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危険なヒーロー②
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「…さすがに飲みすぎじゃないですか?」
「そんなことないっ」
「そうかなぁ」
飲み会が始まってから、どれくらいの時間が経っただろうか。
気が付けば柳瀬さんは「おかわり」を繰り返していて、だいぶ酔っぱらったように感じていた。
室内のあかりがそんなに明るくないからか、顔が赤いとかはよくわからないけれど、さすがに少し心配になるほどだった。
だって…今のビールで一体何杯目なんだろう。
そしてまた気が付けば時刻は22時を過ぎていて、あと1時間で最終バスが来るような時間帯になっていた。
そろそろ帰んなきゃな…なんてあたしがそう思っていると、だいぶ酔っぱらった柳瀬さんが言う。
「鏡子ちゃん~ちょっとコッチ来て」
「?」
「こっちこっち。もっと近く」
「え、何ですか」
そう言われ、まともに入っていない力で腕を引っ張られる。
そして柳瀬さんはあたしを自身のすぐ隣に座らせると、あたしの頭を優しく抱き寄せて言った。
「俺ね、今日…鏡子ちゃんを誘ったのは、鏡子ちゃんに言いたいことがあったからなの」
「…言いたいこと?って、何ですか?て、てか…近いです」
だけど同時に少しだけ違和感を覚える。
あれ?いっぱい飲んでるはずなのに…柳瀬さんお酒臭くない…。
あたしがそう思って首をかしげていると、柳瀬さんが言葉を続けて言った。
「鏡子ちゃんには俺がいるよ。鏡子ちゃんに何があっても、俺が鏡子ちゃん守るから」
「!」
「だから遠慮とか全然、しないでいいから。鏡子ちゃんが笑ってると俺も嬉しいんだよ」
そこまで言って、頭を優しく抱き寄せたまま、あたしの顔を覗き込む柳瀬さん。
その瞬間物凄く顔が近くなって、目が合ったから…赤くなった顔を隠さなきゃって思ったけど、
それを許さない柳瀬さんが、「逃げないで」って甘く囁いた。
「う…あ、あの、近い、です。柳瀬さん」
「いや?」
「嫌とかじゃ、なくって」
「照れてんの?かわいい、」
「!」
そう言って、抱き寄せたままの手で、優しく頭を撫でられる。
だけどあたしはその状態のまま、どうしても気になって柳瀬さんに言った。
「あの…どうして、ですか?」
「?」
「柳瀬さんは、どうしてそんなにあたしのこと、大事にしてるみたいに、言ってくれるんですか?」
「どうして、って」
「だって、他に可愛いコなんていっぱいいるし、別にあたしじゃなくてもいいはずですよね。
それに、あたしが相手なんて…柳瀬さんにとって何の得もないっていうか」
「…」
あたしは勇気を出してそう言うと、でも柳瀬さんの方を見れなくて、うつ向いたまま。
でも実は本気で遊ばれていたらどうしよう…なんて、そんな不安を過らせていたら。
「…得かどうかなんて、そんなの大事かな?」
「?」
「あなたが時々寂しそうな顔をするたび、俺はあなたを守りたいって思った。ただそれだけなんだよ」
柳瀬さんはそう言うと、かけていた黒縁めがねを外す。
その行動にあたしがふと顔をあげると…
「…!!」
その瞬間、突如優しく唇が重なって、あたしは柳瀬さんにキスされた。
それがキスだとわかるまでに時間はかからなくて、だけど気づいてもあまりの心地よさにあたしも抵抗をしなかった。
…でも。
「鳥のから揚げおっ…!」
「!?…っ、」
次の瞬間、突然ガラ、と個室の引き戸が開いて…
キスしたままのこの光景を、店員さんに見られてしまった。
「っ、し、失礼しました…!」
ヤバい、と思って離れようとしても、柳瀬さんが離してくれなくて、時すでに遅し。
まさかの光景にビックリした店員さんは、再びドアを閉めてその場を後にしてしまう。
「んんっ…」
…柳瀬さんの気持ちをずっと疑っていたけど、でもそのキスで何だか柳瀬さんの気持ちが苦しいくらいに伝わってくるようで、あたしは思わず更に顔を真っ赤にしてしまう。
ようやく離れたときには柳瀬さんの顔なんて見れるはずもなくて、少し乱れた息を整えながら、「何で」と呟くことしかできなかった。
何で柳瀬さん、あたしなんかを…広喜くんにも、あんなキス、いや広喜くんどころか誰にもあんなキスはされたことがなかった。
柳瀬さんは照れたりしないのかな。恥ずかしがるあたしを面白がって顔を覗き込んでくるから、恥ずかしくてしかたない。
「顔真っ赤、」
「だ、だってあんな風にされたらっ…ってか店員さんに見られたじゃないですか!」
「ん、でも気持ちは伝わったでしょ?」
「…、」
