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京都旅行がタノシスギル件−心−
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荷物を置いて再び外に出ると、あたし達は旅館の周辺をのんびり散策した。
玲香ちゃんは相変わらず健にべったりで、そんな二人の後ろをあたしは早月くんと二人で並んで歩く。
「ね、健くんこの辺で確か着物着させてくれるとこあるんだって!明日健くん着てみてよ!」
「え、俺?俺はいいよ。玲香着てみれば?」
「うーん…でも、あたしが着ても似合うかな?」
「そりゃ何でも似合うだろ」
「ほんと!?」
そんな前の二人の会話を聞きながら、あたしは誤魔化すように周りの景色に目を遣って。
…あ、せっかくだからデジカメで撮っておこうかな?
なんて考えていた時、早月くんも前の二人の会話を聞いていたようで、ふとあたしに言った。
「ね、世奈ちゃんも着てみなよ、着物。せっかくなんだし」
「え。着物?あ、あたしも?」
「うん。世奈ちゃんの着物姿見てみたいな。お願い、」
早月くんはそう言うと、少し恥ずかしがるあたしの顔を覗き込む。
…でも、着物かぁ。ちょっと照れくさいな。
浴衣なら何度か着たことあるんだけどな。
そう思いながらも、でもせっかくだからと頷こうとした時、それを遮るように健が早月くんに言った。
「あ、世奈は着物とかダメだから」
「え、何で」
「!」
「世奈は7歳の時の七五三でソフトクリーム食ってたらそれ派手に溢して、そん時着てた着物ベッタベタに汚したっていう苦い思い出があるんだよ」
健は躊躇いなくそんな昔話を早月くんにすると、「な?」とあたしに相槌を求める。
…せっかく忘れていたのに。
っていうか今ここでそんな話する!?
あたしはそう思うと、口を膨らませてジロ、と健に目を遣った。
「…何でそんな昔話いちいち覚えてるかな」
「覚えてるだろ。あん時の世奈、“もう着物なんか着ない!”とか言って泣いてたし。
おかしくね?普通そこは、“ソフトクリーム食べない!”だろ」
健はそう言うと、その時のことを思い出してはおかしそうに笑うから。
なんだか恥ずかしくなってきてしまうあたしに、それでも早月くんが「可愛いじゃん、世奈ちゃん」と言ってくれる。
…言ってくれるけど、早月くんも顔が笑ってるよね。
あたしはそう思いながらも、健に言った。
「…ちゃんと明日着るもん、着物」
「え、そうなの?じゃあくれぐれもソフトクリームは食うなよ」
「…~っ、意地悪!」
あたしは相変わらずの健にそう言うと、そいつの肩をばしん、と叩く。
一方、あたしに肩を叩かれた健に「大丈夫?」と心配そうな顔を向ける玲香ちゃん。
そんな奴心配しなくていいよ。
だけど健の言葉にちょっと不機嫌になるあたしに、一方の早月くんは「楽しみにしてるね」と優しく笑った。
…健もこういう顔が出来たらいいのに。
…………
そして、その夜。
外が薄暗くなってきて旅館に戻ると、部屋に戻る途中であたし達はとあるサービスに気がついた。
「…あ、ねぇ浴衣無料で貸し出ししてるって」
旅館に到着した昼間は気づかなかったけれど、どうやらこの旅館は色とりどりの浴衣を自由に貸し出ししていて、これを着て館内を移動出来るらしい。
早月くんの言葉にやっとそれに気がつくと、あたし達はせっかくだから浴衣を借りることにした。
「え、可愛い!ねぇ健くん!これ!このピンクとかどうかな。あたし似合うっ!?」
「うん、いんじゃね?あ、でもこっちも可愛いよ」
…そうやって玲香ちゃんのを選ぶ健を横目に、あたしも自分のを選んでみる。
オレンジの浴衣を自分にあてて、早月くんに「どうかな?」と問いかけると、早月くんが笑顔で言った。
「うん、可愛い。でもやっぱり女の子はピンクじゃない?淡い色とか可愛いよ。世奈ちゃんに似合いそう」
早月くんはそう言うと、いかにも女の子!という感じの可愛い浴衣をあたしにあてる。
…確かに可愛いけど、普段自分ではあんまり選ばない色だから、なんだか恥ずかしいな。
だけど早月くんがそう言うならと素直にそれを選ぼうとしたら、その時健が話に割って入ってきて、言った。
「違う、それダメ。世奈はコレな」
「!」
そう言って、健に半ば無理矢理持たされたのは、なんと男用の紺色の浴衣。
もちろんお世辞にも全然可愛いとは言えないその浴衣を何故か選ばれて、あたしは思わずその浴衣を健に押し返して言った。
「っ、何これ男用じゃん!」
そう言ってそいつを軽く睨みつけると、全く反省の色が見えない健が言う。
「世奈こっちの方が似合うし。っつかお前はピンクって感じじゃないだろ」
「酷い!あんたも早月くんみたいにもっとあたしのこと女の子扱い出来ないわけ!?玲香ちゃんには可愛いーの選んであげたくせに!」
「そりゃあそうだろ。っつか黙ってこれ着とけよマジで」
そして健は冗談を言ってる様子ではなく、本気でそう言うと、本当にその男用の浴衣をあたしに渡す。
って、何でよ!浴衣くらい自由に選ばせてよね!
