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22話 レコーラ村

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お茶会が終わり、みんなを見送ってから、私は自分の部屋に急いで向かう。机に入っているルセリアノートを出して、私は読んでいく。そして私が先ほど思いだした、文章が書かれているページを見つける。


{レコーラ村というところで、たくさんの人がなくなり、そして、それは広がっていく}


あった。私は他になか、関係するところはないか探していく。
ノートを広げてから一時間が過ぎたが、結局関係のありそうなページは見つからなかった。
私は夕食の時、両親にレコーラ村のことについて聞いたが、特に問題があるような村でもなく、野菜を作っている畑が多く、牧畜などもしており、王都にもその野菜が運ばれている。王都から馬車で2時間の距離のところにあり、村の近くには大きな川、ライン川が流れている。また、畑のために多くのため池があるという。

両親からレコーラ村の話を聞いた私は、自室に戻ってくる。

もしかしたら、もっとずっと先の未来なのかもしれないと、私は考える。話を聞いた限りでは、今すぐ何かが起こるようなこともなく、おこっているとも考えにくい。私は手がかりをつかむことができないまま眠りについた。




そして、野外学習の当日がくる。



朝早くから、私たちは校庭に集まり、先生が一日の流れを説明してくれる。馬車に乗ってから2時間、現地についてからは現地の農家の人の話を聞く、昼食、自由時間、そして馬車に乗り2時間。毎年、貴族の生徒からは不満を言われるそうだが、庶民のほうが多い学園なので仕方がない。

貴族なら自分たちの領地の民がどのような暮らし生活をしているのか、場所は違えども大体が同じなのでそれを知るいい機会になると思うのだが。
私たちは馬車に乗り込み出発する。王都の門を抜け、道沿いに従い進んでいく。王都が見えなくなるころには、平野が広がっていた。そして、しばらくすると、左側に大きな川、ライン川が見えてくる。私たちは、おしゃべりをしながら、景色を楽しんでいく。やがて、田んぼや畑が見始めてくる。



‘くさい‘微かだがにおいが変わる。周りの生徒も気になるようで、鼻をつまんだりするものが出てくる。先生から「これは馬や豚や牛の糞のにおいだ」と説明がある。糞を肥料にしているから、畑からはこのようなにおいがするのだと。慣れている生徒からすれば、問題ないが初めての生徒からすればたまったものではない様子。

しかし、人間はなれる生き物だ。最初は臭いと思っていたにおいも、慣れてくると何とも思わなくなる。鼻をつまんでいた生徒もだんだんと手を鼻からはなしていく。大体の生徒がこの匂いに慣れてきたころ、村が見えてくる。馬や豚や牛を飼っている建物、水をためるため池、そしてそこに住む農家の家が、人口が300人の小さい村だ。



ここがレコーラ村、ルセリアのノートに書かれていた村
馬車が止まり、生徒が降りていく。村長や農民の方々が私たちを歓迎してくれる。各クラスごとに担当の人がいて、田畑を回りながら、村で作っている野菜や果物を紹介する。一通り、見ることが出来たら、今度は昼食だ。実はこれが一番の今日のお楽しみにしていたのだが、料理を作る人が体調をくずしたと事前に連絡があり、弁当は各自持参という形になっていた。

「はー、食べたかったなぁ、ここのお弁当」

「ぼくも残念です」

「俺も、普段食べてるものを、弁当にしただけだからなぁ」

「ロベルト様、運が悪かったと思うしかないですわ」

「私も少し残念です」

「皆様、、、」

弁当を食べながら、田畑の景色を眺めていると、村長に農民の方が駆け寄ってきた。


「村長、また体調不良者が出た」

「またか?いったい、どうなっているんだ」

村長も困惑しながら、対応しているが、私は村長のほうに近づいていき、

「どうかされたのですか?」と尋ねる。

「おさがわせしてしまって、申し訳ない。実は数日前から体調を崩している人がいるんですが、日に日にその人数が増えているんです」

「え?」

驚くが、


「病院で診てもらいましたか?」


「いえ、人口が少ない村なので、週に2回、王都から医者の方が来るくらいです」


嫌な予感がする。


「あの、どのように体調を崩されているのですか?」

私は村長から体調を崩した人の症状を聞く、腹痛・発熱はなく、下痢が何度も出る。筋肉の痙攣なども起きている人がいて症状が非常に軽い人もいれば、重い人もいる。話を要約すれば、こんなところだ。


