兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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兄貴にプレゼントを貰った件①

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「もうちょっとでゴールデンウィークだね」

早月くん家を出たあとの、いつものカフェ。
あたしはスマホのカレンダーを見ながら、ふと目の前の兄貴にそう言った。
今年のゴールデンウィークは、何の予定もないから。
「ほんまやな」と返事をする兄貴に、あたしはおねだりをするように言ってみる。

「ねーえー、美桜はゴールデンウィーク、家族で海外に行くんだって。しかもハワイ!」
「…、」
「あたしもどっか行きたいなー。国内でいいからさ。兄貴連れてってよー」

あたしはそう言うと、目の前で書き物をしている兄貴を見上げる。
…だけど兄貴は目線をあたしに移すと、言った。

「あんな、世奈。お兄ちゃんはゴールデンウィークが一番忙しいねん」
「…その台詞去年も聞いた」
「せやから、旅行とかそういうのには一緒に行かれへんな~」
「…」

兄貴はそう言うと、全く悪気の無さそうな笑顔をあたしに向ける。
…ケチ。
まぁわかってたけどさ。実際、兄貴は毎日忙しいわけだし。
だけど兄貴はポケットから白い封筒を取り出すと、それをあたしに差し出して言った。

「ん。その代わり、コレやるやん」
「?…何これ」
「まぁ、開けて見てみ」
「…、」

あたしは兄貴にそう言われると、黙ってその封筒を開けてみる。
すると、中に入っていたのはチケットが2枚。
見てみるとそれは、4人分の旅行券だった。

「!?…っうそ、何これ!」

そしてそれを見るなりビックリして思わず椅子から立ち上がるあたしに、兄貴が言う。

「ビックリやろ?京都の旅行券!ほら、俺も出来れば世奈をいろんなとこに旅行とか連れてってやりたいねんけどさ、なかなか時間とれへんやん?
せやから、とりあえずソレで友達と旅行、行っといで。な?」
「!」

兄貴はそう言うと、「俺めっちゃええ兄貴やろ?」なんて得意気な笑みを浮かべる。
そして一方のあたしも、ついさっきカフェに来たばかりの時まではあんなに凹んでたのに。
そんな兄貴に、あたしは勢いよく何度も頷いて言った。

「っ…うん、めっちゃええ兄貴!ありがと!」
「いやええねんって。まぁ最初はさ、ペア1枚で買ってんけど、男と二人だけで行かれたら俺としては心配やからさ。もしその相手が健やっても」
「え、大丈夫なのに~」
「せやから念のため、4名分ってことで」

まぁもう一枚はほんまは貰いもんなんやけどな。
兄貴はそう言うけれど、ゴールデンウィークにどこかに出かけたかったあたしは、突然のサプライズに思わず笑顔が止まらない。
っていうか本当に、ついさっきまで早月くんとの会話を思い出してはため息を吐いてた自分が嘘みたいだ。

え、どうしようどうしよう誰誘おうかなっ?
とりあえず、健呼んだら色んな意味で安心でしょ!
それから早月くんにも声かけてみて、それから…
…あ、でも…美桜は、家族とハワイだし、うーん…

…………

「え、京都の旅行券?勇斗くんが?」
「うん!健もしかして部活?でもそんなの休んで行こうよー。だってせっかくのゴールデンウィークだし!」

その翌朝。
あたしは早速、生徒玄関で登校してきたばかりの健に声をかけてみた。
だいたい健が登校してくる時間を狙って、待ち伏せまでして。
するとその旅行券を見ながら、健が言う。

「勇斗くんは行かないの?」
「兄貴はほら、ゴールデンウィーク忙しいから」
「ふーん。まぁ毎年確かに混むけど、あのカフェ」

勇斗くんってだいたいいつも忙しいよね。
でもそんな健の言葉は置いておいて、あたしは健に聞いてみた。

「で、どうするの?行くでしょっ?」
「いや何か強制入ってね?」
「…え、行かないの?」
「……行く」
「だよね!」

良かった、一瞬行かないのかと思って焦ったじゃん!
しかしあたしがそう思ってほっと胸を撫で下ろすと、そんなあたしにふと健が言った。

「っつかさ、お前昨日のことはもう平気なの?」
「…うん?昨日って?」

昨日…何かあったっけ?
そう思って首を傾げるあたしに、健が言葉を続ける。

「“どーせあたしの胸は小さいですよ!”とか言って怒ってたやつ」
「!」

あ、忘れてた!
あたしは健の言葉を聞くと、一瞬にして昨日の昼間の出来事を思い出した。

…昨日、玲香ちゃんが自分の胸の大きさを自慢するから、じゃあ健としては本当はどっちなの?って疑問に思ったあたしは早速健に聞きに行ったんだっけ。
そしたら…

『ね、健は胸が大きい子と小さい子、どっちが好き!?』
『そりゃあ大きい方がいいに決まってんだろ』

…なんて、言い出すから。
その言葉にあたしがちょっとショックを受けると、それに気がついた健がフォローするようにあたしに言ったんだ。
…言ったんだけど。

『…あっ、や、でも!世奈は特別だよ!』
『…特別?』
『ほら、世奈は胸は言っちゃ何だけどその…小さめじゃん?けど俺はそんなの気にしないから!あくまで理想!』
『!!』
『だからそんな気にすんなって!な?』
『~っ、どーせあたしの胸は小さいですよ!』

…あの時はまた健と喧嘩になったな、確か。全然フォローになってなくて。
あたしはそれを思い出すと、ジロ、と健に目を遣る。

旅行券のこととか早月くんのことですっかり忘れてた。
あたしは自分で自分のこと貧乳だとか思ってなかったけど、周りからはそう見られてたんだ…。
だったら早月くんにだってそう思われてる可能性あるな。
っていうか、そんなことよりも。

「…貧乳で悪かったね」
「やっぱまだ怒ってんの。っつかそんなこと言ってないだろ」
「言ったじゃん。小さめだって」
「あれはー…まぁごめんって。っつか俺ん中の世奈の記憶って、小学校低学年のときに一緒に風呂入った時が最後だからそこで止まってんの」
「っ、いっ一緒にお風呂入ったことは忘れてよ!」

あたしは健の思わぬ言葉に恥ずかしさを覚えてそう言うと、思わずそいつの肩をバシッと叩く。
しかし、そんなやりとりをしていると…

「あっ、健くん!」
「!」

…そこへ、玲香ちゃんが登校してきた。
やばっ。
あたしは彼女の突然の登場に、持っていた旅行券を咄嗟に隠す。
…玲香ちゃんに見つかるわけにはいかない。
しかし、そう思っていると…健が口を開いて言った。

「…あ、世奈。玲香も旅行連れてけば?」
「えぇっ!?」






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