魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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57話 ジオテニア国へ入国

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ジオテニア国に入国した、私たちは真っ先にお城に入った。



城下を見て回りたいと思ったが、流石に今はできない。



煌びやかな調度品と、稀少な異国の美術品が並ぶ城の中。どの品もピカピカに磨かれ、光が屈折し合い眩い輝きをいくつも瞬かせている。



うわぁ、やっぱりお城って、どこもすごいのね!



広い廊下を歩いていた私たちは大きなドアの前で止まる。扉が開かれると同時に、ジオテニア国の王族が私達を待っていた。



「待っていましたよ、遠路はるばるようこそおいでくださいました。…随分と遅れましたね。」

緩やかに微笑む女王と、そして王配と子どもの王子と王女、宰相が迎えてくれる。



今回の訪問に国王陛下と王妃は参加していない。その代わりに王子と王女が訪問している。一国の王が簡単に国を留守にはできなのだろう。そのためもあって、公爵である父親のカイムと母親のティアナが保護者のように今回は同行しいる。

公爵のカイムが一歩前に出て進言する。



「申し訳ありせん。女王陛下、実は少々トラブルがありまして、後でお話いたします」

「そうですか、ならばあとで聞きましょう。長旅だった故、今夜がごゆるりと休んでください」

「ありがとうございます。女王陛下」

カイムが深く礼をして、背後に控える私たちもそれに続く。

必要な挨拶も終わり、私たちは各部屋に案内された。そのあと、カイムが女王と話してくると席を立ち部屋から出ていった。





「そうですか…。」

部屋の中で女王、王配、宰相がカイムの説明を聞きおえる。溜息を何度も繰り返し吐く女王。驚いている王配と宰相。

「よく、盗賊が待ち伏せしていることがわかりましたね」

王配が聞いてくる。

「目撃情報があり、我が国の民が知らせてくれたのです」

ちょっと厳しい説明だが仕方ない。女王、王配、宰相が疑うような眼差しを向けるが、カイムは笑って誤魔化す。流石に、ルセリアが予知の魔眼でみたからとは言えない。この国にも魔眼をもって生まれる者はいるが、予知の魔眼を持っている者がいるとわかれば、それだけで国交・国益に大きくかかわってくる。他国に知られれば、多くの国がルセリアを欲しがるだろう。本人はあまりその自覚がないようだが。



「今夜は、歓迎のパーティーを用意してある。両国の友好のためにも楽しんでください」

「お心遣い、感謝いたします。女王陛下」

カイムが部屋を出ようとしたとき、振り返り女王陛下に

「盗賊が隠れていたイリンガの谷ですが、ここ最近、雨の日が続いたため、地盤がもろくなっているかもしれません。そのため、通る者には気を付けるようにと告知してください」

カイムは女王に注意をするように促す。

「・・・わかりました。国民に伝えておきます」





翌日の夕方、城の入口の前に馬車が停まりそこから正装姿の貴族がタキシードやドレス姿で馬車から降りてくる。次第に人が広間に集まってくる。公爵であるカイムとティアナは既に広間でジオテニア国の貴族たちと交流していた。



アトランとロベルトとエクリシアと私は共に広間に足を踏み入れた。

すると広間に入った途端至る所から様々な視線が私達に集まってきた。その視線は明らかに値踏みするような視線であり、目線だけ回りに向けると沢山のご子息ご令嬢がコソコソとお互い話ながら私達を見てきた。

・・・うわぁ~予想はしてたけど・・・貴族社会って面倒~

皆の視線に3人は少し緊張しているようだが、前世では社会人を経験していたので、笑顔は人間関係を友好にする為の一つの手だと身に染みて分かっている。だから、私は三人に笑顔で

「楽しみましょう」

「「「・・・・」」」



「そうですね。それよりもルセリアは私から離れないように」

「エクリシアも気を付けろよ。可愛い妹に変な虫が付くのは勘弁だぜ」

「はい、お兄様」



私達が広間の中まで入ると、様子を伺っていたご子息ご令嬢達が一気に私達の下に集まってきて次々に挨拶をしてきた。

隣国の王子と王女なので、この機会にお知り合いになり仲良くしておこうと考えている人はお大勢いるようだ。頑張って王子達に自分をアピールする令嬢。王女の可愛さをはなす子息たち。

挨拶の波を笑顔で乗り気っていく。



三人とも慣れたものね!

そうして私もなんとかその挨拶の波を笑顔で乗り気る。

一通り挨拶も終わり、私は料理が置かれているスペースに移動する。

取り皿を手に持ち美味しそうな料理を皿に乗せていった。子羊のテリーヌとサラダ、そしてお米様だ。久しぶりに食べるお米は三倍美味しく感じた。口の中で溶けていく旨味に頬を緩ませながら満足そうに食べていると、ふとある事に気が付き料理が乗っている机を見回した。

・・・あれ?ここの料理全然食べられてないような、これじゃ確実に余るよな~うわぁ~勿体無い



「君は、これらの食事を用意するのに、どのくらいお金が必要か知っているかい」



ジャガイモを教えてあげた男の子の言葉が頭に浮かぶ。



「もったいないなぁ、余るならお持ち帰りできればいいのに」

「持ち帰りたいのか?」

「ええ!」



突然私の呟きに不思議そうに反応した声が後ろから聞こえ、私は驚きの声を上げながら慌てて振り向くとそこには不思議そうな顔で私を見ていた。



「サタン王子!!」



ジオテニア国の王子の登場に私は驚きの表情のまま固まった。
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