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第2章「甘苦い二人暮らし」

効かないアプローチ。

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……………

昼休み。
いつものように裏庭に行くと、そこには珍しくあたしより先に来たらしい公ちゃんがいた。

「公ちゃんっ、」

あたしが思わず駆け寄ると、公ちゃんはあたしの顔を見るなり言う。

「…早く弁当くれ」

そう言うと、右手の手のひらをあたしに向けた。
そんな公ちゃんに、あたしは作ってきたお弁当を早速渡しながら言う。

「何か今日は来るの早いね。あたしと逢うのがそんなに待ち遠しかった?」

公ちゃんに「お前はバカか」とかなんとか言われる前提であたしがそう言えば、公ちゃんはちょっと黙った後呟くように言った。

「…ちげーよ」
「?」

あれ?なんか、微妙なお返事。
そう思って公ちゃんを見遣ると、公ちゃんが言葉を続けて言う。

「っつかお前さ、昨日電話であれだけ不機嫌になったのに、今はもう機嫌直ってんだ?」
「!」

公ちゃんはあたしにそう言うと、お弁当箱の蓋を開ける。

「うん、もう大丈夫だよ!全然怒ってない、」

あたしはそんな公ちゃんに笑顔でそう言って、水野くんとのことを言おうとした。
……しかし。

「…すっげぇ怒ってんな」
「え?」

お弁当箱の蓋を開けた途端、公ちゃんがその中身を見てそう言った。
その言葉にあたしは不思議に思ったけれど、重要なことを思い出して顔を青くする。
…しまった。すっかり忘れてた。
今朝お弁当を作ってる時はまだ怒っていたから、嫌がらせにお弁当のおかずに公ちゃんの大嫌いなピーマンの肉詰めを入れたんだった。
あたしはそれを思い出すと、慌てて公ちゃんに言った。

「ごっ、ごめんね公ちゃん!
いや実はさ、今朝水野くんが意外と普通に“俺ん家来なよ”って言ってくれたから、思わずその時に機嫌が直っちゃって。
だからピーマンの肉詰め入れてたの、すっかり忘れてた!ほんっとーにごめんっ!」

あたしはそう言うと、パンッ、と手を合わせて公ちゃんに謝る。
そんなあたしに、公ちゃんは深くため息を吐いたけれど…

「……まぁ、いんじゃね?俺も悪かったし、たぶん」

でもピーマンの肉詰めは食わねぇけどな。
公ちゃんはそう言うと、タコさんウインナーを口に含んだ。

「きゃー!やっぱ公ちゃん優しいから好き!」

あたしがそう言って公ちゃんを抱きしめると、公ちゃんは「あんま引っ付くな」とあたしを離す。
…抱きしめるくらい、いいじゃんか。けち。
公ちゃんには、ボディータッチとやらは効かないんだ。
あたしはそう思いながらも、そんな公ちゃんを横目にやっとお弁当を食べ始めた。

…何だろ。
歩美とは、抱きつき方が違うのかな?
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