…それは…物凄く伝わりましたけど。そう言いかけて、だけどその言葉を飲み込んだ。
だって柳瀬さん、酔っぱらってるからやったに違いないし。
あたしはそう思うと、そういえば、と時間のことを思い出して、言った。
「ってか、柳瀬さん、もう22時過ぎてますよ!」
「…あ、そだね。でも、」
「あたしの最終バスが出るまであと1時間もないし…あ!今日の支払いはあたしがするんで!任せて下さい」
「…」
あたしはそう言うと、帰る支度をする。
でもその向かいで、全然動かない柳瀬さん。
そんな柳瀬さんに「行きますよ」と言おうとしたら、その前に柳瀬さんが言った。
「いやごめん俺ちょっと無理」
「え、」
「歩けない」
******
「ほら、もうちょっとですよ」
「んー…」
あれから、あたしが支払うといったのに酔っぱらった柳瀬さんには通じなくて、結局あたしがまた奢ってもらってしまった。
だけどそこまではいいものの、泥酔状態の柳瀬さんは自力で家に帰れるような状態でもなさそうで、奢ってもらったお礼にあたしが家に送り届けることにした。
家の場所も、部屋の番号もまだ覚えてるし。
あたしが柳瀬さんの腰に腕を回して、柳瀬さんがあたしの肩に腕を回してなんとか歩くこと数十分。
普通に歩けばほんの数分で到着するはずの家にやっと到着して、あたしは柳瀬さんに言った。
「鍵、出してください。ほらもう部屋が目の前ですよ」
「んえ?…どこだっけ、」
そして、スーツのポケットを探った柳瀬さんがやっと家の鍵を探し出して、あたしが代わりに玄関のドアの鍵を開けた。
「ほら、着きましたよ」
「ん、ありがとー」
「…、」
じゃ、あたしは帰ろうかな。
しかし、そう思っていた矢先、あたしが帰ろうとしたら、その目の前で柳瀬さんがそのまま玄関で寝転がってしまう。
「え?あっ…柳瀬さん!」
まだここ玄関ですよ!と。言っても彼は「いーのいーの」とそのまま寝てしまう。
あたしはそんな柳瀬さんを前にこのまま帰るのはやっぱり気が引けて、寝室まで送ることにした。
だって、この前のあたしも、こんな感じだっただろうし。
「柳瀬さん、電気どれですか?暗い…」
「ん、テキトーでいいよ」
「テキトーって、…あ、これかな」
そう言って、暗闇で何とか廊下の電気を探し当てる。
これで少しはマシになった。そう思いながら何気なくスマホの時計を見ると、時刻は最終バス20分前。
そう考える横で、柳瀬さんも自身のスマホで時刻を確認していることに、あたしは気づかない…。
「そんなことないっ」
「そうかなぁ」
飲み会が始まってから、どれくらいの時間が経っただろうか。
気が付けば柳瀬さんは「おかわり」を繰り返していて、だいぶ酔っぱらったように感じていた。
室内のあかりがそんなに明るくないからか、顔が赤いとかはよくわからないけれど、さすがに少し心配になるほどだった。
だって…今のビールで一体何杯目なんだろう。
そしてまた気が付けば時刻は22時を過ぎていて、あと1時間で最終バスが来るような時間帯になっていた。
そろそろ帰んなきゃな…なんてあたしがそう思っていると、だいぶ酔っぱらった柳瀬さんが言う。
「鏡子ちゃん~ちょっとコッチ来て」
「?」
「こっちこっち。もっと近く」
「え、何ですか」
そう言われ、まともに入っていない力で腕を引っ張られる。
そして柳瀬さんはあたしを自身のすぐ隣に座らせると、あたしの頭を優しく抱き寄せて言った。
「俺ね、今日…鏡子ちゃんを誘ったのは、鏡子ちゃんに言いたいことがあったからなの」
「…言いたいこと?って、何ですか?て、てか…近いです」
だけど同時に少しだけ違和感を覚える。
あれ?いっぱい飲んでるはずなのに…柳瀬さんお酒臭くない…。
あたしがそう思って首をかしげていると、柳瀬さんが言葉を続けて言った。
「鏡子ちゃんには俺がいるよ。鏡子ちゃんに何があっても、俺が鏡子ちゃん守るから」
「!」
「だから遠慮とか全然、しないでいいから。鏡子ちゃんが笑ってると俺も嬉しいんだよ」
そこまで言って、頭を優しく抱き寄せたまま、あたしの顔を覗き込む柳瀬さん。
その瞬間物凄く顔が近くなって、目が合ったから…赤くなった顔を隠さなきゃって思ったけど、
それを許さない柳瀬さんが、「逃げないで」って甘く囁いた。
「う…あ、あの、近い、です。柳瀬さん」
「いや?」
「嫌とかじゃ、なくって」
「照れてんの?かわいい、」
「!」
そう言って、抱き寄せたままの手で、優しく頭を撫でられる。
だけどあたしはその状態のまま、どうしても気になって柳瀬さんに言った。
「あの…どうして、ですか?」
「?」
「柳瀬さんは、どうしてそんなにあたしのこと、大事にしてるみたいに、言ってくれるんですか?」
