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第4章「怪しくない?」

テストの結果。

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…………
…………

そしてその日からあたしは、水野くんから言われた言葉が原因で水野くんを避けるようになった。
たまに歩美の付き添いで行っていた生物室にも行かなくなったし、廊下で水野くんにばったり会っても目すら合わせない。
それに何より水野くんがいる家でも、わざと遅く帰ってきたりずっと部屋に閉じこもるようになった。

そして、そんな毎日を続けていたある日。
校内ではテスト期間も過ぎて、テストが全て返ってきた時。
あたしは、目の前の現実に一気に顔を青くした。

「嘘っ…全教科赤点!?」

水野くんから言われた言葉の意味ばかりを考えて勉強が手につかなかったせいで、あたしは地獄を目の当たりにしてしまった。
その最悪なテスト用紙を前にあたしが頭を抱えていると、そこへ歩美がやって来て言う。

「やほー、どうしたの?真希チャン。元気ないねぇ」

そう言って、あたしの頭を撫でる。
そんな歩美に、あたしは拗ねながら言った。

「…いいよね、歩美は。勉強が出来て」
「ん?んー…でも実は、あたしも今回はちょっと自信なくてね、優…」
「え、じゃあ赤点あった!?」
「それはない。あたし、優大にテスト対策してもらったし、そうじゃなくても赤点なんてとらないから」

歩美はそう言うと、あたしに悪戯な笑みを向ける。
でもその瞬間…その何気なく出てきた名前に、何故かあたしの心の奥がずき、と嫌な音を立てた。
だけどあたしは、それに気づかないフリをして口を膨らませる。

あー、最悪だぁー。
歩美はずるい!可愛くてモテる上に勉強もそこそこ出来るとか!

そう思って…

「…あ、あたしも…」
「え?」
「あたしも、水野くんにテスト対策してもらえば良かったな…」

冗談ぽくそう言うと、歩美は「そうだね」って言いながらも得意な笑顔をちょっとひきつらせた。気がした。
…ああ、やっぱり、歩美にあたしから水野くんの話をするのは避けよう。

…―――しかし。

「瀬川さん、」
「!」

その時教室の入口で名前を呼ばれ、振り向くとそこには珍しく水野くんがいた。
あれ。…歩美の前じゃ“真希”って呼ばないんだ、
そんなことを思いながらも、突然の水野くんの登場にあたしはびっくりして逃げ腰になるけれど、水野くんに気がついた歩美が言う。

「あ、優大!」

そう言って嬉しそうに駆け寄ると、水野くんが申し訳なさそうに歩美に言った。

「ごめん。今は瀬川さんに用事が…」
「でも真希、今凹んでてそれどころじゃないみたいよ。なんせテストで全教科赤点とっちゃったから」
「…は」

歩美がそう言うのを聞くと、水野くんはちょっと目を見開いてあたしを見遣る。
その瞬間水野くんとばっちり目が合ったけれど、あたしはそれを慌てて逸らした。
いや、確かにそうだけど…歩美のバカ!
よりによって水野くんにチクることないじゃん!
あたしはそう思うと、テスト用紙を机の中にしまい込んで、二人に近づきながら言った。

「だっ大丈夫だよ~!あたしが赤点なんてとるわけないじゃん!」
「え、でも今」
「そっ、そんなことはどうでもいいから、それより水野くん、あたしに用事って何?」
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