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第4章「怪しくない?」
瀬川真希。
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あたしがそう考えていると、その間に水野くんが「じゃあな」ってその場を後にしようとする。
だけどあたしはその腕をすぐに掴んで、言った。
「っ…じゃあ、どういう理由があって好きなんて言ったの…!?」
あたしがそう言うと、水野くんはちょっとビックリしたような表情であたしを見る。
しばらく水野くんの次の言葉を待っていたら、水野くんはやがてあたしから視線を外して言った。
「…あぁ、アレは…」
「…」
「あの時、たまたまお前が、昔大好きだった幼なじみに重なって見えて」
「!」
「思わずあんなこと言ったんだよ。ごめんな、困らせて。
だから、今までに真希にしたキスは全部そう。その幼なじみに見えたから」
水野くんはそう言うと、どこか切ない顔をする。
でもそんなこと、あたしには意味がわからない。
大好きだった幼なじみ?
重なって見えた?
……何それ。
その言葉にちょっとムカついたから、あたしは掴んでいる水野くんの腕を離して、言った。
「…意味わかんないよ」
「ごめん。でも俺にとっては、貴女はどうしてもその子と瓜二つだから」
あたしが口を尖らせて水野くんを見ても、水野くんはそれ以上教える気がないのかまたその場を後にしようとする。
でも、あたしには気になってしまう。
もしかして、その幼なじみって…、
離れて行く背中を見つめながら、あたしは気が付けば心で思うよりも先に言葉にしてしまっていた。
「その幼なじみの名前って、“瀬川真希”?」
「!」
あたしがそれを口にすると、水野くんの階段を下りようとする足の動きがピタリと止まった。
そして…
「完全に見てんな…“教科書”」
そう言って、背中を向けたままそう呟く。
そうかと思えば水野くんがまたあたしの方を向いて、言葉を続けた。
「そうだよ。俺の幼なじみの名前は“瀬川真希”。お前と同姓同名」
「!」
「…だから、瓜二つのお前を目の前にして歯止めが利かなかった。今までは。
でも、それももう言わなかったことにする。俺が間違ってた。1番は歩美だし」
「…」
「だから、真希は安心して“公ちゃん”を好きでいればいいよ」
水野くんはそう言うと、「もう避けたりすんなよ」と言葉を付け加えて今度こそその場を後にする。
でもその瞬間に、凄く複雑な想いを抱えたあたしだけがその場に残る。
突然されたキスも、「好き」っていう言葉も、
全部全部本当はあたしのことを思ってやったわけじゃなかった。
水野くんはいつも、あたしとその幼なじみを重ねて見ていたんだ。
名前が同じで、見た目も似ていたから。
何それ、意味わかんない。
じゃあ今その幼なじみはどうしてるの?
そう疑問に思うと同時に、あたしの中で別の苦しい思いが大きくなっていく。
けどあたしはそれに気づかないフリをして、水野くんに続いてその場を離れた。
「真希、優大と何話してたの?」
「…別に、何でもない。クダラナイ事だった」
「?」
教室に戻るとそう言って出迎えてくれた歩美に、あたしは目を合わせずにそう言った。
いつもと違って、歩美のことが憎く感じるのは…どうしてなんだろうか…。
だけどあたしはその腕をすぐに掴んで、言った。
「っ…じゃあ、どういう理由があって好きなんて言ったの…!?」
あたしがそう言うと、水野くんはちょっとビックリしたような表情であたしを見る。
しばらく水野くんの次の言葉を待っていたら、水野くんはやがてあたしから視線を外して言った。
「…あぁ、アレは…」
「…」
「あの時、たまたまお前が、昔大好きだった幼なじみに重なって見えて」
「!」
「思わずあんなこと言ったんだよ。ごめんな、困らせて。
だから、今までに真希にしたキスは全部そう。その幼なじみに見えたから」
水野くんはそう言うと、どこか切ない顔をする。
でもそんなこと、あたしには意味がわからない。
大好きだった幼なじみ?
重なって見えた?
……何それ。
その言葉にちょっとムカついたから、あたしは掴んでいる水野くんの腕を離して、言った。
「…意味わかんないよ」
「ごめん。でも俺にとっては、貴女はどうしてもその子と瓜二つだから」
あたしが口を尖らせて水野くんを見ても、水野くんはそれ以上教える気がないのかまたその場を後にしようとする。
でも、あたしには気になってしまう。
もしかして、その幼なじみって…、
離れて行く背中を見つめながら、あたしは気が付けば心で思うよりも先に言葉にしてしまっていた。
「その幼なじみの名前って、“瀬川真希”?」
「!」
あたしがそれを口にすると、水野くんの階段を下りようとする足の動きがピタリと止まった。
そして…
「完全に見てんな…“教科書”」
そう言って、背中を向けたままそう呟く。
そうかと思えば水野くんがまたあたしの方を向いて、言葉を続けた。
「そうだよ。俺の幼なじみの名前は“瀬川真希”。お前と同姓同名」
「!」
「…だから、瓜二つのお前を目の前にして歯止めが利かなかった。今までは。
でも、それももう言わなかったことにする。俺が間違ってた。1番は歩美だし」
「…」
「だから、真希は安心して“公ちゃん”を好きでいればいいよ」
水野くんはそう言うと、「もう避けたりすんなよ」と言葉を付け加えて今度こそその場を後にする。
でもその瞬間に、凄く複雑な想いを抱えたあたしだけがその場に残る。
突然されたキスも、「好き」っていう言葉も、
全部全部本当はあたしのことを思ってやったわけじゃなかった。
水野くんはいつも、あたしとその幼なじみを重ねて見ていたんだ。
名前が同じで、見た目も似ていたから。
何それ、意味わかんない。
じゃあ今その幼なじみはどうしてるの?
そう疑問に思うと同時に、あたしの中で別の苦しい思いが大きくなっていく。
けどあたしはそれに気づかないフリをして、水野くんに続いてその場を離れた。
「真希、優大と何話してたの?」
「…別に、何でもない。クダラナイ事だった」
「?」
教室に戻るとそう言って出迎えてくれた歩美に、あたしは目を合わせずにそう言った。
いつもと違って、歩美のことが憎く感じるのは…どうしてなんだろうか…。
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