運命の出会いを経験してみた。

みららぐ

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妖しい計画①

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とある水曜日の夜。
頬の赤みもだいぶ引いてきた頃、あたしは柳瀬さんと2人で居酒屋に来ていた。
この前から約束していたご飯。
あたしは、結局自分が行き馴れている会社付近の居酒屋を選んだ。

「五十嵐さんお酒飲むの?」

ドリンクメニューを見ながらそう聞いてくる柳瀬さんに、あたしは「飲みます」と相槌を打つ。
だって、出会ったばかりのイケメン上司と2人きり、なんて緊張するから…なるべく今日はお酒を入れて紛らわしたい。
それに、変にオシャレなレストランとか選ばなくて正解だったな。
居酒屋なら周りが賑やかだし、それにここ安くて美味しいし、全てにおいて緊張しなくて済むから。
…ただ、柳瀬さんがどう思うのか、わからないけど。

「じゃあ俺とりあえずビールで。五十嵐さんは?」
「あたしはー…カシスオレンジで!」

あたしはそう言うと、先に飲み物だけ頼んじゃおうとテーブルの上に備え付けてある注文ボタンを押す。
そしていつものように店員さんに注文をしたあと、柳瀬さんがおつまみのメニューを開きながら言った。

「…なんか、五十嵐さん馴れてるね」
「えっ」
「ここよく来るんだ?」

そう言って、向かいから真っ直ぐに見つめるから。
なんとなくその視線にドキドキして、あたしはメニューに視線を落として答える。

「あ…ハイ。仕事帰りに、たまに夏木さんやエリナと来てます」
「へぇ。仲良いんだね」
「と、ところで柳瀬さん何食べますか?今日はあたしがご馳走するんで、もう遠慮なくどーぞ!」

あたしはそう言うと、「因みにここお好み焼き美味しいですよ」と思わず口数が多くなる。
緊張しているせいか…ああ、早くカシスオレンジ来ないかな。
あたしがそう思っていると、柳瀬さんが言った。

「五十嵐さんお好み焼き好きなの?」
「凄い好きですっ。明太チーズとか、いつもエリナと分けて食べてて。…あ、でも海鮮ミックスも美味しいですよ!それ夏木さんが好きなやつです、」
「ふーん、じゃあお好み焼き一枚頼んでみようかな」

柳瀬さんはそう言うと、メニューからチラリとあたしに視線を移して言葉を続けた。

「…明太チーズにする?」
「!…しますっ!食べたいですっ」

柳瀬さんの言葉に、あたしは思わずそう言って即答してしまう。
でも、言った直後に気がついた。
…しまった。そもそもこの居酒屋には、この前あたしが柳瀬さんのスーツを台無しにしちゃって、おまけに火傷まで負わせてしまったから、そのお詫びで来てるんだった。
あたしはそう思うと、慌てて訂正するように柳瀬さんに言った。

「…あっ!で、でも、柳瀬さんが食べたいもので大丈夫ですよ!あたしいつも食べてるので!」
「え、そう?でも五十嵐さん明太チーズのお好み焼き好きなんじゃないの?さっき食べたいって言った」
「!…や、でも今日は…」

…この前の、お詫びですから。
あたしが柳瀬さんに向かって呟くようにそう言うと、その言葉を聞いた柳瀬さんがそんなあたしにニコリと笑って言う。

「お詫びなんて、せっかく来てるんだから忘れてよ」
「え、」
「俺はもっと、これを機に五十嵐さんのこと知りたいな」
「!!」

そう言って、凄く優しい顔をするから。
そんな表情を間近で見て、あたしは更にドキドキしてしまう。
…もっと、知りたいって…。
それっていったい、どういう意味?

……え、もしかして、あたし遊ばれてる?
だって柳瀬さんみたいなカッコイイ人が、本気であたしなんか相手にするわけないし。
っていうか、柳瀬さんにとって何の得もない。
あたしがそう思っていると…

「お待たせしましたー!ビールとカシスオレンジです、」
「!」

ほんの少し、甘くなってしまった雰囲気の中に、突然割って入るように店員さんがドリンクを運んできた。
その声に我に返ると、柳瀬さんが「あ、きたきた」と店員さんからビールを受け取る。
その向かいで、あたしもカシスオレンジを受け取って。
「お疲れ」って乾杯したあと、しばらくして料理を注文して、柳瀬さんがふいに自身のスマホに目を遣って言った。

「…あ。ごめん電話かかってきた。ちょっと出てくるね」
「は、ハイ」

………

「もしもし、」

仕事の電話のフリをして、一旦店の外に出る。
だけどもちろん声は聞こえてこない。
俺は店の外からなんとなく見えている五十嵐さんに目を遣ると、五十嵐さんの目を盗んで、スマホをポケットにしまった。
そして代わりに、タバコを取り出す。
あー、コレコレ。
もう何時間我慢したことか。

だけど、箱から取り出したタバコはラスト一本で。
現時点で誰も知らないけど、俺は一見誠実のフリをして、特に五十嵐さんには紳士的に振る舞っている。
…素で近いたらドン引きされそうだし。

「…ふー、」

帰りにコンビニ寄って、タバコを買って帰ろう。
あと、今夜は五十嵐さんには泥酔してもらわなきゃな。
俺はそう思うと、もう一度、店の外からなんとなく見える五十嵐さんに目を向けた。

…やっと、出会えたんだ。
五十嵐さんを、何があっても、何としてでも、絶対に俺のものにしたい。








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