親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第2章「甘苦い二人暮らし」

キスして?

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「…え、」
「…」

突然、何を言い出すのかと思えば。
あまりにもストレートにそんなことを言うから、あたしは思わず一瞬にして言葉を失った。
…これが、公ちゃんだったらいいのに。
でも普段なかなか愛してくれないからなのか、その水野くんのどストレートな言葉が素直に嬉しく感じてしまった。
感じてしまったその瞬間、水野くんが言葉を続けて言う。

「…3番目?くらいに」
「…」
「……あれ、何かショック受けてる?」
「っ、受けてない!っていうか、そういうこと、彼女以外に言わない方がいいよ」
「…」

3番目なら、わざわざ言わなくていい。
っていうか言う必要あった?
もう嫌だ。ほんと、この男とはなるべく関わりたくない。
絶対、絶対に水野くんの家には引っ越さない!何が何でも!

「…じゃああたし、そろそろ教室戻っ、」

しかし、そう言って水野くんに背を向けた、次の瞬間…

「ん、何っ…!?」
「…」

再び手首を掴まれ、そうかと思えば、それをぐっと引かれて気か付けば…

「ん…っ」

あたしは水野くんとキスをしていた。

「っ…いきなり何するの!」

抵抗しようとしたら、その瞬間に水野くんに解放される。
でも唇にはまだ感触が残ったまま…。
だけど水野くんはそんなあたしに、特に悪びれた様子もなく言った。

「…背中に“キスして”って書いてあった」
「ふざけないで!あんた彼女持ちなの!最っ低!」
「…」

しかしあたしがそう言うと、聞いているのかいないのか、水野くんは一足先に部屋を出て行こうとする。
けど、逃がさない。

「ちょっと待ってよ!あたし、今のファーストキスだったんだから!
だいたいファーストキスは、公ちゃんとするんだって決めてたのにっ…」
「…で?」
「え、」

水野くんはそう聞くと、白衣のポケットに両手を突っ込んであたしの方を見遣る。
そのことに頭上に?を浮かべていたら、水野くんが言葉を続けて言った。

「あくまで“決めてただけ”だろ。悔しかったらその公ちゃんにも今と同じのしてみりゃいいじゃん」
「!」
「ファーストキスは残念。奪ったもん勝ちなんだよ」

そう言って嫌味ったらしく鼻で笑うと、「また楽しませてな」と本当にこの部屋を出て行くそいつ。

「待っ…!」

…しかし、その背中を呼び止めようとしても、時既に遅し。
あたしだけが独り、この部屋に取り残されてしまった。
…いつもの、地味で無愛想な生物部員の水野くんはいったいどこにいったんだろう。
…何か、妙にキスに慣れてたな。意外とそういうの、誰にでもする奴だったりして。

「~っ、」

何であたし、すぐに拒まなかったんだろ。
時間を巻き戻して、キスされる直前に戻りたい。
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