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幸せが大きすぎて怖い件
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京都旅行から帰ってきた翌日。
あたしは健と二人で、カフェGreenに来ていた。
健と付き合いだしたのを、兄貴に報告するために。
…でも、まずは。
「兄貴、これ健と二人で選んだ京都のお土産ね」
「え、ほんまに?ありがとう!」
「抹茶のバームクーヘン。勇斗くんバームクーヘン好きだよね」
そう言って兄貴に差し出したのは、季節限定らしいそのスイーツ。
兄貴はバームクーヘンもそうだけど、抹茶も昔から好きみたいだから、もうこれしかないでしょ!ってことで最終日に買ってきたのだ。
あたし達がそう言って渡すと、兄貴は喜んで受け取ってくれた。
「ほんまにありがとう!…あ、京都はどうやった?ゴールデンウィークやからどこも混んどったやろ?」
「うん。凄い並んだけど、でもわりと欲しいものは買えたしね。美桜へのお土産とかもそうだし」
「まぁ、楽しめたみたいで何よりやな。俺はまだまだ忙しい真っ最中やけど」
兄貴がそう言うと、やがて早速兄貴は他のお客さんに呼ばれてオーダーを頼まれる。
あたし達が旅行から帰ってきても、世の中はまだゴールデンウィークの真っ只中で、今は夕方の時間と言えどいつもよりお客さんがいるのだ。
そして兄貴が席を外したその間、あたしはさりげなく健に目を遣って、静かに合図を出した。
そろそろ健から兄貴に言ってよ、と。
あたし達が付き合いだしたことを。
そんなあたしに、健が「俺かよ」と言いたげな顔をしたけれど、もしかして今みたいな場合はあたしから報告するべきなのかな?
でも、まぁ、健と兄貴は昔から仲良いわけだし。
ということで、兄貴がようやく戻ってきたあと、健が口を開いて言った。
「……あ、あのさ、勇斗くん」
「ん?」
「ちょっと話が、あるんだけど」
「え、どないしたん?いきなり」
兄貴は突然の健の言葉にそう言うと、お客さんからオーダーを受け取ったらしいメモを部下に手渡す。
そんな健の改まった様子に兄貴は少し笑っていて、その間に健が兄貴に言った。
「俺と世奈、付き合うことにした」
「…えっ!?」
「あの、旅行中にいろいろ…あって。世奈から言ってくれて。で、付き合うことにしたから」
「!!」
健はそう言うと、ふいにあたしを見遣って、そんな健にあたしも思わず照れて微笑む。
照れ臭いけど、何だか嬉しいな。
そして兄貴の言葉を待っていたら、兄貴が満面の笑みを浮かべて言った。
「っ…え、そうなん!?ほんま!?ほんまに!?」
「そう。ほんまに」
「ええーっ、おめでとう!二人とも!」
兄貴はそう言うと、本当に嬉しそうに手を叩いてくれる。
予想通りのその反応にあたしも健も内心ホッとしていると、兄貴が「ほな今日はお祝いすんで!俺が奢ったる!」なんて言ってくれるから嬉しいけど更に照れた。
「何や嬉しいなぁほんまに。やって健なんて、世奈に彼氏ができる度にここ来て色んなことボヤいてたんやで」
「は、勇斗くんそんな話はいいから」
「何言うてんねん。けどもうあんなこと言わんでええし良かったな。っつか、健が世奈の相手やったら俺もいろいろ安心出来るわ~」
兄貴はそう言うと、「世奈のことよろしくな」なんて健に笑顔を向ける。
そしたら健が「うん、大事にする」なんて言ってくれるから、あたしとしては幸せすぎて仕方ない。
その後はカフェで夕飯を食べて、やがて健と二人で店を後にした。
しかし…
「あ、健!ちょお、」
「…何?」
「お前、月曜日の放課後時間とれる?…世奈のことで話あんねんけど」
「…え、別にとれるけど、何?世奈の話って」
「まぁ…詳しいことは月曜日に。ほな世奈頼むで!」
健は帰り際に兄貴に引き留められて、何かを言われていた。
あたしにはその会話の内容が聞こえなかったけど、何なんだろう?