するとまた健と喧嘩しそうになるあたしを宥めるように、早月くんが「まぁまぁ」と別の浴衣もあたしに見せてきた。
「世奈ちゃん、そんな奴は放っといて。ほら、どれにする?どれも可愛いから世奈ちゃんに似合うよ」
「~っ、」
だけど早月くんが健の言葉を無視してそう言ってくれるから、あたしは健から受け取ってしまった浴衣を元の場所に戻す。
戻したらそのうちに玲香ちゃんもやってきて、珍しくあたしの浴衣を一緒に選んでくれた。
…けどこの女のことだから何か下心がありそうだな。まぁいいか。
それでも浴衣が色とりどりすぎてやっぱり悩んでしまうあたしから早月くんは静かに離れると、さりげなく健に歩み寄った。
歩み寄った瞬間、あたしに聞こえないような小さな声で健に言った。
「…せっかく世奈ちゃんに可愛いのチョイスしたのに邪魔しないでくんない?」
「うるせぇ。っつか世奈の浴衣選ぶお前の目がヤラシすぎんだよ」
「心外だな。似合うと思って選んだのに。…あーあ。世奈ちゃんあのピンクの浴衣着てくんないかな」
「残念。ピンクは世奈が選ぶ色じゃないんで」
そしてやがてあたしが赤色の浴衣を選ぶと、健が早月くんに「ほらな」と勝ち誇るように笑った。
「…あ、赤でも可愛いから!」
「そりゃそうだ。世奈は何着ても可愛いからな」
「じゃあ何でさっき世奈ちゃんに男物の浴衣なんか勧めたの」
「当然だろ。“早月が世奈を襲わないため”」
「!」
二人が後ろでそんな会話をしているとも知らないあたしは、今度は玲香ちゃんと一緒に帯も選ぶ。
これも色とりどりで迷っちゃうな。
どの色にしようかな。
そう思いながらまた悩むあたしの後ろで、早月くんが健に言った。
「……でも、世奈ちゃんさえ良ければだけど」
「…?」
「そういう夜も、アリなのかなぁなんて…正直期待はしてるよ」
「!!…は、」
「僕だって男だし、2泊とも黙って我慢なんて……ねぇ?」
早月くんはそう言うと、驚いて目を丸くする健に向かって不敵な笑みを浮かべた…。
玲香ちゃんは相変わらず健にべったりで、そんな二人の後ろをあたしは早月くんと二人で並んで歩く。
「ね、健くんこの辺で確か着物着させてくれるとこあるんだって!明日健くん着てみてよ!」
「え、俺?俺はいいよ。玲香着てみれば?」
「うーん…でも、あたしが着ても似合うかな?」
「そりゃ何でも似合うだろ」
「ほんと!?」
そんな前の二人の会話を聞きながら、あたしは誤魔化すように周りの景色に目を遣って。
…あ、せっかくだからデジカメで撮っておこうかな?
なんて考えていた時、早月くんも前の二人の会話を聞いていたようで、ふとあたしに言った。
「ね、世奈ちゃんも着てみなよ、着物。せっかくなんだし」
「え。着物?あ、あたしも?」
「うん。世奈ちゃんの着物姿見てみたいな。お願い、」
早月くんはそう言うと、少し恥ずかしがるあたしの顔を覗き込む。
…でも、着物かぁ。ちょっと照れくさいな。
浴衣なら何度か着たことあるんだけどな。
そう思いながらも、でもせっかくだからと頷こうとした時、それを遮るように健が早月くんに言った。
「あ、世奈は着物とかダメだから」
「え、何で」
「!」
「世奈は7歳の時の七五三でソフトクリーム食ってたらそれ派手に溢して、そん時着てた着物ベッタベタに汚したっていう苦い思い出があるんだよ」
健は躊躇いなくそんな昔話を早月くんにすると、「な?」とあたしに相槌を求める。
…せっかく忘れていたのに。
っていうか今ここでそんな話する!?
