魔眼がみつめるこの世界~転生した私は好きに生きる。だから聖女にはなりたくない~

悪転

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40話 ジャガイモ

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王妃様の誕生祭当日になり、両親と私は今王城に来ている。会場は国内外から来られた来賓が多く来ている。王子や王女の生誕祭と比べると規模が違う。近隣諸国の王族に貴族の人も集められた城内には優雅な演奏曲と、豪勢なご馳走が煌びやかな広間に溢れかえっている。



「30歳の御誕生日おめでとうございます、セリカ王妃。」



「セリカ王妃。素晴らしいお話でした。ぜひ我が国にお越しください」



「セリカ王妃、以前教えてもらった遊戯なのですが、是非もっとお話を…」



生誕祭の挨拶を終えた王妃は招かれた来賓が次々と挨拶に来てなかなか気は休まらない様子だった。疲れを全く感じさせず、笑顔で対応する姿はまさに王族、上に立つ者だと私は思った。



「大丈夫かしら、王妃様?」

「特に、体調は問題ないようですわ。強いて言えばお腹の調子が悪いようですが?」



ステラが視診の魔眼で王妃をみたのだろう。それを聞いて私は、ストレスにより胃の調子がよくないのかもしれないと思う。

「お腹の調子ですか。それは心配ですね」

シルフィが私の横で心配する。



私たちは今、3人でパーティーを楽しんでいる。王子達は王族ということもあり、近隣諸国の王族に貴族の人達と交流している。そのため、私たちは3人で集まり、パーティーを眺めて過ごしていた。



しばらくして、私は小腹がすいたため、食事が置かれている机に移動する。

「うわー、美味しそうな料理がこんなに、いただきます」

1口食べると、「料理に感動しました」とテレビで言っていた人達の気持ちがわかるくらいおいしかった。慌てず、騒がず、上品に食事を続けていたら、横から声がした。



「よく食べるね。君は、そんなに食べていたら、太るぞ」



「すいません。おいしくて夢中で食べていました」

誰だろう、この男の子は?同い年くらいかしら。

「君は、これらの食事を用意するのに、どのくらいお金が必要か知っているかい」

「いえ、わかりません」

「はぁー。ならこれらの余った食事はどうなると思う」

「廃棄でしょうか?」

「そうだ、何ともったいないことか。わが国では、冬になれば何の作物も取れずに備蓄の不十分な農民は何人も死ぬんだ。この国だって、貧しいものは多くいるだろう。この料理を用意するお金をもっと・・・・・・・・・・・」

男の子の話を私は、真剣に聞いていた。この国よりも北にある国なため、とても寒いらしく、飢え死にする人数が多いという。



「でしたら、何か冬越しの為の備蓄用にいいのはないか考えてみませんか?」

「そんなものがあるものか?」



私は少し考え、前世のことを思い出す。北の国では有名な野菜は、そうだ。

「ジャガイモ、ジャガイモがあります」

「ジャガイモだと、あのまずい野菜が?、味もあまりおいしくなく、店でもあまり出回っていなんぞ」

「そうなんですか。ジャガイモは寒くてもきちんと成長し、収穫することができます。安定に育つし、それほど世話をする必要もないので、寒い国の方にはもってこいですよ」

「だが、味がよくない」

文句ばかり言うな、この男の子、

「でしたら、今から料理しますからおいしいくないか、食べてみてください」



私は男の子の手を引き、料理を作っているところに向かう。

キッチンでは多くの料理人がいたが、すでに料理を作り終えているため、忙しい様子はなかった。私は料理人にお願いして、キッチンを貸してもらえるようにお願いする。戸惑っていたが、何とか許可をもらい、私は料理をしていく。前世で一人暮らしをしていた時の料理スキルが私にはあると言っても私ができる料理はそんなにない、それなら簡単な料理をと考え作っていく。

作る料理は2つだ。

ジャガイモをじゃぶじゃぶと水で洗うと、皮をむき始める。皮をむいたジャガイモを薄くスライスして、揚げて、塩をかけるというだけの簡単なやつだ。次はジャガイモを焼き、バターを乗せて食べるシンプルなやつだ。

男の子と料理たちは、驚いた様子で私を見ている。

「できました」

と出皿に盛る。

「もう出来上がりですか? そんな薄さではぱりぱりするだけで、ちっともほくほく感がないし、美味しくないと思われるのですが……」

料理人が私の料理に文句を言ってくる。

「こっちも、焼いてバターを乗せただけだろ」

男の子も私の料理に文句を言ってくる。





「食べてみてください」自信満々な顔で言う。



料理人と男の子が料理を食べる。

「ぱりぱりと! 不思議な食感だ! 口の中で砕けて、音がする。面白いです」

「焼いたジャガイモにバターが溶け出し、食べると、ホクホク感と甘じょっぱさが一体となり、うまい」

それぞれの料理の感想を言ってくれるが、2つともおいしかったようだ。

「どうですか、ジャガイモは、おいしい食べものでしょう」

「ああ、ありがとう。さっそく国に戻り、農民たちに生産するよう父に伝えよう」

料理人たちにお礼を言って、私たちは会場に戻った。会場に戻るといなかった私を心配したみんなが寄ってきてくれた。

「そなた、名前は?」

「ルセリア・アストライアといいます」

「ルセリアか、また会おう」

みんなが寄ってきてくれる前に、男の子は私から離れていった。



「ルセリア探しましたよ」

「ほんとだ。ずっといなかったら心配したぞ」

「お姉様、どちらに行かれていたのですか?」

アトラン、ロベルト、エクリシアが尋ねて来る。

「ちょっと、料理をしていたの」





「「「料理?」」」

私は男の子と会ってからのことを話す。

「そうだったのですね」

「しかし、その男の子って誰だよ」



「名前は聞いていなかったので、わからないです」

「そうですか?」



そのあと、ステラとシルフィと合流して生誕祭を楽しんだ。無事、生誕祭が終わり、来賓がいなくなった頃に、私たちは王妃の部屋を訪れていた。全員で一緒に作ったプレゼントを渡すために。

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