親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第4章「怪しくない?」

あの夜のこと。

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歩美がまたとんでもない事実を口に出しかけたから、あたしはそれを遮ると水野くんを見遣る。
すると水野くんはそんなあたしに少しだけ笑うと、何気なくあたしの手をとって言った。

「こっち来て」
「!」

え、

突然の水野くんの行動にビックリして、あたしは歩美を気にしながらも水野くんについて行く。
少し離れたところで歩美が不満そうにしていたけれど、あたしは気づかないフリをすると、水野くんに問いかけた。

「何処行くの?」

あたしがそう聞くと、水野くんは、

「いいからついて来て」

と、階段を上って行く。
頭の上にあたしが?を浮かべていたら、水野くんは誰もいない踊場までやって来て言った。

「…真希」
「!」

ふいにあたしの名前を真剣な表情で言うから、そんな水野くんに思わずドキッとしてしまう。
慌てて水野くんから視線を外しても、まだ繋がれている手に全神経が集中してドキドキは止まらない。
…ってか、あたしは何でこんなにドキドキしてるの。
水野くんを前に独りそう思っていたら、やがて水野くんが言った。

「あの…この前はごめん。悪かった」
「…え」
「ほら、テスト前…俺の部屋でいろいろ言ったやつ」
「!」

水野くんのその言葉を聞いた瞬間、あたしの脳裏にはまた「もう離さない」とか「好き」等の言葉たちが脳裏を過る。
だけどそれをまともに思い出すと水野くんのことを直視出来なくて、あたしは平気なフリをして言った。

「…べ、別に…気にしてないよ」

でも…

「嘘吐け」
「!」

あたしが嘘を吐いてしまったその瞬間、水野くんのそんな言葉が降ってきた。
その言葉を聞いてあたしがすぐに顔を上げると、水野くんが少しだけ顔をしかめて言う。

「お前、最近俺のこと避けてるじゃんか」
「!」
「それなのに気にしてないとか、お前嘘ヘタすぎなんだよ」

そう言って、あたしに向かって微かに笑う。
その笑顔はどこか切なくて、あたしが目を泳がせていると水野くんが言葉を続けて言った。

「…まぁ、本当に悪かったよ俺も。大丈夫だとは思うけど、もし勘違いさせてたらごめん」
「…え」
「ほら、俺真希のこと“好き”って言ったじゃん。あの言葉は別に特別な意味とか無いから。確かに1番とは言ったけど」
「!!」
「あの時の俺、言葉足らずだったよな。離さないって言ったのも、“誤魔化されないからな”って意味で言いたかっただけだから、もしそういうので俺を避けてるんだったら、心配しなくていいから」

水野くんはそう言うと、もう一度あたしに「ごめんね」って謝る。
でも…一方のあたしは、その水野くんの言葉に胸がズキッと痛んだのを感じた。

…そっか。恋とか、そういう意味じゃないんだ。って、そりゃそうだよね。
水野くんには歩美がいるんだもん。本気であんなこと言うわけない。

でも…じゃあなんであの時わざわざ「好き」なんて言ったの?しかも今度は“1番”なんて。
なんで二回もキスしたの?
頭を撫でてくれたり、抱きしめてきた理由だって、本当のことを知りたい。
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