魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

文字の大きさ
上 下
63 / 106

63話 誘拐

しおりを挟む
「まったくどこに行ったのかしら?あの庶民は?」

「ローザ様お待ちください!」

「かなり探しましたが見つかれません。はー、疲れました!」



アリスを追って、ローザと取り巻きの二人が街を歩いていた。三人で帰ろうとしたとき、アリスがサタン王子の馬車に乗るところを見て、急いで自分の馬車で追ってもらった。そして、アリスが街中で馬車から男性二人と降りて街に入ったところを見て。後を追ったのだが、人込みで見失ってしまった。

「あなたたち、もっと探してきなさい。私はここで待っていますから」



「一人で大丈夫ですか?ローザ様」

「私が残りましょうか?」



「必要ありません。これだけ人混みがいるのだから、何かあれば叫べばいいだけですから」



ローザの言葉で二人は、人込みの中を探しに出かける。

少し時間が立った時、男が話しかけてきた。



「お嬢ちゃん、だれか探してんのかい?」

「あなたには関係ありません。消えてくださる」

「つれないこと言うね。もしかしたら、あんたが探している人、知ってるかもしれないぜ」

「何ですって?どこで見たの」

「たしかあの建物の中に入るのを見たぜ」



男が指をさしたのは、少し離れた豪華な建物。

ローザはそこで、アリスがサタン王子と会う約束でもしているのかと思い、急いで向かおうとするが人混みが多く急いで歩けない。

「お嬢ちゃん、あそこに行くのに近道があるぜ、案内してやるよ」

「お願いするわ」







しばらく探したが、結局見つからなかったため、取り巻きの二人は来た道を振り返り、ローザが待っている場所まで戻ってくる。しかし、そこにローザの姿がない。



「ローザ様、ローザ様、どこですか?」

「もう帰ってしまわれたのでしょうか?」

「そんなことする御方ではないでしょう」



二人は近くにいる人に尋ねていく。そして10人目に尋ねた人から、ローザらしき人が男と一緒に歩いていたと証言を聞く。



「どんな男でしたか?服装は?」

「服装は俺たちと同じような服を着ていたかなぁ。どう見ても貴族にはみえなかったですよ」

「・・・・もしかして、誘拐ですか?」

「そんなまさか?・・・・ほんとに」



取り巻きお二人は、顔を青くする。



「ローザ様ーーーーーーどこですかーーーーーー」

「ローザ様、ローザ様ーーーー、返事してください」



二人の叫びにも似た声が街中に響くが、その返事に答える者はいなかった。











はっ?これは。

魔眼で未来をみた私は目の周りを手で触ると、やはり熱くなっていた。

急がなきゃ、



「メシス様、来てください」



メシスを呼び、家の影から姿を出し、私のもとまでかけつけて来る。



「どうされました?」

「説明をしている暇はないから、私についてきて」



おじさんはメシスの登場に驚いている。



「お嬢ちゃん、誰だい、その若者は?」



おじさんのほうに向きなおり



「私の護衛の騎士です」

「き、騎士だって!まさか、お、俺を捕まえに?」



騎士と聞いておどおどし始める。メシスはなぜ、これほどまでにおじさんが驚いているのかわからないといった顔をしている。



「大丈夫です。彼はうまい話のことを知りませんから」



私の言葉で、メシスが表れたと時よりも驚いた顔をする。メシスに目を向けていたおじさんが今の言葉で、私の方を向く。



「お嬢ちゃん、あんたは?いったい?」



おじさんに近づいていき、私の眼がおじさんの顔を写す。



「おじさん。辛い人生であっても、娘のために頑張って生きようとするあなたは立派な父親です。せっかく助かった命を大切にしてください。きっとこれからはいいことがるはずです。明日を信じて生きてください」



それだけ言うと、私は街に戻るため、走りだした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。 嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。 イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。 娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

処理中です...