‘‘ は、!‘‘

もしかして、と前世の知識の中で当てはまる病気がある。私はもう一度、ここから見える景色を確認する。畑、牧場、そしてため池。

「村長さん、」


大きな声で村長を呼ぶ。私の声に驚いたのか、他の近くにいた生徒がこちらを向く。そして私を心配して寄ってくるみんな。


「皆さんが飲んでいる水はどこからくんだ水ですか?」


「?ため池からくんだ水です」


大きく眼を開く。

「村の人を集めてください、今すぐに」

できるだけ大きな声で村長に叫んだ。
大きな声で言ったため、村長が走って皆を呼びにいく。



「どうしたんですか、ルセリア」

アトランが私を心配したためか‘嬢‘を付けるのを忘れている。しかし、今はそんなこと言っている場合ではない。まだ、私が考えている病気なのか、わからないが、だけど

予知の魔眼を知っているのは、この場では、王子達だけだ、そのため、私はアトランとロベルトの腕をつかみ、他の皆をその場に待たせ、人気がいないところまで連れていく。



「どうしたんだ、ルセリア」

「落ち着いてください、ルセリア」



「未来をみました」



「「!!!?」」

王子たち二人が息をのむ。



「近い将来、この村で疫病がはやります。いえ、もう起きています。先ほど、体調が悪いというものが、何人も出ていると言っていました」



「疫病ですか!!」

「疫病だと!!」

「声が大きいです」

右手と左手で、二人の口をふさぐ。

「でしたら、早く王都に戻り、対策を立てなくては」

「そうだ、早くクラスの皆を避難させないと」

「落ち着いてください、私たちはおそらく大丈夫だと思います」

「なぜですか?」

「感染していないからです。。。。とにかく、今は先生に説明して、生徒を早くここから避難させてください。」

「アトラン様、お願いできますか」

「ロベルト様は、急ぎこのことを国王陛下に伝えてください。そして、至急用意してほしいものが、きれいな水と柑橘類もしくは塩を用意してもらってください。村にいる人たちの分です」



二人は驚き、身体を動かそうとしない。突然のことで困惑しているのだろう。

私は、大きな声で


「アトラン・ロベルト」


私の声で、はっとした二人はお互いに顔を見合わせ、頷きあい行動していく。

みんなのところに戻ってくる。

「どうしたんですか?ルセリア様」

「突然王子達だけを連れていかれて心配しました」

「ルセリア様、何かありました」

今できることは、こぶしを握る

「みんなに、協力してもらいたいことがあるの。・・・・・・・・・・。お願いできる」

「どうしてそんなことを?」

「説明している時間がないの、お願い、みんな」



私の顔が真剣なことに、みんなの顔も真剣になってくる。



「わかりました、後で必ず理由を説明していたただきますよ。行きますわよ、皆さん」

みんなが走り出し、私も用意をする。

しばらくして村長が村人を30人くらいは連れて戻ってくる。ちょうど、その頃、王子達から事情を聴いた先生が私たちを呼びに来る。他の先生たちも各クラスの生徒を集め、馬車に乗るように伝える。生徒には説明しない様子なため、混乱はみられるが馬車に乗っていく。


「ルセリア、君も早く馬車に乗るんだ」

グローバー先生が、早く乗るように言うが、私は、

「先生、申し訳ありませんが、村長や村の方々に説明しなければならないので、私は残ります」

「??何を言っているんだ。ルセリア、、、、もしかして君は知って、、、」

「はい、ですから大丈夫です。早く行ってください」

「だめだ、君だけを残していくことはできない」

「それを言うと、村の方々を残していくことになりまよ」

「!!!」

先生か私のほうに向かってくる。口で聞かないなら腕づくで、ということか。



「私を乗せようとするなら、今すぐ大声でみんなに話しますよ」

先生の動きがそこで止まる。

「大丈夫です。先生」

強く先生を見る。迷いのないまっすぐな眼で。


「わかった。すぐに戻ってくるからなぁ」

先生は馬車のり、馬車を走らせる。  ‘ごめんなさい、先生‘



馬車に背を向けて、村長たちが待っているところまで戻る。
村長たちや村人たちは困惑している。私は前に出ていき、村人の顔を見ながら静かになるのを待つ。そして説明を始める。

「皆さん、突然のことで混乱されていると思いますが、落ち着いて聞いてください。今この村では疫病が流行ろうとしています。体調を崩された方がいるのは、そのためです」



「「「「「「「「えきびょう!!!」」」」」」

周りが騒がしくなる。慌てだす人、驚く人、信じられないという顔の人、みなが私の言葉に驚く。

「心配しないでください。皆さん、国はあなたたちを見捨てません」

私の言葉に村人が

「何言ってんだ。昔、疫病が流行った村や町は、家だけでなく、そこに住んでいた人も燃やされているんだぞー」

雄叫びのように村人が叫ぶ。それを聞き、先ほど以上に騒ぎ出す。

「そうなの!私たちどうなるの?」
「どうすればいいんだよ」
「俺たち死ぬのか」
「死にたくないよ」
「助けてー」
「い、いやだよ、」

村人たちがだんだん騒ぐのをやめ、悲しみ出す。中には泣き出す人、両手を合わせ祈り出す人まで出てくる。

まだ、この世界の歴史を私はよく知らないが、前世の世界でも、未知の病が見つかったら、隔離されたり連行さてたりする。病が治ったとしても、それによる差別や偏見で人生が大きく変わる。医学が進歩していても未だにそうなのだから、この世界の未知の病というのに対しての対応はおそらくひどいものなのだろう。


でも、前世の知識がある私はこの疫病を知っている。だから、まだ間に合う。救える。






「大丈夫です」 優しい声で言う。

騒いでいないため、私の声はさっきよりも皆に聞き取りやすくなっている。私の声が聞こえた村人は私の顔を見上げる。そして、私の眼が一人一人の顔を映していく。



「そうならないために、私がいるのですから」



しばらくの間、誰も何も言わなくなる。柔らかい笑顔で村人たちを見続ける私。だんだんと村人の動揺が落ち着きだす。

「本当ですか?」
「助かるんですね?」
「村は、俺の子供は?」
「助かるの?」
「あなたは?」

村人が尋ねて来る。その目には微かな希望の光がうまれる。

「大丈夫です。必ず救います」

村人がまた、無言になる。
さきほどの絶望の目ではなく、生きたいという希望の目を私に向ける。
また涙を流し出す人もいるが今度の涙は絶望の涙ではない希望の涙だ。、口を開け安心した顔をする人が何人も出て来る。両手を合わせ祈り出していた人は、今度は私に向かって祈り始める。

そんな中、村人の誰かが呟いた

「聖女様」

と。
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