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甘いキスが怖すぎる件
しおりを挟むその後、早月くんはあたしの腕を掴んだまま廊下を走ると、やがて何故か体育館に到着した。
誰もいない、静かな体育館であたしが息をきらしていると、まだ体力が余裕そうな早月くんが言う。
「はーっ、すっごいドキドキした!」
「!」
「…あ、てか世奈ちゃん大丈夫!?平気だった!?」
「!…」
早月くんはそう問いかけると、息を整えているあたしの顔を心配そうに覗き込む。
その瞬間、あまりにも至近距離で目が合うから、あたしはふいにさっきのキスのことを思い出してすぐに目を逸らしてしまう。
だけど、逸らしたら余計に怪しくなって。
そんなあたしに早月くんが言った。
「…あれ、何その反応。なんか可愛いんだけど」
「!」
「もしかして…まだちょっとドキドキしてくれてる?」
「…っ」
早月くんはそう言うと、「こっち向いてよ」とあたしの顔をわざと覗き込もうとする。
でも今は絶対顔が赤いから、そんな簡単に目を合わせるわけにはいかない。
あたしはそう思うと、不自然ながらも早月くんから顔を背け続けた。
…あんな凄いキス…いや、あたしだってしたことないわけじゃない。
ああいうキスも元カレ達に何度かされたことはあるけどっ…
でも、今回はあんなに生徒がいっぱいいる人前で、だ。
もう恥ずかしいったらありゃしない。
あたしはそう思うと、やがて呟くように早月くんに言った。
「…もう最悪」
「…?」
「あんな…キス、人前でするなんて…。今日はもう教室に行けないじゃん」
「え、気にしないで堂々と入ればいいのに。僕は気にならないよ」
「っ、む、無理だよ気にしないなんて!」
あたしは早月くんの言葉にそう言うと、やっと無意識に早月くんの方を振り向く。
すると、その時にまたバチッと合った視線。
そんな早月くんにあたしがまた慌てて目を逸らそうとしたら、その瞬間に頭に早月くんの優しい手が降ってきて、頭を撫でられながら言われた。
「…ごめんね」
「!」
「でも、世奈ちゃんのあんな写真見たら、正直イラついちゃって。過去に惑わされないとか言っちゃったけど、本当はそんなの嘘。
…世奈ちゃんのココは、僕だけのものがいい」
「…っ、」
そう言うと、早月くんは。
あたしの唇に手を伸ばして、それを優しく指でなぞる。
そんな早月くんの甘すぎる言動に、あたしはわかりやすく顔を真っ赤にして反応してしまう。
…早月くんが、本当に愛おしそうに、あたしの唇を見つめるから。
もしかして…もしかして、また…。
「…あ、あの…早月くん…」
「ん?」
「教室、戻んなきゃ…SHR始まっちゃう…」
「…今日は戻れないんでしょ?」
「…あ、」
「じゃあいいじゃん。今日は二人でサボって、さっきの続きしよ?」
早月くんはそう言うと、優しく微笑んで、あたしの腰に腕を回してそれを引き寄せる。
…さっきよりもっと密着して距離が近い。
そう思っていたら、
「…好き。好きだよ世奈ちゃん」
「!」
「早く僕のものになってよ」
そう言われて、早月くんの手があたしの頬に優しく添えられる。
そうかと思えば、ゆっくりと顔が近づいてきて…。
あ…ここじゃあまた誰かに見られちゃう、のに…。
………だけど。
「……何で?」
「?」
あたしはそのキスを遮ると、目の前の早月くんに言った。
「何で、何も聞かないの?」
「…聞かない、って?」
「さっき、女子達が早月くんに言ってたあたしのこと。あたし、今まで本当に彼氏が20人くらいいたんだよ?
それに、誰にでもヤラせてあげるっていう噂もそう。
早月くん、本当は気になってるんでしょ?
なのに何で何も聞いてこないの?」
「!」
あたしが早月くんにそう言うと、一方の早月くんは少し困惑するようにあたしから目を逸らして離れる。
…だって、いくら噂だからって、あれだけたくさんの写真を見せられたら、誰だって引くはず。
だから女子達の言う通り、あたしは早月くんにドン引きされるって思ってた。
それなのに…あたしの言葉に、やがて早月くんが言った。
「…確かに、気にはなってた。だけどそれは今だけの話じゃない。ちょっと前から噂で聞いてて、だけど敢えて世奈ちゃん本人には聞かなかった」
「なんで…?」
「そりゃあ、僕だってこれでも色んな女の子を見てきてるからね。例えば世奈ちゃんが僕に笑顔を向けてくれている時、それが偽物か本物かくらいは、僕にだってわかる」
「!」
「世奈ちゃんはいつも純粋に、僕の前で泣いたり笑ったり、怒ったり恥ずかしがったりしてくれてたから、僕はそれを信じてた。
世奈ちゃんは、こんな僕にもちゃんと真剣に向き合ってくれてる。だから多分、誰にでもヤラせてくれるっていう噂も、きっと嘘。世奈ちゃんはそんなことそもそも出来ない、と思う」
早月くんはそこまで言うと、少しびっくりしているあたしにまた目を遣って、言った。
「世奈ちゃんが思ってるより、僕はちゃんと世奈ちゃんのこと見てるよ」
「!」
「本当に色んな男と遊んでるんだったら、きっと世奈ちゃんは今頃こんなに真剣には僕のこと見てくれてないと思う。
彼氏が20人っていうのも…まぁ人にはそれぞれちゃんと理由があるのも知ってるからね。
それはそこまで気になってない。何ならその数、もう僕で止めてあげるよ」
早月くんはそう言うと、また顔を赤くしたあたしに歩みよってきて、目の前で立ち止まる。
…信じて、いいのかな…あたしはこのまま、早月くんのこと…。
でも、早月くんだって今までの元カレ達と、きっとおんなじ。
おんなじことをあたしに言うと思う。
…だけど、早月くんがまたあたしに優しくキスをするから。
あたしはそれを拒むことなく、簡単に受け止めた。
…大好きだから、一緒にいたいけど。
「…いい加減僕と付き合ってよ」
「…ん、でも…」
「だって何回キスしても、世奈ちゃん嫌がんないじゃん」
それでも早月くんのことが「大事」な気持ちの方が勝って、あたしはこの日は頷けなかった。
そして、その一方で…
「なぁんだ~。何か張り合いがないなぁ、世奈ちゃん、」
そんなあたし達の姿を、ある一人の美少女が見つめていたことも、あたしは知る由もない…。
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