その後兄貴と別れると、健は何故か少し不安そうな顔をしていた…。
…………
「じゃあね、健」
「ん、じゃあな」
そしてその後は健にマンションまで送って貰って、ドアの前でバイバイした。
あたしはそのまま健を見送りそうになったけれど、でも少し寂しくなって思わず健を引き留める。
「…ちょっと待って!」
「…?」
あたしが呼び止めると、健は黙ってあたしの方を振り向く。
…部屋に入ったら、どーせ独りになっちゃうし、兄貴は今日は遅番のシフトだから。
あたしは健の服の袖をきゅっと掴むと、健に言った。
「…もうちょっと一緒にいよ?」
「!」
「だって、ほら…部屋、入ってもどーせ独りぼっちだし」
あたしはそう言うと、お願い、と健を見つめる。
そんなあたしの言葉に、健は少しの間あたしを見つめると…
「…いいよ」
「!」
「じゃあ勇斗くんが帰って来るまで一緒にいてやる」
と、あたしの頭を優しく撫でた。
「…っ」
…ああ、どうしよう。
ついこの前まで、甘い関係になんてなりたくなかったはずのそいつに、今は何故かこんなに胸がきゅんきゅんしてしまう。
もうその優しい笑顔が好き。好き!
「健くん大好きぃー」
「ん、俺も好きだよ世奈ちゃん」
「大がついてない!」
大好きって言ったら「大好き」って言葉を返してほしくてあたしがそう言うと、健が今度はあたしの目を見て言ってくれた。
「大好きだよ、世奈」
「!」
ああもう何て幸せなんだろう。
そう思ってあたしが目を瞑ってキスを待つと、やがて健があたしの唇にキスをしてくれた。
「…今日泊まって行けばいいのに」
「それは無理。明日部活だし」
「ええー」
あたしは健と二人で、カフェGreenに来ていた。
健と付き合いだしたのを、兄貴に報告するために。
…でも、まずは。
「兄貴、これ健と二人で選んだ京都のお土産ね」
「え、ほんまに?ありがとう!」
「抹茶のバームクーヘン。勇斗くんバームクーヘン好きだよね」
そう言って兄貴に差し出したのは、季節限定らしいそのスイーツ。
兄貴はバームクーヘンもそうだけど、抹茶も昔から好きみたいだから、もうこれしかないでしょ!ってことで最終日に買ってきたのだ。
あたし達がそう言って渡すと、兄貴は喜んで受け取ってくれた。
「ほんまにありがとう!…あ、京都はどうやった?ゴールデンウィークやからどこも混んどったやろ?」
「うん。凄い並んだけど、でもわりと欲しいものは買えたしね。美桜へのお土産とかもそうだし」
「まぁ、楽しめたみたいで何よりやな。俺はまだまだ忙しい真っ最中やけど」
兄貴がそう言うと、やがて早速兄貴は他のお客さんに呼ばれてオーダーを頼まれる。
あたし達が旅行から帰ってきても、世の中はまだゴールデンウィークの真っ只中で、今は夕方の時間と言えどいつもよりお客さんがいるのだ。
そして兄貴が席を外したその間、あたしはさりげなく健に目を遣って、静かに合図を出した。
そろそろ健から兄貴に言ってよ、と。
あたし達が付き合いだしたことを。
そんなあたしに、健が「俺かよ」と言いたげな顔をしたけれど、もしかして今みたいな場合はあたしから報告するべきなのかな?
