兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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京都旅行がタノシスギル件−嘘−

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「あたしと付き合ってよ、早月くん」

あたしはそう言うと、目の前の早月くんに抱きついた。
さっき偶然に目撃してしまった、健と玲香ちゃんの二人のラブシーンが頭から離れない。
あたしがそう言うと、早月くんが未だ戸惑ったまま言う。

「…ほ、ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「じゃあ本当に、世奈ちゃんは僕が好きなの?」

早月くんはあたしにそう問いかけると、一旦あたしを離してじっと目を見つめる。
別に早月くんのことは好きだし、しかももう、兄貴のことも知ってしまったみたいだから付き合ってもいい。
…大丈夫。きっと、そのうちに健よりも大好きになれる。っていうか健を忘れたい。
あたしはそう思うと、やがてその問いかけに頷いた。

「……うん。好き」
「!」
「あたし、早月くんが好きだよ」

そう言ってまた、あたしは目の前の早月くんに抱きつく。
その時、今度はそこを通りかかった健がそんなあたし達を見つけてしまっていたことにあたしは気づかなくて。
代わりにそんな健に気がついた早月くんが、健が見ている間にあたしの背中に両腕を回した。

「…嬉しい、世奈ちゃん」
「…」
「じゃあ世奈ちゃんは、やっと僕の彼女になったんだ」
「うん、」
「大事にするね、世奈ちゃん」

早月くんはそう言うと、あたしの頭をぽんぽん、と優しく撫でた…。

…………

その後、レンタルしていた着物を返却して、旅館に着いた頃には18時を過ぎていた。
部屋に戻ったらまた昨日と同じく早月くんと二人でご飯を食べて、ゆったりした時間を二人で過ごす。
…今頃、あの二人ももう帰って来てる頃だよね。
そう思っていたら、早月くんが最上階にある大浴場に行くために部屋を出て行こうとするから、あたしもその間に部屋の露天風呂に入ることにした。

「じゃあまた後でね、世奈ちゃん」
「うん、」

そして、部屋を後にして、大浴場に向かう前に一旦自販機に向かう。
お風呂入ったら喉渇くし、先に何か買っておこう。
そう思いながら自販機の前に着くと、そこには相沢さんがいた。

「…あれ。お前今から風呂なの?」
「うん。相沢さんは?」
「俺は今上がったとこ」
「…ふーん」

僕は相沢さんとそんな会話をしながら、適当にスポーツドリンクを選択する。
そして早速行こうとしたら、その背中を相沢さんに呼び止められて、ふいに問いかけられた。

「なぁ、世奈いま何してる?」
「…今からお風呂じゃないかな。部屋の露天風呂入りたがってたし」
「へぇ」
「……」

相沢さんのそんな問いかけに、僕は行こうとする足をまた一旦止めて、相沢さんの方に振り向く。
…やっぱりコイツには、言っておくべきか。
僕はそう思うと、口を開いて言った。

「…あ。ねぇ一個言っておきたいことがあるんだけど」
「ん?」
「僕と世奈ちゃん、付き合うことになったから」
「!」
「もう彼女には今後一切手を出さないでほしいんだ」

僕はそう言うと、目の前にいるそいつを見つめる。
一方相沢さんは、そんな僕の言葉にわかりやすく動揺した顔。
だけど僕の言葉は止まらない。

「…あと、今夜やっぱ抱こうと思ってるから。世奈ちゃんのこと」
「!!」
「あ。でも安心して。もちろん無理矢理とかじゃないし、世奈ちゃんからの了承もちゃんと貰ってるから。それにちゃんと優しくするし」
「…っ、」
「…じゃあね」

……そんな了承全然貰ってないけど。
僕は相沢さんに容赦なくそう言うと、やがてその場を後にした。

…………

一方、その頃。
あたしは露天風呂に入る準備をして、昨日健が言っていたガラスが真っ白になるボタンを探す。
…あ、これだ!
早速それを押して外に出て服を脱ごうとしたら、その前に入口のドアをノックする音が聞こえてきた。
…あれ。早月くん忘れものでもしたのかな。

