親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第3章「早速だけど家出がしたい」

気になってんじゃん。

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公ちゃんは容赦なくそう言うと、コンビニに入った。

「けち。…あ!じゃあ、せめて夕飯くらいあたしに作らせてよ」
「え…いいの?」
「いいよ。ってかあたし昨日もコンビニだったからたまには作ったご飯が食べたいんだよね」

あたしがそう言うと、公ちゃんが「じゃあ夕飯は真希に任せる」と言ってくれた。
やった!これで二人っきりの家で新婚気分が味わえるっ!

「でもせっかく来たんだからアイス買うべ、」

そしてそう言って、店内の奥に進むと…

「!」

あたしはその瞬間、そこで“ある人物”を見つけてしまった。
…水野くんだ。
水野くんはまだあたし達の存在に気付いていないけれど、何やら数個のコンビニ弁当をカゴの中に入れている。
何あれ。夜ごはん?…昨日の夜も今朝も昼すらもコンビニだったのに。
マジか。
そう思いながら水野くんを見ていると、隣で公ちゃんが言った。

「真希、アイスどれにする?」
「…」
「…真希?」

でもその声は、あたしには届かない。
…もしかして…ずっとコンビニなのかな…水野くん。
そう思って見つめていたら……
次の瞬間、あたしの視線に気が付いた水野くんとふいに目が合った。

「!」

マズイ!
あたしがそう思って慌てて目を逸らすと、その一部始終を見ていた公ちゃんが言う。

「…行ってくれば?」
「え、」
「水野んとこ、」

公ちゃんはそう言うと、あたしの頭にぽん、と手のひらを遣った。

「…何で。あたし水野くんに襲われたって言っ…」

あたしはそう言ってまた嘘を並べるけど、公ちゃんはそのまま言葉を続ける。

「いや、それは嘘じゃん。顔見りゃわかるよ、俺」
「!」

そう言って悪戯に笑うから、あたしは思わず公ちゃんから目を逸らした。
…わかってはいたけど、やっぱりバレてらぁ。
でも、今朝のキスとかで気まずいのは、確かなのに…

しかし…

「真希」
「!」

独り悶々と考え込んでいたら、その時不意に背後から水野くんに名前を呼ばれた。
あたしがその声にゆっくり後ろを振り向くと、水野くんが公ちゃんに言う。

「…ごめん」
「?」
「コイツ、やっぱ貸せない。連れて帰る」

そう言うと、あたしの手を握った。
……っていうか、“真希”って。初めて名前で呼ばれたな。このタイミングで?何で…。
その言葉にビックリしていたら、公ちゃんが少し笑って言った。

「ん、俺もその方がいいと思う」

…いや。やだ、

「じゃあな、真希。また明日」

行ってほしくない。あたしは公ちゃんがいい。
そう思うのに、声が出ない。
するとその時、あたしの手を握る水野くんの手が、少し強くなった。

「真希。俺と一緒に帰ろ?」
「…っ、」

そう言って、優しい表情であたしの顔を覗き込む。
あたしが頷けずにいたら、公ちゃんはコンビニ弁当を適当に選んでレジに行ってしまった。
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