兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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京都旅行がタノシスギル件−崩−

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部屋に戻ってからしばらくすると、夕食の時間がやってきた。
料理は地元の野菜を使った天ぷらや、お刺身、お肉が入った小さな鍋まであって、それに他にも二人じゃ食べきれないくらいにたくさんあった。
あたしの向かいに座る早月くんと、「これ何だろうね?」なんて言いながら使っている食材を当てたりして。

ゆったりした時間を過ごしたあとは、お風呂の時間。
あたしは部屋にあった普通のお風呂に入ったあと、早月くんが露天風呂に入りたがっていたから、1時間くらい部屋を出ることにした。
…とりあえず、喉渇いたし自販機にでも行こうかな。

スマホと財布だけを持って、自販機があるロビーに向かう。
確か、自販機がたくさん並んでいる場所があったはず。
そう思って、その場所に行くと…

「あれっ、」
「…おー、世奈」
「健じゃん。健も喉渇いたの?」

自販機の前には偶然にも健がいて。
健も飲み物を買っている最中だった。
あたしがそう問いかけると、健がお茶を買いながら言う。

「今上で風呂入ってきたから」
「あ、最上階にある大浴場?どうだった?」
「広いし人少なくてゆっくり出来たよ。…男湯はな」
「へぇ、いいなぁ。あたしも明日そこ行こうかなっ」

あたしは健の言葉を聞くと、自販機にお金を入れてオレンジジュースを選択する。
そして横でお茶を飲む健に、問いかけた。

「…玲香ちゃんは?玲香ちゃんもお風呂?」
「ん、部屋の風呂入ってる。露天風呂」
「あ、いいなぁ。でも露天風呂入りたいけど隠せないから困るよね」
「隠せな…え、隠せるよ。あのガラスのドア、真っ白になって何にも見えなくなるボタンあるし」
「え、そうなの!?」
「ただ俺らのところは壊れてて。しばらく部屋入れねぇの。っつかお前ら気づかなかったのか」

健はそう言うと、「わかりやすいところにボタンあるのに」なんて笑う。
き、気づかなくて悪かったね。
でもそういうボタンがあるなら朝風呂とか入れるかも。
あたしはそう考えたあと、何気なく健に聞いてみた。

「…あとどれくらい部屋戻れないの?」

あたしがそう聞くと、健がスマホの画面に目を遣って答える。

「俺?…30分とかかな。でも上がったら玲香から連絡くるようになってるし、もしかしたらもうそろそろかも」
「…へぇ」
「どした?」
「…」

…いいなぁ。あたしも早月くんから連絡が来るようにはなってるけど、早月くんはさっき入り始めたばっかだし。
あたしは健の言葉に少し考えたあと、そいつに言った。

「…ね、暇つぶしにそこのコンビニ付き合ってくんない?」
「今から?俺夕飯いっぱいありすぎて全然腹減らねぇんだけど。もしかして世奈腹減ったの?」
「そんなんじゃないけど…何かアイス食べたい」

そう言うと、「せっかくだから付き合ってよ」と。
コンビニまで健を誘う。
だけど、コンビニの周りにも何軒か色んなお店があったし、昼間に行ったけどもう一回行きたいな。暇つぶしに。
あたしが誘うと、健がちょっと考えたあと言った。

「…いいよ」
「ほんと!?ありがと!」
「っつーかお前一人で夜歩かせるわけにいかないだろ。何かあったら危ねぇし」
「んん~浴衣姿が可愛いもんねぇ?」

あたしはそう言うと、自分の浴衣姿を健に見せるように軽くポーズをして見せる。
…夕方、浴衣を選んでいる時には誰かさんに何故か男物の浴衣を勧められたからね。ほんと今思い出しただけでもムカつく。
だから嫌味のつもりで言ったのに、その瞬間健があたしの頭の上に優しく手を遣って、言った。

「…ん、似合ってる。可愛い」
「!」

珍しくそんなことを言って、微笑みまで向けられる。
そんな健に思わず「派手に頭でもぶつけたの?」とか聞きたかったけど、ダメだ今はそんな余裕…ない。
あたしが返す言葉を失っていると、そのうちに健が「行くぞ」とその場を先に後にするから、そんな健に我に返ってあたしは慌てて追いかけた。

…………

コンビニに行ったらあたしだけアイスを買って、それを食べながら近くの公園に行って星を見たり、昼間に入ったお土産屋さんにもう一回入ったりして時間を潰した。
一瞬、「兄貴にお土産を…」とか思ったけれど、明日もあるんだし、兄貴へのお土産は明日明後日でゆっくり選ぼう。
その代わり昼間も気になっていた可愛い和風のデザインの手鏡を自分用に買って、やがてお土産屋さんを後にした。

「そろそろ戻る?健、玲香ちゃんから連絡きた?」
「ん、とっくの前にきてるよ」
「え、嘘!ごめんね、長々と付き合わせちゃって」

あたしはそう言いながら、自分のスマホの画面を開いて、早月くんからの連絡がないか見てみる。
…ん、あれ、早月くんはまだみたいだな。
そりゃそうか。
まだそんなに…経ってるわけじゃないし。
早月くんだってせっかくだからゆっくりしたいよね。
あたしがそう思っていたら、今度は健が聞いてきた。

「早月は?風呂上がったって?」
「んー…まだみたい」
「じゃあまだ付き合うよ。どこ行く?」

健は部屋に戻りたいだろうに、そう言って旅館とは反対方向にゆっくり歩く。
そして、「付き合うよ」という言葉に…あたしはふいに、この前のカフェでの“兄貴との会話”を思い出した。

「…、」

『で、世奈はほんまはどっちなん?』
『…世奈は、俺のこと考えへんかったらほんまはどっちやの、』

『………兄貴、』
『ん?』
『あたし、やっぱり…早月くんが、好き』……

…………そんな会話をふいに思い出して、あたしはふと歩く足を止める。
そんなあたしの横で、野良猫を見つけてはしゃがみ込む健。
あたしはそんな健に、視線を移して…

『まぁ…告られた世奈が辛いのはようわかるけど、告った方も苦しいねん。とくに今』

…今、健もきっと、苦しい思いをしてる。
あたしがなかなかはっきり言わないから。
…もういい加減言わないと。
これ以上は待たせられない。
あたしは拳をきゅっと握ると、やがて意を決して健と同じくしゃがみ込んだ。

きっと、今だ。
明日からはきっと、玲香ちゃんがまた健にべったりになるから。

「……健」
「んー?」
「あの…話が、あるんだけど」
「…?」

あたしがそう言うと、健が不思議そうにあたしの方を見遣る。
…ああ、こういう立場になったことって全くないから、変な感じだな。
あたしはそう思うと、ゆっくりと口を開いて言った。

「あ…あたしね、やっぱり早月くんと…」
「……え」

…………

そして一方、その頃。
露天風呂から上がった僕は、スマホの画面に映るいつかの世奈ちゃんと向き合う。
その画像は、水族館デートの時のもの。
髪だけが濡れたままだしフェイスタオルをただ頭の上に掛けながら、僕はその画面の世奈ちゃんに向かって呟いた。

「……世奈ちゃん。話が、あるんだけど」

変だよな。
はあんなに簡単に言えたのに。
コレは、何回でも練習しなきゃ、世奈ちゃんにしっかり言える気がしないなんて。

「僕、やっぱり世奈ちゃんとは付き合えない」

ごめんね。
あれだけ自信、あったのに。

「僕の告白は、無かったことにしてほしい」

この旅行で、最後にするから。






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