兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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お見舞いが危なすぎる件④

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えらく素直な相沢さんと別れて、僕は早速マンションの中に入る。
何だか素直にスッキリしない…ちょっとモヤモヤした心で、エレベーターが来るのを待って。
…確か、6階って言ってたな。
そう思いながら、やっぱり…とマンションの入口に目を遣ってみる。

…そこにはまだ、相沢さんの姿が。
僕がエレベーターに乗るまで見送るつもりなのか。
そもそもどうして一緒に行かないんだろう。
風邪がうつるって、それが本当の理由なのかな。

僕はそう思いながらも、やがてエレベーターに乗り込んで、6階のボタンを押す。
…昼間はあんなに僕のこと疑ってたくせに。
そう考えていたら、やがてエレベーターが6階に到着して、僕はそこから降りた。
ちょっとドキドキしながら通路を歩くと、やがて相沢さんが言っていた“6012号室”に到着する。

「…ここだ」

僕は静かに深呼吸をすると、やがてそのインターホンに指を伸ばした…。

…………

「…何や、ホンマに仮病やんけ」
「だから今朝からそう言ってるでしょ」

一方、その頃部屋の中では。
兄貴が体温計を見ながら、一言そう言った。
その言葉にあたしが布団に潜り込みながらそう言うと、また兄貴が言う。

「せやかてな、昨日の夜あんな全身びしょ濡れで帰ってきとったら誰やって疑うわ」
「…」
「で、遊んどったら水槽ん中に落ちたって…健もそう言うとったけどな、俺はまだ疑ってんで」

そう言うと、やっぱり兄貴に対して嘘というものがつけないのか…チラ、と心配そうな目を向けられる。
そんな兄貴に、あたしが再度「大丈夫だってば」と一言そう言うと…

「…!」

その時。
ふいに玄関で、インターホンが鳴った。
その音に、静かに反応するあたしの側で、兄貴が「あ、お客さんや」と立ち上がって玄関に行こうとする。
だけどあたしは一瞬、物凄く嫌な予感がして。

「っ…ちょっと待って兄貴!」
「ん?」

なんとかその腕を、引き留めた。

「あ、あたしが出るから!」
「や、せやけどやなぁ…」
「風邪なんてほんとは引いてないんだし、これくらいはするよ。兄貴はゆっくりしてて」

あたしはそう言うと「わかった」と渋々頷く兄貴の横を通り過ぎて、ちょっとドキドキしながら玄関に向かう。
そしてドアスコープを覗いてみると…

「…?」

そこには何故か、誰もいなくて。
…あれ?
あたしはそのことに首を傾げると、今度は静かにドアを開けてみる。

「…健?」

多分、健、なんだよね?
いや、本当に多分なんだけど。
そう思いながら、そいつの名前を口にしてみても…そこには誰もいない。
しかし、その代わりに…

「…!」

不意に気がついた、ドアノブにかかっているその存在。
そこにはコンビニの袋がかけられてあって、中を見てみると…プリンとヨーグルト、冷えピタやレトルトのおかゆが入っている。

っ…これ…!

そしてそれと一緒に小さなメモ用紙が一枚入っていて、そこにはシャーペンでメッセージが書かれてあった。

『世奈ちゃんへ
昨日は本当にごめんね。
これ食べて、早く良くなって! 早月』

「…!!」

早月くんっ…!
あたしはさっきの音の正体が早月くんだということに気がつくと、急いで周りを見渡して、本当に早月くんがいないか再度確認する。
だけどやっぱりここにはもういないようで、あたしはパジャマのままでいるにも関わらず、袋を持ったままエレベーターに繋がる通路を走った。

…だけど、エレベーターの場所に到着すると…

「っ…早月くんっ…!」

あたしがエレベーターを見るなり、そのドアは閉まった直後で。
多分だけど、早月くんには間に合わなかったらしい…。
それでも、6階のこの場所から、しばらくしたらその姿が見えるのではと思い、そこから下を見下ろして、早月くんが現れるのを待ってみる。

…健が、部屋の場所だけ早月くんに教えたのかな。
それでもお見舞いに行けないことだけは告げたんだと思う。
普段のあたしなら、本当は冷や冷やモノなんだけど…。
そう思いながら待っていると、しばらくして早月くんがマンションから出てくるのが見えた。
その姿を見つけると、あたしは迷いなく下にいる早月くんに声をかける。

「早月くんっ…!」

あたしがそう呼ぶと、早月くんが少し反応して…辺りを見渡す。
だけどすぐに上にいるあたしの方に気がついて、早月くんが少し驚きながらも、いつもの口調であたしに言った。

「え、世奈ちゃん…!大丈夫なの!?っていうかどうしたの!」

風邪悪化しちゃうよ!
早月くんは、あたしを心配してそう言ってくれる。
だけど本当は風邪なんて引いていないあたしは、それは隠してとにかく伝えたかったことだけを早月くんに言った。
手に持っているそのコンビニ袋を、早月くんに見せながら。

「ありがと!」
「!」
「ありがとう、早月くん!」

そう言って、早月くんに大きく手を振る。
そんなあたしに早月くんも笑顔になって、あたしに向かって両腕を振ってくれた。

「風邪治ったら、またデートしようね!」

……しかし、そんなあたし達の姿を。

「…面白くない」
「ね、壊れちゃえばいいのにね」

昨日と同じ女子達が、見ているとは知らずに。

…………

もう一日休んだ方がいい。
そう言う兄貴を上手く交わして、あたしは翌日はいつも通りに登校した。
昨日は女子達に学校で会うのが怖くて行かなかったけれど、今日はそんなことよりも……。
そう思ってようやく生徒玄関に到着すると、そんなあたしに美桜が気付いて、言った。

「っ、世奈!」
「あ。美桜おは、」
「どうして今日学校来たの!」
「…え」

美桜はあたしの言葉を遮ってそう言うと、何故かいつもとは違って切羽詰まった様子であたしを見つめる。
どうして、って…?
そんな美桜にあたしが首を傾げていると、その時玄関の中で何故か集団で集まっていたたくさんの生徒達が、あたしの方を振り向いた。

「…え、世奈って…」
「もしかして、この写真の?」
「うわ、マジ本人じゃん!」
「これ超ヤバくない?」

「…?」

皆んなは口々に小さめの声でそう言いながら、あたしと玄関の大きな掲示板を見るから。
そんな様子に嫌な予感を覚えたあたしは、「見ない方がいい!」と言う美桜の横を通り過ぎて、その掲示板の目の前に立った。

…立った、その時だった。

「!?…っ、」

その瞬間、目に飛び込んできたのは。
明らかに誰かの手によって掲示板に乱雑に貼られた、たくさんの大きな写真達。

あたしと今までの元カレ達が写っている、“幸せな瞬間とき”の写真だった。








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