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30話 やさしい陛下

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次の休みの日になり、王城に来ている私は、なぜか笑顔の陛下といつもの、あの部屋で対面していた。護衛のメシスが屋敷から王城まで来てくれたのだが、今は部屋の外で待機している。



「ルセリア嬢、学園生活は楽しんでいるかね」

「はい、陛下、充実した毎日を送っています」

「それは何よりだ」

「・・・・・・・・」



何だろう、腹の探り合いをしているような空気が漂っている。



「今日、そなたを呼び出したのは、いくつか話さなければならないことがあるからだ」

「私にですか」



「まず一つ。レコーラ村でのことだ。あれからコレラの感染者は出ておらず、糞尿を肥料にする農作は全面的に中止し、ため池の水もこれから循環し、村の衛生面を高めていくよう検討している。また、レコーラ村のことは伏せて、王国全体に広めていこうと思う」

「それは、いいことです。これで多くの人が救われます」

「レコーラ村の村長から感謝の手紙が来ておってなぁ」

国王が村長の手紙を私に渡してくる。

内容は学校でアトランから大体聞いているのだが。手紙を受け取った私は手紙を読んでいく。



{深紅の髪の聖女様のおかげて、この村は助かりました。聖女様がいなければ、私たちの村は疫病が蔓延し、村だけではなく、王国にとっても悲劇になっていたでしょう。本当にレコーラ村に来てくださり、ありがとうございました。村の者たちを代表し、ここにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました}



あれ、聖女様?・・・少女じゃなくて。私は手紙を読み終えると、陛下の顔を見る。

「面白い手紙であろう」

陛下の口元が笑っている。

「アトラン様からは深紅の髪の少女が、と聞いていたのですが」

「確かに、息子にはそう伝えたが、実際は見ての通りだ。村の者たちは、そなたのことを聖女と思っているようでな」

「・・・・・私は聖女ではありませんよ」

「まだ、というだけだ。予知の魔眼を持ち、多くのものを救う、そなたが聖女でなくて何だというのだ」



「私は・・・」







何も言えない私を見て陛下が

「ルセリア嬢、そなたが平穏を望んでいるのは以前聞いた。私もできる限り、その思いを組みたい。今回はまだ規模が小さい村でのことだったため、噂は広まらないだろうが、もしこれから先、もっと大きな規模になった場合、私とて庇いきれるものではない。そのことを忘れないでくれ」





「はい、陛下」



「2つ目は此度の褒美についてだ、何か望みはあるか?」

「望みでございますか?、、、特にないのですが?」

「ハァー、変わらんの、そなたわ」

優しい笑みで陛下が私を見てくる。

「ならば、考えておくといい、欲しいものやしてほしいことが見つかれば、いつでも言いに来なさい」



「ありがとうございます。陛下」



「3つ目は、ルセリア嬢、そなたアトランとロベルトのことをどう思う?」

「親しくしていただいています。学園やそれ以外の時も仲の良い・・・・・

「そうではない、異性としてどう見ているのか聞いているのだ」

陛下が私が話しているときに、話を遮る。





「以前もお断りしたと思いますが。婚約などは考えていません」

「息子たちには魅力を感じないのか?」

「いえ、違います。ただ自分などには、、、恐れおおくて」

「なぜ、それほどまでに自分に自信がないのかね?」



「・・・・・・・」

それは、おそらく私の前世の記憶のためだろうと口にはできないが、心の中で思う。



「すまなかった。ルセリア嬢。人には言えないことは多々ある。レディに対して礼を失していた申し訳ない」

「いえ、陛下、私も気を使わせてしましました。申し訳ありません」



「この話はこれまでにしよう」



その言葉で空気が少し軽くなる。





「では最後に、4つ目だ。ルセリア嬢、オセロを教えてくれないか?」

「はい???オセロですか」

「エクリシアがそなたから教えてもらったと聞いてな、家族で勝負したのだが、私が最下位だったんだ」

陛下は悔しそうな顔をされ、説明してくれる。

「陛下、勝負は時の運。負けるけることはありますよ」

「5回連続で、最下位だ?」

「・・・・・・」



私は眼をつむり、笑顔で眼を開ける。

「陛下、特訓しましょう。私が相手になります」

「本当か、ルセリア嬢、よし。そなたに訓練してもらえば、トップのエクリシアにも勝てるだろう」

「はい、陛下、私と共にエクリシア様に勝ちましょう」

それから、私は陛下とオセロの特訓を2時間する。しかし、弱い私と弱い陛下が共に特訓してもほとんど成長していないのを知るのは、陛下がその日の夜に家族にオセロの勝負を挑んで結果が出たときだった。
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