親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

文字の大きさ
上 下
40 / 42
第5章「認めたくない」

公ちゃんとの時間。①

しおりを挟む
…………

「真希、」
「…」
「おい、真希!」
「!」

昼休み、いつものように学校の庭でお弁当を食べていると、ぼーっとするあたしに公ちゃんがそう呼びかけた。
あたしがその声にビックリして公ちゃんを見ると、公ちゃんは、

「どした?お前さっきからずっと上の空じゃん」

と、心配そうにあたしを見る。
…公ちゃん…
でもあたしはへらっと笑うと、「何でもないよ」ってごまかした。

「ただ、追試が待ってるから憂鬱なだけ」
「…そう、なん?」

そのあたしの言葉に公ちゃんは首を傾げて、あたしが作ったお弁当をいつものようにおいしそうに食べてくれる。
…そういえば、今頃水野くんも食べてくれてるだろうか。
最近は公ちゃんだけにじゃなくて水野くんにも作ってあげているから、あたしは思わずふとそんなことを考えた。
ちゃんと食べてくれてると…いいな。
そう思うと、思わずまたぼーっとしてしまう。
すると、そんなあたしに公ちゃんが…

「要らないなら俺にくれ!」
「!」

あたしのお弁当に入っている唐揚げを、そう言って奪っていった。

「あ、それあたしのっ…!」
「ぼーっとしてるからだろ、」

公ちゃんはそう言って悪戯な笑みを浮かべると、その唐揚げを頬張る。
ひっどーい!

「あ、もうお弁当作ってやんないからね」
「え、それは困る」
「じゃあその残り1個のから揚げあたしにちょーだい」
「…」

あたしがそう言うと、公ちゃんは少し黙り込んで…

「…しょーがねぇなぁ」

そう呟いて、お弁当の中に入っている唐揚げを箸でつまんだ。
そしてそれをあたしに向けると、キョトン、としているあたしに言う。

「ほら、口開けろ」
「え、いいよ恥ずかしいから!」
「お前がいつもやりたがってることだろ。何を今更、」
「…」

公ちゃんのその言葉に、あたしは恥ずかしいながらも口を開けてそれを待つ。
すると、やがてその唐揚げが公ちゃんによってあたしの口の中にコロン、と転がり込んできた。
普段のあたしだったら、喜ぶのに…何で今は…、

「…ど?」
「我ながらサイコーにウマイ」

全然、嬉しさがないんだろう……。

…………

しばらくお弁当を食べて教室に戻ろうとしたら、そんなあたしを引き留めるようにして公ちゃんが言った。

「真希、」
「…うん?」
「今日俺部活ないから、一緒に帰るぞ」

そう言って、あたしの好きな笑顔でニッコリ笑う。

「…公ちゃんが誘ってくれるの、珍しいね」

あたしが少しびっくりしながらそう言うと、公ちゃんは、

「帰りにゲーセン寄って、ホッケー対決すんべ」

って、今度は悪戯な笑顔で笑った。
…あー、なるほどね。公ちゃん、ホッケー好きだもんね。
あたしはその言葉に「いいよ」って頷きかけたけど、すぐに首を横に振って言った。

「っ…いやいやいや!公ちゃんダメだよ、あたし追試が待ってるもん!さっきもそう言ったじゃん!
公ちゃんは追試ないの!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

Untangl~秘密の場所で逢いましょう~

猫田けだま
恋愛
17歳の夏の終わり。 家庭に居場所がなく、クラスでも浮いていた美緒と透吾は、偶然に使われていない弓道場を〝避難場所〟として共有することになる。 かたくなだった互いの心は、肩を寄せ合うことで少しずつやわらかに形を変えていくが……。 高校生編と社会人編の2部作です。 画像は、にじジャーニーさんで作成しています。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

処理中です...