親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

文字の大きさ
上 下
39 / 42
第4章「怪しくない?」

瀬川真希。

しおりを挟む
あたしがそう考えていると、その間に水野くんが「じゃあな」ってその場を後にしようとする。
だけどあたしはその腕をすぐに掴んで、言った。

「っ…じゃあ、どういう理由があって好きなんて言ったの…!?」

あたしがそう言うと、水野くんはちょっとビックリしたような表情であたしを見る。
しばらく水野くんの次の言葉を待っていたら、水野くんはやがてあたしから視線を外して言った。

「…あぁ、アレは…」
「…」
「あの時、たまたまお前が、昔大好きだった幼なじみに重なって見えて」
「!」
「思わずあんなこと言ったんだよ。ごめんな、困らせて。
だから、今までに真希にしたキスは全部そう。その幼なじみに見えたから」

水野くんはそう言うと、どこか切ない顔をする。
でもそんなこと、あたしには意味がわからない。
大好きだった幼なじみ?
重なって見えた?
……何それ。 

その言葉にちょっとムカついたから、あたしは掴んでいる水野くんの腕を離して、言った。

「…意味わかんないよ」
「ごめん。でも俺にとっては、貴女はどうしてもその子と瓜二つだから」

あたしが口を尖らせて水野くんを見ても、水野くんはそれ以上教える気がないのかまたその場を後にしようとする。
でも、あたしには気になってしまう。
もしかして、その幼なじみって…、
離れて行く背中を見つめながら、あたしは気が付けば心で思うよりも先に言葉にしてしまっていた。

「その幼なじみの名前って、“瀬川真希”?」
「!」

あたしがそれを口にすると、水野くんの階段を下りようとする足の動きがピタリと止まった。

そして…

「完全に見てんな…“教科書”」

そう言って、背中を向けたままそう呟く。
そうかと思えば水野くんがまたあたしの方を向いて、言葉を続けた。

「そうだよ。俺の幼なじみの名前は“瀬川真希”。お前と同姓同名」
「!」
「…だから、瓜二つのお前を目の前にして歯止めが利かなかった。今までは。
でも、それももう言わなかったことにする。俺が間違ってた。1番は歩美だし」
「…」
「だから、真希は安心して“公ちゃん”を好きでいればいいよ」

水野くんはそう言うと、「もう避けたりすんなよ」と言葉を付け加えて今度こそその場を後にする。
でもその瞬間に、凄く複雑な想いを抱えたあたしだけがその場に残る。

突然されたキスも、「好き」っていう言葉も、
全部全部本当はあたしのことを思ってやったわけじゃなかった。
水野くんはいつも、あたしとその幼なじみを重ねて見ていたんだ。
名前が同じで、見た目も似ていたから。

何それ、意味わかんない。
じゃあ今その幼なじみはどうしてるの?
そう疑問に思うと同時に、あたしの中で別の苦しい思いが大きくなっていく。

けどあたしはそれに気づかないフリをして、水野くんに続いてその場を離れた。

「真希、優大と何話してたの?」
「…別に、何でもない。クダラナイ事だった」
「?」

教室に戻るとそう言って出迎えてくれた歩美に、あたしは目を合わせずにそう言った。
いつもと違って、歩美のことが憎く感じるのは…どうしてなんだろうか…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

Untangl~秘密の場所で逢いましょう~

猫田けだま
恋愛
17歳の夏の終わり。 家庭に居場所がなく、クラスでも浮いていた美緒と透吾は、偶然に使われていない弓道場を〝避難場所〟として共有することになる。 かたくなだった互いの心は、肩を寄せ合うことで少しずつやわらかに形を変えていくが……。 高校生編と社会人編の2部作です。 画像は、にじジャーニーさんで作成しています。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...