親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第5章「認めたくない」

夕暮れの図書室にて。

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ふいにそんなことが気になって、あたしは公ちゃんに横目で聞いてみた。
すると公ちゃんは…

「そうだな。ちょい寂しいかもな」

そう言って、複雑そうな顔をした。
…え?それって…
そんな思わぬ公ちゃんの言葉に、あたしは思わず目を見開いて公ちゃんに言う。

「っ…ね、それってどういう意味!?まさかっ…」

けど…

「いや、真希が期待してるようなそういう意味じゃねーよ。
ただ、俺は真希を妹みたいに思ってるから…何つーの?ほら、兄貴みたいな立場としてちょっとだけ複雑…みたいなさ」
「…なぁんだ」
「ははっ、期待した?」
「かなりね」
「あほだ、」

公ちゃんはあたしの言葉にそう言うと、可笑しそうに笑う。
今のは、はっきりと公ちゃんに告白を断られたようなものだ。
それなのに……いつもと違って、不思議とそこまでショックじゃない。
そのことにあたしが独り首を傾げていると、その後ろで公ちゃんが小さな声でぼそっと呟いた。

「……何で水野だよ」
「え、何か言った?」
「何でもない、」
「?」

だけど公ちゃんは何も言ってはくれず、あたしの横を通り過ぎて先にすたすたと教室へと戻って行く。
公ちゃんのことは、確かに好きなはずなのに。
今は不思議なくらいに、あたしの中には「水野くん」がいるんだ…。

…………

ある日の放課後。
オレンジ色の陽ざしが射しこむ図書室で、あたしは独り勉強と格闘する。
一番苦手な数学の教科書を開いて暗号のような問題を解こうとするけれど、
さっきから右手に持っているシャーペンが、可笑しなくらいにピクリとも動かない。
…ってか、勉強に全く集中出来ない。わからない。

「はぁ~…ダメだ」

そしてあたしは独りそう呟いて盛大なため息を吐くと、大きな机の上にうなだれた。
そもそも普通のテストで赤点とるくらいだもん、追試なんかで点数があがるわけない。
第一、水野くんから言われた昨日の言葉で未だにショック受けてるっていうのに。

…って、ちょっと待て。
ショック?
いやいやいや…ショックじゃない。衝撃を受けただけ、うん。
あたしはそう思うと、再び教科書に載っている問題と向き合った。

すると、その時…

「?」

ふいにあたしの携帯に、電話がかかってきた。
…水野くんだ。
一瞬、出るかどうか迷ったけど…出ない理由もないから、仕方なくそれに出た。

「…もしもし?」

そしてあたしが電話に出ると、電話の向こうで水野くんが言う。

「真希、今まだ学校にいる?」
「…」

…ふいに耳元で呼ばれた名前に、思わずドキッとしてしまう。
…ってか、何でそんなこと聞くんだ?
そう思いながらも、あたしは右手でシャーペンを回しながら「いるよ」って答えた。
そして、それがどうしたの?って聞こうとしたら、水野くんが言った。

「何処にいんの?今からそっち行く、」
「えっ、何で…!」
「何でも何も、一緒に暮らしてんだから一緒に帰りゃいいじゃん」
「!」
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