「はーい?」

しかしあたしがそう返事をして出ると、ドアの前に立っていたのは…

「…」
「!!…け、健…」

なんと、健だった。
健と目が合った途端、そいつとはもう離れる約束だから、あたしはすぐに追い返そうと口を開く。
…だけど。

「世奈、早月と付き合ってるんだって?」
「!」

健がその前に口にしたのは、今日いきなり決まったその話。
あたしはその話をされるなんて思ってなくて、思わず健から目を逸らした。

「…そ、そうだよ。だって早月くんとは両想いだし」
「っ…そうかもしれないけど、アイツだって勇斗くんとのこと知ったらどーせ離れてくだろ。お前だってそれ不安がって…!」
「も、もう知ってるよ」
「!」
「早月くんは、もう知ってる。兄貴が全部言ったもん。知って、それでも好きでいてくれてるの。だからもうあたしに不安なんてないの」

あたしがそう言うと、健は一瞬驚いたような顔をして…だけどそれはすぐにまた悲しそうな顔に変わる。
そんな健に、あたしはまた口を開いて言った。

「…ごめんね。もうわかってると思うけど、あたしやっぱり健とは付き合えない」
「…っ、」
「あたしは早月くんが大事だから、悪いけどもう諦めて。
…あ、それと、これからはこうやって一緒にいたり、昨日みたいに二人で出掛けるのはもうやめにしよ?お互い完全に離れるべきだと思う。早月くんに悪いから」
「!」

しかし、あたしがそう言うと…健がそんなあたしの言葉に低いトーンで言う。

「…何だよソレ」
「!」
「この前、俺が似たようなこと言ったら世奈はヤダっつってあれだけ寂しがったくせに、そのくせお前は平気でそうやって言うんだ?結局自分が良ければそれでいいんじゃん、お前」
「…っ、」
「…わかった。じゃあ、俺ももう金輪際お前に話しかけないし、会わないし、目も合わさないから」
「!……え…」
「要はそうしたいってことだろ?だったらどうぞ、早月とオシアワセニ」

健はそう言うと、あたしから本当に目を背けて、その場を後にしようとしてしまう。
その言葉に、あたしは慌てて「待って!」と引き留めようとしたけれど、もう遅い。
あたしが健に向かって無意識に伸ばしてしまった手を、健は冷たく振り払って部屋に戻って行ってしまった…。

「っ……待ってよぉ…」

…………

「あ、世奈ちゃん露天風呂どうだった?」
「!」

その後、1時間くらいして早月くんが部屋に戻ってきた。
早月くんのそんな問いかけに、あたしは「気持ち良かったよ」と答える。
…だけど正直、ずっと健とのことが頭から離れなくて全然ゆっくりできなかった。
健が出て行ったあと、あたしはしばらく独りで泣いてたから。
そしてまた思わず泣きそうになるから、あたしは眠いフリをして先に寝室に入ることにした。

「あ、あたし先に寝るね」
「え、早いね。疲れた?」
「…ん、ちょっとだけね。おやすみ」

そう言って寝室に入り、パタン、と襖を閉める。
独りになったら急激に涙がまたポロポロと溢れ出して、あたしは敷き布団の上で声を押し殺して泣いた。
…でもわかってる。そもそも健に対してこの状況を望んだのはあたしなんだ。
…でも、そう思って泣いていると…

「世奈ちゃん、」
「!」

ふいにその時、いきなり襖が開いて、そこから早月くんの声がした。
あたしは早月くんに元々背中を向けていたから泣いているこの状況は気づかれていないけど、そんなあたしに早月くんが近づきながら言う。

「あ…いきなりごめんね。あの、世奈ちゃんさえ、良かったらなんだけど」
「…?」
「僕は世奈ちゃんのことが本気で好きだから…出来れば今日シたいんだけど」
「!!…っ、」
「あ…もちろん無理にとは言わないし、優しくするから。…どうかな?」

早月くんはそう言うと、あたしの身体を背後からぎゅっと抱きしめる。
…シ、たい…?
その言葉はあたしにとって唐突すぎて、思わず言葉を失ってしまう。

シたい、ということは。
つまり、早月くんはあたしの身体を触りたい、と…言っているわけで。
あたしがこうして黙っていろいろ考えている間にも、早月くんは耳元で「だめ?」なんて甘く囁いてくる。
さっき見た、健の冷たい後ろ姿が脳裏を過る。
だけどその直後、未だ泣きながら心の中で首を横に振った。記憶の健を奥深くに押し込んだ。

これでいいんだ、これで。
だって健はあたしと一緒にいたって幸せにはなれない。これ以上振り回さない。
あたしはそう思うと、やがて声を絞り出すように早月くんに言った。

「…い、よ」
「!」
「いいよ、早月くん」







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