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第2章「甘苦い二人暮らし」
恋愛不足。①
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あたしはしばらくそう考えると、やがて水野くんに続いてその場を後にし…
「歩美!」
「!…あ、真希。どこ行って…」
「あたし先帰るね!ばいばい!」
「え、ちょっと真希っ…!」
独り、逃げるように走って生物室を出た。
「大事な話はー!?………行っちゃった、」
もう絶対アイツとは関わらない!
アイツの家に引っ越したりもしない!
あたしは公ちゃんと一緒に暮らすんだから!
そして確かにそう誓って、走っちゃいけない廊下を猛ダッシュした。
………
「公ちゃん!」
「?」
そしてそのままの足で向かった先は、公ちゃんが部活をしている体育館。
あたしがそこに顔を覗かせると、入口付近には公ちゃんの後輩くんたちが立っていた。
「鈴宮せんぱーい!彼女さん来てるっす!」
「アツアツっす!」
あたしがここに顔を覗かせるのは珍しいことじゃないから、あたしの登場に言わなくても後輩くん達が公ちゃんを呼んでくれる。
でも公ちゃんは練習試合中だったらしく、何ともタイミングが悪い。
「そいつ彼女じゃねぇし!」
「え、そうなんすか!いつも一緒にいるからてっきり彼女かと!」
「っつかアツアツって言ったの誰だよ」
公ちゃんはそう言いながらも、飛んでくるボールを綺麗にキャッチする。
はぁぁ…カッコいい!
「真希!」
「?」
「あと5分待って!そしたら行くから!」
「うん!」
そう言って、ボールを奪われそうになるのを避けながら、遠くからボールをゴールに入れる公ちゃん。
こういう姿を見られるなら、1時間でも2時間でも待てちゃう。
………
「ん、」
「…」
それから約10分後。
ようやく1つの練習試合を終えた公ちゃんが、体育館の入口付近まで来てくれた。
公ちゃんはあたしが何か飲み物を用意しているものだと思っていたらしく、あたしに向かって手のひらを差し出すけど、あたしはそれを無視して公ちゃんに抱きつく。
「っ、え、どした?」
「…」
ごめんね。
いつもなら飲み物持ってくるけど、今日は持ってないんだ。
だけどそんなことを言う余裕もなく、公ちゃんに抱きついたまま。
いつもならこうしたら離されるけど、今日はあたしの様子がいつもと違うからなのか、公ちゃんは離そうとしない。
そしたらそのうち同じ学年の男子達が休憩のため体育館から出てきて、この姿を冷やかされた。
「おーおーあっついねぇお二人さん」
「公希ー。練習サボって女とイチャついてんじゃねぇぞー」
「う、うるさいよっ」
せっかく安心していたのに、そいつらのせいで公ちゃんがようやくあたしを自身から離す。
だけど俯いたままのあたしの顔を覗き込むと、言った。
「…何か、あった?」
「歩美!」
「!…あ、真希。どこ行って…」
「あたし先帰るね!ばいばい!」
「え、ちょっと真希っ…!」
独り、逃げるように走って生物室を出た。
「大事な話はー!?………行っちゃった、」
もう絶対アイツとは関わらない!
アイツの家に引っ越したりもしない!
あたしは公ちゃんと一緒に暮らすんだから!
そして確かにそう誓って、走っちゃいけない廊下を猛ダッシュした。
………
「公ちゃん!」
「?」
そしてそのままの足で向かった先は、公ちゃんが部活をしている体育館。
あたしがそこに顔を覗かせると、入口付近には公ちゃんの後輩くんたちが立っていた。
「鈴宮せんぱーい!彼女さん来てるっす!」
「アツアツっす!」
あたしがここに顔を覗かせるのは珍しいことじゃないから、あたしの登場に言わなくても後輩くん達が公ちゃんを呼んでくれる。
でも公ちゃんは練習試合中だったらしく、何ともタイミングが悪い。
「そいつ彼女じゃねぇし!」
「え、そうなんすか!いつも一緒にいるからてっきり彼女かと!」
「っつかアツアツって言ったの誰だよ」
公ちゃんはそう言いながらも、飛んでくるボールを綺麗にキャッチする。
はぁぁ…カッコいい!
「真希!」
「?」
「あと5分待って!そしたら行くから!」
「うん!」
そう言って、ボールを奪われそうになるのを避けながら、遠くからボールをゴールに入れる公ちゃん。
こういう姿を見られるなら、1時間でも2時間でも待てちゃう。
………
「ん、」
「…」
それから約10分後。
ようやく1つの練習試合を終えた公ちゃんが、体育館の入口付近まで来てくれた。
公ちゃんはあたしが何か飲み物を用意しているものだと思っていたらしく、あたしに向かって手のひらを差し出すけど、あたしはそれを無視して公ちゃんに抱きつく。
「っ、え、どした?」
「…」
ごめんね。
いつもなら飲み物持ってくるけど、今日は持ってないんだ。
だけどそんなことを言う余裕もなく、公ちゃんに抱きついたまま。
いつもならこうしたら離されるけど、今日はあたしの様子がいつもと違うからなのか、公ちゃんは離そうとしない。
そしたらそのうち同じ学年の男子達が休憩のため体育館から出てきて、この姿を冷やかされた。
「おーおーあっついねぇお二人さん」
「公希ー。練習サボって女とイチャついてんじゃねぇぞー」
「う、うるさいよっ」
せっかく安心していたのに、そいつらのせいで公ちゃんがようやくあたしを自身から離す。
だけど俯いたままのあたしの顔を覗き込むと、言った。
「…何か、あった?」
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