親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第1章「親友に彼氏ができた」

色気より食い気。

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…………

そして、水野くんを紹介してもらう約束をしたその日の昼休み。
(といっても顔は既に知ってるんだけど)
あたしは幼なじみの鈴宮公希(通称、公ちゃん)と一緒にお弁当を食べに裏庭に来ていた。
公ちゃんとは幼稚園に通っていた頃からの仲で、高校生になった今でも仲が良い。
公ちゃんは、あたしが作って来たお弁当をおいしそうに食べながら、言った。

「ん、美味い!この卵焼きサイコー!」

そう言って、幸せそうな笑顔を浮かべる。

「やっぱ、真希が作ったのって何でも美味いな」

公ちゃんはそう言ってあたしにニッコリ笑顔を浮かべてくれるから、こっちまで幸せな気分になってしまう。
お弁当を作って来るなんて一見まるで恋人っぽいけれど…でもあたし達、別に付き合っているわけじゃない。
というか、むしろ…

「じゃあ、いい加減あたしと付き合ってよ。
あたし公ちゃんと付き合ったら、公ちゃんのためにもっといろんなの作ってあげるよ」
「…、」

あたしだけが、公ちゃんに昔から片思いをしている。
あたしがそう言うと、公ちゃんは一旦箸を止めて言った。

「あのなぁ真希。いつも言ってるだろ、俺は今彼女なんて欲しくないの、」
「でもそれは、あくまで今現在の話でしょ?だったらあたし待つよ!公ちゃんのこと大好きだから!」

そう言ってニッコリ笑ったら、公ちゃんは何も言わずに再び箸を進めた。
…あたしが歩美みたいに可愛かったら、今頃とっくに付き合っていたかな。

あたしが公ちゃんに恋をしたのは、幼稚園に通っていた頃からだった。
当時まだ5才だったあたしが一人で砂遊びをしていると、その時同じクラスの男の子にそれを邪魔されて、あたしが泣いていたら公ちゃんが助けてくれた。
それをキッカケにあたしは公ちゃんに恋をし始めて、一生懸命アプローチしているけれど、今まで振り向いてくれたためしが一度もない。

公ちゃんは今もそうだけど、昔から超マイペースで勉強が大の苦手、おまけに寝るのが大好きで授業中はいつも寝ているような男子高校生。
それに断然色気より食い気な性格だし、特にイケメン!ってわけでもないから、彼女だって今まで一人もいたことがない。
歩美はあたしが公ちゃんのことで相談をするたびに「新しい恋をしなよ」と勧めてくるけど、今は他の人に目を向けたくない。
だって、あたしが困っていると必ず助けてくれるし、何だかんだでこうやってあたしとの時間もちゃんと作ってくれる。
それにバスケ部に所属している公ちゃんは、部活の時になるとマジでカッコイイんだよなぁこれがまた。
そう思いながらニヤニヤと公ちゃんを見つめていたら、その時ふいに目が合って言われた。

「…何だよ、」
「え?」
「顔、ニヤけてんぞ」

公ちゃんはそう言うと、あたしが作ったナポリタンを口に含む。

「…美味しい?」

たまらずにそう聞いたら、公ちゃんはすぐに頷いてくれた。

「すんごい美味い」

しかし……
…そんなあたし達の様子を、“ある人物”が双眼鏡で見ているとは知らずに…。
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