親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第2章「甘苦い二人暮らし」

水野くんの裏の顔。

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水野くんは特に悪びれた様子もなく、普通に、本当に普通にそんなことを言い出す。
だけどそんなことを言われて、あたしはもちろん「いいね!」なんて頷けるわけがない。
いや、水野くんがあまりにも自然に言うから一瞬思わず頷きかけたけど。

「っ…ば、バカじゃないの!なんでそこまでして節約しなきゃいけないわけ!?」

あたしはそう言って、思わず赤くなっていく顔を誤魔化すようにそいつの肩をバシッと叩く。
…コイツ、あたしが思っているよりもきっとトンデモナイ奴だ。
そう思っていると、水野くんがしれっとした顔で言った。

「何本気にしてんの」
「え、」
「嘘に決まってんじゃん。この前の生物室の時といい、瀬川さんてほんと騙されやすいよね」

水野くんはあたしにそう言うと、「本当は一緒に入りたいの?」なんて顔を覗き込んでくる。
その言葉に内心物凄く恥ずかしくなったあたしは、水野くんからまた顔を背けて言った。

「!!っ…そんなわけないじゃんあほ!水野くんのあほ!大っ嫌い!」
「…」

そう言って、真っ赤な顔を隠すようにお風呂場を後にしようとする。
何あれ、超恥ずかしい!っていうかもうあたし、水野くんがわからない。
ただの無口で無愛想男なのかと思ったら、全然そうじゃないみたいだし。
じゃあ優しいのかと思ったりもしたけど、なんだかそうでもないみたい。
むしろ、意地悪でドSで変態だ。
もう本当に嫌い。………だけど、

「待て」
「!」

お風呂場を出て行こうとするあたしの腕を、水野くんが掴んだ。
あたしはその手にビックリして、振り払いながら言う。

「離してよ、もう帰る!」
「どこに?」
「!」
「シャワーの使い方教えるから、おいで」

そしてそう言って、あたしをまたお風呂場に戻した。
…あぁ、先が思いやられる。

その後はちゃんとシャワーの使い方を教えてもらって、トイレの場所やそれ以外もいろいろ案内してもらった。
一通り教えてもらって早速部屋に行こうとしたら、それを引き留めるようにして水野くんが言う。

「…ねぇ、洗濯とかどうする?」

そう言って、首を傾げる。

「え…センタク?」
「だってほら、今日からは二人で暮らすんだからそういうの決めておいた方がいいじゃん。
例えば、今日は瀬川さんが回す日、とか…じゃあ明日は俺、とかさ」

まぁ、別に二人ぶん一気に回しちゃってもいいんだけどね。
水野くんはそう言うけど、でも、一気に回すのは嫌だ。いろいろ恥ずかしすぎる。
本当は洗濯物くらい何日か溜め込んでしまってもいいんだろうけど、制服のカッターシャツは二枚しか持っていないからそういうわけにいかない。
そんなことを考えていると、あたしの答えが待てなくなったらしい水野くんが言った。

「じゃあ、今日は瀬川さん回していいよ。明日は俺回すから」
「!」
「洗濯機の使い方も、わかんなかったらまたあとで聞いて」
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