「どうして、って」
「だって、他に可愛いコなんていっぱいいるし、別にあたしじゃなくてもいいはずですよね。
それに、あたしが相手なんて…柳瀬さんにとって何の得もないっていうか」
「…」
あたしは勇気を出してそう言うと、でも柳瀬さんの方を見れなくて、うつ向いたまま。
でも実は本気で遊ばれていたらどうしよう…なんて、そんな不安を過らせていたら。
「…得かどうかなんて、そんなの大事かな?」
「?」
「あなたが時々寂しそうな顔をするたび、俺はあなたを守りたいって思った。ただそれだけなんだよ」
柳瀬さんはそう言うと、かけていた黒縁めがねを外す。
その行動にあたしがふと顔をあげると…
「…!!」
その瞬間、突如優しく唇が重なって、あたしは柳瀬さんにキスされた。
それがキスだとわかるまでに時間はかからなくて、だけど気づいてもあまりの心地よさにあたしも抵抗をしなかった。
…でも。
「鳥のから揚げおっ…!」
「!?…っ、」
次の瞬間、突然ガラ、と個室の引き戸が開いて…
キスしたままのこの光景を、店員さんに見られてしまった。
「っ、し、失礼しました…!」
ヤバい、と思って離れようとしても、柳瀬さんが離してくれなくて、時すでに遅し。
まさかの光景にビックリした店員さんは、再びドアを閉めてその場を後にしてしまう。
「んんっ…」
…柳瀬さんの気持ちをずっと疑っていたけど、でもそのキスで何だか柳瀬さんの気持ちが苦しいくらいに伝わってくるようで、あたしは思わず更に顔を真っ赤にしてしまう。
ようやく離れたときには柳瀬さんの顔なんて見れるはずもなくて、少し乱れた息を整えながら、「何で」と呟くことしかできなかった。
何で柳瀬さん、あたしなんかを…広喜くんにも、あんなキス、いや広喜くんどころか誰にもあんなキスはされたことがなかった。
柳瀬さんは照れたりしないのかな。恥ずかしがるあたしを面白がって顔を覗き込んでくるから、恥ずかしくてしかたない。
「顔真っ赤、」
「だ、だってあんな風にされたらっ…ってか店員さんに見られたじゃないですか!」
「ん、でも気持ちは伝わったでしょ?」
「…、」
…それは…物凄く伝わりましたけど。そう言いかけて、だけどその言葉を飲み込んだ。
だって柳瀬さん、酔っぱらってるからやったに違いないし。
あたしはそう思うと、そういえば、と時間のことを思い出して、言った。
「ってか、柳瀬さん、もう22時過ぎてますよ!」
「…あ、そだね。でも、」
「あたしの最終バスが出るまであと1時間もないし…あ!今日の支払いはあたしがするんで!任せて下さい」
「…」
あたしはそう言うと、帰る支度をする。
でもその向かいで、全然動かない柳瀬さん。
そんな柳瀬さんに「行きますよ」と言おうとしたら、その前に柳瀬さんが言った。
「いやごめん俺ちょっと無理」
「え、」
「歩けない」
******
「ほら、もうちょっとですよ」
「んー…」
あれから、あたしが支払うといったのに酔っぱらった柳瀬さんには通じなくて、結局あたしがまた奢ってもらってしまった。
だけどそこまではいいものの、泥酔状態の柳瀬さんは自力で家に帰れるような状態でもなさそうで、奢ってもらったお礼にあたしが家に送り届けることにした。
家の場所も、部屋の番号もまだ覚えてるし。
あたしが柳瀬さんの腰に腕を回して、柳瀬さんがあたしの肩に腕を回してなんとか歩くこと数十分。
普通に歩けばほんの数分で到着するはずの家にやっと到着して、あたしは柳瀬さんに言った。
「鍵、出してください。ほらもう部屋が目の前ですよ」
「んえ?…どこだっけ、」
そして、スーツのポケットを探った柳瀬さんがやっと家の鍵を探し出して、あたしが代わりに玄関のドアの鍵を開けた。
「ほら、着きましたよ」
「ん、ありがとー」
「…、」
じゃ、あたしは帰ろうかな。
しかし、そう思っていた矢先、あたしが帰ろうとしたら、その目の前で柳瀬さんがそのまま玄関で寝転がってしまう。
「え?あっ…柳瀬さん!」
まだここ玄関ですよ!と。言っても彼は「いーのいーの」とそのまま寝てしまう。
あたしはそんな柳瀬さんを前にこのまま帰るのはやっぱり気が引けて、寝室まで送ることにした。
だって、この前のあたしも、こんな感じだっただろうし。
「柳瀬さん、電気どれですか?暗い…」
「ん、テキトーでいいよ」
「テキトーって、…あ、これかな」
そう言って、暗闇で何とか廊下の電気を探し当てる。
これで少しはマシになった。そう思いながら何気なくスマホの時計を見ると、時刻は最終バス20分前。
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