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51話 夢をみる

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空から雨が降っている。勢いがあり、傘をさしていても濡れてしまう勢いだ。そんな日が学園の終業式になった。



入学式が行われた体育館で一学生が前、二学生が中央、三学生が後ろに並んでいる。

ステージの上で学園長が挨拶している。

「皆さん、おはようございます。

お疲れ様でした。今年度も半分が終わりました。日々生活していると、その考えや行動に対して思い通りにならないことが多いです。自分の力が及ばないことに対してはどうしようもないのですが、自分の力が及ぶことに対しても、思い通りにならないことがたくさんあります。日々生活をしていく中では、受け入れがたいことも多いですが、その不幸や不満を幸せや安心に変えていけるのも、また、他でもない自分自身だということを忘れてはいけません。受け入れがたいことを、時間をかけながら、良い方向に変えていく心の持ち方が大事なことだと、私も、日々感じています。「心の持ち方」というお話でした。生徒の皆さんはどう思いますか?・・・・・・」



長い、と生徒のみんなが感じているなかやっと話が終わる。





終業式が終わり、三学生から順番に体育館から退場していく。私たちも一学生の自分たちのクラスに戻ってくる。授業がないため、いつもより、みんな賑わっている。



「ルセリア、隣国への訪問は3日後ですよ、準備は進んでいますか?」

クラスに戻って来て席についたときアトランが私に聞いてくる。

「はい、準備と言って、着替えくらいでしょうか?」

「アストライア公爵とティアナ夫人も同行されるのなら、着替えだけでもいいと思います。ただ隣国に招待されるだけではなく、我が王国からは土産を用意しないといけないのです」

「お土産ですか?」

「他国のものを招待すれば、それだけお金がかかりますから、友好を結んでいる我が国としても、その分の見返りは返す必要があるんです」

「政治の世界でも損得は大事ですね」





「ちなみに、どんなものを見返りとして用意するのですか?」

「食料、建築資材、などがありありますが、自国製品の陶器はすごく人気がありますよ。後は宝石や貴金属でしょうか?僕たちが出発する一日前にそれを積んだ馬車が先に出発するんですよ」

「そうなんですね」

隣国への訪問話をアトランから聞いているとグローバー先生が入って来た。



「みんな、半年間お疲れ様。自分の成長を実感できたか?望ましい人間関係の下、楽しい学級づくりはできたか?俺はこのクラスの担任になれて本当に良かったと思っている。みんなも同じならうれしい。長期休みに入るが、未来を想像して、今の生活にこれからの生活に必要なものを考えて行動をして一日一日を大切にしてくれ、それでは良き休日を」



先生がクラスから出ていく。

仲のいいクラスメイトは、遊ぶ約束や、勉強会の約束をしている。様子を見ていると、庶民の生徒同士で約束をしている人もいれば、貴族の生徒が庶民の生徒に声をかけ約束をしてる姿もあった。本当にこのクラスはいいクラスになった。



私も友達のリーネット、ステラ、シルフィに長期休暇の話をし、約束をしてから屋敷に帰った。



長期休暇と言っても、休みの半分以上は、もう予定が入っている。前世の中学校の時には考えられないことだ。そうでもないか?部活や塾があったし。



夕食が終わり、入浴を済ませ私は明日から始まる長期休暇に思いをはせてベッドに入った。









「賊は?一体どうなっている⁈」

「わかりません。崖の上から大岩が落ちてきて、我々の退路を断ってから、賊は全員崖上から射撃を繰り返しています」

「せめて動ける馬だけでも使い、馬車に乗っている者たちを逃がしたいなぁ」

「しかし、隊長、積み荷は?」

「馬鹿者。今は人命の命を優先しろ」



「皆さんは馬車の中にいてください」

騎士の言葉に、荷物を運ぶた雇われた人達は馬車の中で身を固める。



谷を通っていた馬車の集団に突然崖の上から大岩が前後に落ちてきて退路を断たれた。大きな岩のため、馬が通ることはできない。左右は崖で動けず。前後は大岩で進めない。

「馬を降り、インガーは後方の部隊にこの事態を伝えてくれ、ギャレンは先行し隣国に応援を要請してくれ。頼む」

「「はい。隊長」」



「盾を作って銃弾を防いで、道を作るんだぁ」



騎士たちは馬を降り他の騎士の力を借り、2人の騎士が大岩を超えて走り出す。



バン!バン!

銃声が響く。



「ウワァーーー」

銃声とともに遠くから悲鳴が聞こえた。インガーとギャレンは走りながら後ろを向くが走る足の力は抜かない。



それから10分は騎士と賊との銃撃戦だったが、次第に劣勢に追い込まれ、撃たれた騎士たちは、馬車の影で止血処置をしている。そんな中でも隊長の騎士は前に出て、足や腕から血を流しながらも懸命に戦っていた。だが、ついに銃の球が尽きる。



銃を捨て、代わりに剣を抜く。



「やっと弾が尽きたようだなぁ?手間取らせやがって‼︎、お前ら降りるぞ」

崖の上から賊達の姿が表れる。ロープを下におろし、一人一人降りていく。騎士が降りてくるところを何とかしようとするが、崖の上から狙撃され、身動きが取れない。

盗賊のような風貌の男達が地面に着地し、足音が多くなり、どんどん増えていく。



「ここから先は、全体に行かせん」

剣を構え、堂々とした声で隊長の騎士が叫ぶ。



「なんだこいつ。馬鹿じゃねぇの。この状況で」

「大人しくしてればまだ生かしておいてやるよ」

「いや、ウソ言うなよお前」

「おい、無駄に傷つけるな」

「悪いな、俺たちも生きるために仕方ないんだ」



賊たちが大笑いする。そんな中で、一人笑っていない賊がいた。後悔しているような、申し訳ないという顔をしている。





賊が銃を隊長の騎士に構えたとき、







ガガガガガガガガガガガガカッーーーーーー!!!

酷い地割れのような、地響きの音が木霊し、大地が揺れ出す。

上から下に崖から大きな岩、小さな岩が雨のように降ってくる。そして、しばらくすると崖が崩れ、瓦礫が雪崩のように押し寄せてきた。



「わぁぁぁああーー」

「た、助けてくれーーー」

「お前ら、どけーよーー」

「逃げろ、お前たち」

「ああ、ごめんよ。レイン、父ちゃんダメみたいだ」

賊たちは慌てる。



「全員、逃げろーーー」

隊長の騎士は部下と馬車に乗っている人に対して叫ぶ。

それからは、瓦礫の音が煩くて、声が聞き取れない。上か下かわからない程、大量の瓦礫に覆い尽くされ私のみているものはそこで黒く染まった。
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