魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

文字の大きさ
上 下
69 / 106

69話 崩落の対応

しおりを挟む
訪問9日目の朝を迎える。早くに起きた私は、まだ寝ているエクリシアの横顔を眺め、窓から朝の景色を楽しんだ。

「あと2日間か。いろいろなことがあったけど、無事に帰れそうね」



残り2日は特に用事はない。お城の中でゆっくりしようと考えるが、



「あ、今日はお昼からローザ様との約束があるんだった」



昨日のことを思い出し、ゆっくりできないとあきらめる。

窓の外が騒がしいことに気づき、窓から外を眺めると、数人が馬を走らせて、お城の中に入って来た。衛兵の方たちかしら?何かあったのだろうか。





しばらくして、ドアを誰かがノックする。



「ルセリア、私だ。カイムだ」

「?お父様。今出ます」

エクリシアを見ると、まだ寝ていたたので、起こすのもかわいそうと思い。私だけ部屋の外に出る。



「どうしました?お父様」

「ルセリア。今しがた衛兵から女王陛下に報告が挙がったのだが、どうやら崩落が起こったらしい」

「どこですか?」

「ルセリアが賊の奇襲と崩落の可能性があると教えた場所。イリンガの谷だ」

「・・・被害は、どれくらいですか?怪我した人は、亡くなった人は?」



父親の腕を震えながらつかむ。



「落ち着くんだ。ルセリア。両国ともに負傷者0名、死亡者も0名だ」

「ほ、本当ですか?お父様」

「ああ、ルセリアが知らせてくれたおかげで、両国とも警戒して通らないように騎士や衛兵を配置していたんだよ」

「よかった」

「ただ、これから対策をしていかないといけないため、客人であるわたしたちの相手ができないと、先ほど伝えられてね」

「そうですか。仕方ないですね」



負傷者、死亡者が0名でも崩落が起きたのなら撤去作業で人員もいる。王族であっても、いきなり仕事が増えたようなものだ。すぐに対応できるわけもない。

父親から話を聞き終え、部屋に戻ってエクリシアが起きるまで、今日の予定を考えた。









少し前、馬車に乗った衛兵が城に走りこんできた。



「女王陛下、昨日の昼、イリンガの谷で崩落が起きました」

広間に通された衛兵が慌てた様子で報告する。

その報告を、国を管理する者たちが一緒になて聞く。



「被害はどの程度ですか?」

「はい、それが陛下からの地盤が緩んでいるという話もあったため、イリンガの谷を通行禁止していました。そのため、怪我人もなく、崩落だけで済みました」

「ハァー、そうですか。よかったです。ならば、後のことは、我々が引き継ぎます。ご苦労様でした」

「はい。女王陛下のおかげで、多くの被害も出さずに済みました。それでは、失礼いたします」



お辞儀をして、衛兵は広間から出ていった。そのあと、女王は国を管理するの者たちとイリンガの谷の崩落について、どのように復興していくか話し合った。方針が決まっていき、段々と重鎮たちが広間を出ていった。そして広間に残ったのは、女王と王配の二人だけになる。



「私のおかげですか?」



衛兵が言ったことを呟く。



「アレクシア?」



王配が心配そうに言う。



「本物ですね。ルセリア嬢の予知の魔眼は」

「そのようだな」



訪問した最初の日にアストライア公爵からイリンガの谷について崩落の危険があるかもしれないと進言があった。賊のはなしを聞き、それだけでも驚いたが、崩落の危険があると言われたときは、まさかと思った。しかし、ほおっておくこともできないため、衛兵にな数週間くらいイリンガの谷に通じる道の通行禁止をお願いしていた。その結果、怪我人もなく、崩落だけが起きた。もし、何も知らず民がイリンガの谷を通って崩落に巻き込まれていたかと思うと気が気ではない。



「まったく、昨日の今日で・・・・」

「アレクシア、ユースティテ王国の方々はどうする」

「残り2日ですね。申し訳ないですが、今から崩落について動きたいから、今日は相手ができないと伝えてもらえる?」

「わかった。アストライア公爵に伝えておこう」



女王と王配は自分たちのやることを確認し歩き出した。





そんなことがあったと、みんなと朝食を摂りながら父親のカイムが話してくれた。予知の魔眼でみた崩落は賊がイリンガの谷の崖の上で奇襲を仕掛けようとしていたため、地盤がもろくなっていたことから余計に負荷がかかり起こったものだった。だが、現実は違う日に崩落が起きた。結果的に崩落だけで済んだが、改めて自然とは恐ろしいものだとルセリアは思った。



「ところで、ルセリア、今日はどうしますか?」

アトランが私に聞いてくる。

「今日は約束があるんです。なのでお昼からメシス様とでかけます」

「約束ってのは何だよ」



ロベルトが聞いてくる。



「昨日話した、ローザ様からのお礼の話ですよ」

「そういえば、昨日のお話でありましたね。どんなお礼をお願いしたんですか?お姉さま」

「内緒です」



そのお礼は私ではなく、おじさんへのいいことになるはずだと思い。朝食が食べ終わるとメイスのところに向かう。



「約束の時間にはまだ時間があるけど、それまでにおじさんには身だしなみを整えてもらわないと。なんてったって、就職の面接があるのだから」



うきうき顔の私はメシスのところに早歩きで向かった。

広告の下にあるポイント評価欄【☆☆☆☆☆】から、1人10ポイント
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

やり直し令嬢は何もしない

黒姫
恋愛
逆行転生した令嬢が何もしない事で自分と妹を死の運命から救う話

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...