親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

文字の大きさ
上 下
35 / 42
第4章「怪しくない?」

鉢合わせ。

しおりを挟む
独り息をひそめてその場に隠れていると、ようやくそこへ水野くんが入ってくる。
部屋での水野くんの様子は全くわからないけど、そこから小さなため息が聞こえた。
…どうでもいいから、早くこの部屋から出て行ってくんないかな…。
そして、しばらくそのままの状態でいると…

「…?」

水野くんの方から突然、ガタッという音が聞こえてきた。
その音を不思議に思っていると、水野くんが何か思い立ったようにしてこの部屋を後にする。
…あ、よかった、これでやっとここを出られる…。

しかし…

「真希!」
「!」

部屋を後にした水野くんが、突如あたしの名前を呼んだ。
まさか呼ばれるなんて思っていなかったあたしは、すぐにその部屋を後にして水野くんのところに行こうとするけれど…

「!!」

部屋を出た途端、入り口で水野くんと鉢合わせになってしまった。

マズイ!
水野くんと目が合った瞬間、一瞬にして頭の中が真っ白になる。
確実にマズイ状況に顔を青くしていると、水野くんが真剣な顔で言った。

「ねぇ真希。何で俺の部屋にいるの?」

そう言って、不機嫌そうに目を細める。

「え、や、何でって…その、」
「…」
「……何で、かな」

水野くんの問いかけに、あたしはそう言って誤魔化すように笑うけど、でもそれでも水野くんのその表情は変わらない。
そして、そんな水野くんにあたしはいたたまれなくなって…

「あ、へ、部屋間違えちゃったの!ごっごめんね!」

見え透いた嘘を吐いて、逃げるようにその場を後にしようとした。

…───けど。

「嘘吐くなよ」
「!!」

その言葉と同時に、即座に腕を掴まれる。
ビックリしていたら、水野くんがその腕をぐっと引き寄せてきて言葉を続けた。

「見たんだろ?教科書」
「!」
「正直に言えよ」

そう言って、あたしの腕を掴む手に力を入れる。
…痛い。
でもそう言われたらもうこれ以上嘘を吐くわけにいかなくなって、あたしは水野くんの目を見れずに言った。

「…ご、ごめん。数学のノート借りようと思って…そしたらたまたま…」
「…」
「っ…ほんと、ごめんね!」

そう言いながらも、あたしは内心水野くんが怖いし早くこの場から逃げたくてたまらない。
それに、早く腕を離してほしいと思っていたら…

「…っ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

その指

紫月音湖(旧HN/月音)
恋愛
人を愛した少年の話。 ※1ページで終わる物語です※

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

Untangl~秘密の場所で逢いましょう~

猫田けだま
恋愛
17歳の夏の終わり。 家庭に居場所がなく、クラスでも浮いていた美緒と透吾は、偶然に使われていない弓道場を〝避難場所〟として共有することになる。 かたくなだった互いの心は、肩を寄せ合うことで少しずつやわらかに形を変えていくが……。 高校生編と社会人編の2部作です。 画像は、にじジャーニーさんで作成しています。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

不倫するクズ夫の末路 ~日本で許されるあらゆる手段を用いて後悔させる。全力で謝ってくるがもう遅い~

ネコ
恋愛
結婚してもうじき10年というある日、夫に不倫が発覚した。 夫は不倫をあっさり認め、「裁判でも何でも好きにしろよ」と開き直る。 どうやらこの男、分かっていないようだ。 お金を払ったら許されるという浅はかな誤解。 それを正し、後悔させ、絶望させて、破滅させる必要がある。 私は法律・不動産・経営・その他、あらゆる知識を総動員して、夫を破滅に追い込む。 夫が徐々にやつれ、痩せ細り、医者から健康状態を心配されようと関係ない。 これは、一切の慈悲なく延々と夫をぶっ潰しにかかる女の物語。 最初は調子に乗って反撃を試みる夫も、最後には抵抗を諦める。 それでも私は攻撃の手を緩めず、周囲がドン引きしようと関係ない。 現代日本で不倫がどれほどの行為なのか、その身をもって思い知れ!

救助隊との色恋はご自由に。

すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。 ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。 助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・ 香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」 ほたる(消防関係の人だ・・・!) 『消防署員』には苦い思い出がある。 できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。 しまいには・・・ 「ほたるから手を引け・・!」 「あきらめない!」 「俺とヨリを戻してくれ・・!」 「・・・・好きだ。」 「俺のものになれよ。」 みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。 『俺がいるから大丈夫』 そう言ってくれるのは誰? 私はもう・・・重荷になりたくない・・・! ※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。 すずなり。

処理中です...