夕食のとき、今日の自由課題について両親に話してみた。両親が学園に通っていたときも同じ課題があったらしく、父親は政治の事、母親は花の種類についてレポートを書いたと話してくれた。本当に自由な課題なのだなぁ、と聞いていて思った。
「ルセリア、もうすぐ学園が始まるが、準備はでいているかい?」
「はい、今日で学園の課題も終わったので、後はのんびりと待ちます」
「そうかい、それはよかったよ」
父親と話していると、母親が話に入ってくる。
「ルセリア、お願いがあるのだけど?」
「何ですかお母様?」
「実は近々、夫人会が行われるのだけど、珍しい料理を作ってもらいたいのだけど」
「どうしてですか?お母様」
「なんでも、学園の生徒から唐揚げのことを聞いた親が、ルセリアの料理に興味をもったらしくて、次の夫人会でぜひ食べてみたいと要望があったのよ」
「唐揚げを作ればよいのですか?」
「夫人会は言わば、お茶会だから軽食やお菓子でいいのだけど、何かないかしら」
「軽食もしくはお菓子ですか、夫人会はいつなんですか?」
「3日後なんだけど」
「・・・3日後ですか?」
「ごめんなさいね。いきなりこんなこと言って、どうかしら?」
「・・・考えてみます」
素直に無理ですと言えばいいのだが、この母親からのお願いには断れない自分がいる。明日考えてみよう、学園の課題も済んだるから、もしできなくても、許してくれるよね。よし。明日は料理の創作日になるかなぁ。私は前世の知識から自分が作れそうな軽食、お菓子を考えながら眠りについた。
*『胡蝶の夢』・・・夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも実は夢でみた蝶こそが本来の自分であって今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話
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