あたしはそう思うと、口を膨らませてジロ、と健に目を遣った。
「…何でそんな昔話いちいち覚えてるかな」
「覚えてるだろ。あん時の世奈、“もう着物なんか着ない!”とか言って泣いてたし。
おかしくね?普通そこは、“ソフトクリーム食べない!”だろ」
健はそう言うと、その時のことを思い出してはおかしそうに笑うから。
なんだか恥ずかしくなってきてしまうあたしに、それでも早月くんが「可愛いじゃん、世奈ちゃん」と言ってくれる。
…言ってくれるけど、早月くんも顔が笑ってるよね。
あたしはそう思いながらも、健に言った。
「…ちゃんと明日着るもん、着物」
「え、そうなの?じゃあくれぐれもソフトクリームは食うなよ」
「…~っ、意地悪!」
あたしは相変わらずの健にそう言うと、そいつの肩をばしん、と叩く。
一方、あたしに肩を叩かれた健に「大丈夫?」と心配そうな顔を向ける玲香ちゃん。
そんな奴心配しなくていいよ。
だけど健の言葉にちょっと不機嫌になるあたしに、一方の早月くんは「楽しみにしてるね」と優しく笑った。
…健もこういう顔が出来たらいいのに。
…………
そして、その夜。
外が薄暗くなってきて旅館に戻ると、部屋に戻る途中であたし達はとあるサービスに気がついた。
「…あ、ねぇ浴衣無料で貸し出ししてるって」
旅館に到着した昼間は気づかなかったけれど、どうやらこの旅館は色とりどりの浴衣を自由に貸し出ししていて、これを着て館内を移動出来るらしい。
早月くんの言葉にやっとそれに気がつくと、あたし達はせっかくだから浴衣を借りることにした。
「え、可愛い!ねぇ健くん!これ!このピンクとかどうかな。あたし似合うっ!?」
「うん、いんじゃね?あ、でもこっちも可愛いよ」
…そうやって玲香ちゃんのを選ぶ健を横目に、あたしも自分のを選んでみる。
オレンジの浴衣を自分にあてて、早月くんに「どうかな?」と問いかけると、早月くんが笑顔で言った。
「うん、可愛い。でもやっぱり女の子はピンクじゃない?淡い色とか可愛いよ。世奈ちゃんに似合いそう」
早月くんはそう言うと、いかにも女の子!という感じの可愛い浴衣をあたしにあてる。
…確かに可愛いけど、普段自分ではあんまり選ばない色だから、なんだか恥ずかしいな。
だけど早月くんがそう言うならと素直にそれを選ぼうとしたら、その時健が話に割って入ってきて、言った。
「違う、それダメ。世奈はコレな」
「!」
そう言って、健に半ば無理矢理持たされたのは、なんと男用の紺色の浴衣。
もちろんお世辞にも全然可愛いとは言えないその浴衣を何故か選ばれて、あたしは思わずその浴衣を健に押し返して言った。
「っ、何これ男用じゃん!」
そう言ってそいつを軽く睨みつけると、全く反省の色が見えない健が言う。
「世奈こっちの方が似合うし。っつかお前はピンクって感じじゃないだろ」
「酷い!あんたも早月くんみたいにもっとあたしのこと女の子扱い出来ないわけ!?玲香ちゃんには可愛いーの選んであげたくせに!」
「そりゃあそうだろ。っつか黙ってこれ着とけよマジで」
そして健は冗談を言ってる様子ではなく、本気でそう言うと、本当にその男用の浴衣をあたしに渡す。
って、何でよ!浴衣くらい自由に選ばせてよね!
するとまた健と喧嘩しそうになるあたしを宥めるように、早月くんが「まぁまぁ」と別の浴衣もあたしに見せてきた。
「世奈ちゃん、そんな奴は放っといて。ほら、どれにする?どれも可愛いから世奈ちゃんに似合うよ」
「~っ、」
だけど早月くんが健の言葉を無視してそう言ってくれるから、あたしは健から受け取ってしまった浴衣を元の場所に戻す。
戻したらそのうちに玲香ちゃんもやってきて、珍しくあたしの浴衣を一緒に選んでくれた。
…けどこの女のことだから何か下心がありそうだな。まぁいいか。
それでも浴衣が色とりどりすぎてやっぱり悩んでしまうあたしから早月くんは静かに離れると、さりげなく健に歩み寄った。
歩み寄った瞬間、あたしに聞こえないような小さな声で健に言った。
「…せっかく世奈ちゃんに可愛いのチョイスしたのに邪魔しないでくんない?」
「うるせぇ。っつか世奈の浴衣選ぶお前の目がヤラシすぎんだよ」
「心外だな。似合うと思って選んだのに。…あーあ。世奈ちゃんあのピンクの浴衣着てくんないかな」
「残念。ピンクは世奈が選ぶ色じゃないんで」
そしてやがてあたしが赤色の浴衣を選ぶと、健が早月くんに「ほらな」と勝ち誇るように笑った。
「…あ、赤でも可愛いから!」
「そりゃそうだ。世奈は何着ても可愛いからな」
「じゃあ何でさっき世奈ちゃんに男物の浴衣なんか勧めたの」
「当然だろ。“早月が世奈を襲わないため”」
「!」
二人が後ろでそんな会話をしているとも知らないあたしは、今度は玲香ちゃんと一緒に帯も選ぶ。
これも色とりどりで迷っちゃうな。
どの色にしようかな。
そう思いながらまた悩むあたしの後ろで、早月くんが健に言った。
「……でも、世奈ちゃんさえ良ければだけど」
「…?」
「そういう夜も、アリなのかなぁなんて…正直期待はしてるよ」
「!!…は、」
「僕だって男だし、2泊とも黙って我慢なんて……ねぇ?」
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