でも、まぁ、健と兄貴は昔から仲良いわけだし。
ということで、兄貴がようやく戻ってきたあと、健が口を開いて言った。
「……あ、あのさ、勇斗くん」
「ん?」
「ちょっと話が、あるんだけど」
「え、どないしたん?いきなり」
兄貴は突然の健の言葉にそう言うと、お客さんからオーダーを受け取ったらしいメモを部下に手渡す。
そんな健の改まった様子に兄貴は少し笑っていて、その間に健が兄貴に言った。
「俺と世奈、付き合うことにした」
「…えっ!?」
「あの、旅行中にいろいろ…あって。世奈から言ってくれて。で、付き合うことにしたから」
「!!」
健はそう言うと、ふいにあたしを見遣って、そんな健にあたしも思わず照れて微笑む。
照れ臭いけど、何だか嬉しいな。
そして兄貴の言葉を待っていたら、兄貴が満面の笑みを浮かべて言った。
「っ…え、そうなん!?ほんま!?ほんまに!?」
「そう。ほんまに」
「ええーっ、おめでとう!二人とも!」
兄貴はそう言うと、本当に嬉しそうに手を叩いてくれる。
予想通りのその反応にあたしも健も内心ホッとしていると、兄貴が「ほな今日はお祝いすんで!俺が奢ったる!」なんて言ってくれるから嬉しいけど更に照れた。
「何や嬉しいなぁほんまに。やって健なんて、世奈に彼氏ができる度にここ来て色んなことボヤいてたんやで」
「は、勇斗くんそんな話はいいから」
「何言うてんねん。けどもうあんなこと言わんでええし良かったな。っつか、健が世奈の相手やったら俺もいろいろ安心出来るわ~」
兄貴はそう言うと、「世奈のことよろしくな」なんて健に笑顔を向ける。
そしたら健が「うん、大事にする」なんて言ってくれるから、あたしとしては幸せすぎて仕方ない。
その後はカフェで夕飯を食べて、やがて健と二人で店を後にした。
しかし…
「あ、健!ちょお、」
「…何?」
「お前、月曜日の放課後時間とれる?…世奈のことで話あんねんけど」
「…え、別にとれるけど、何?世奈の話って」
「まぁ…詳しいことは月曜日に。ほな世奈頼むで!」
健は帰り際に兄貴に引き留められて、何かを言われていた。
あたしにはその会話の内容が聞こえなかったけど、何なんだろう?
その後兄貴と別れると、健は何故か少し不安そうな顔をしていた…。
…………
「じゃあね、健」
「ん、じゃあな」
そしてその後は健にマンションまで送って貰って、ドアの前でバイバイした。
あたしはそのまま健を見送りそうになったけれど、でも少し寂しくなって思わず健を引き留める。
「…ちょっと待って!」
「…?」
あたしが呼び止めると、健は黙ってあたしの方を振り向く。
…部屋に入ったら、どーせ独りになっちゃうし、兄貴は今日は遅番のシフトだから。
あたしは健の服の袖をきゅっと掴むと、健に言った。
「…もうちょっと一緒にいよ?」
「!」
「だって、ほら…部屋、入ってもどーせ独りぼっちだし」
あたしはそう言うと、お願い、と健を見つめる。
そんなあたしの言葉に、健は少しの間あたしを見つめると…
「…いいよ」
「!」
「じゃあ勇斗くんが帰って来るまで一緒にいてやる」
と、あたしの頭を優しく撫でた。
「…っ」
…ああ、どうしよう。
ついこの前まで、甘い関係になんてなりたくなかったはずのそいつに、今は何故かこんなに胸がきゅんきゅんしてしまう。
もうその優しい笑顔が好き。好き!
「健くん大好きぃー」
「ん、俺も好きだよ世奈ちゃん」
「大がついてない!」
大好きって言ったら「大好き」って言葉を返してほしくてあたしがそう言うと、健が今度はあたしの目を見て言ってくれた。
「大好きだよ、世奈」
「!」
ああもう何て幸せなんだろう。
そう思ってあたしが目を瞑ってキスを待つと、やがて健があたしの唇にキスをしてくれた。
「…今日泊まって行けばいいのに」
「それは無理。明日部活だし」
「ええー」
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