兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

文字の大きさ
上 下
22 / 58

お見舞いが危なすぎる件④

しおりを挟む
えらく素直な相沢さんと別れて、僕は早速マンションの中に入る。
何だか素直にスッキリしない…ちょっとモヤモヤした心で、エレベーターが来るのを待って。
…確か、6階って言ってたな。
そう思いながら、やっぱり…とマンションの入口に目を遣ってみる。

…そこにはまだ、相沢さんの姿が。
僕がエレベーターに乗るまで見送るつもりなのか。
そもそもどうして一緒に行かないんだろう。
風邪がうつるって、それが本当の理由なのかな。

僕はそう思いながらも、やがてエレベーターに乗り込んで、6階のボタンを押す。
…昼間はあんなに僕のこと疑ってたくせに。
そう考えていたら、やがてエレベーターが6階に到着して、僕はそこから降りた。
ちょっとドキドキしながら通路を歩くと、やがて相沢さんが言っていた“6012号室”に到着する。

「…ここだ」

僕は静かに深呼吸をすると、やがてそのインターホンに指を伸ばした…。

…………

「…何や、ホンマに仮病やんけ」
「だから今朝からそう言ってるでしょ」

一方、その頃部屋の中では。
兄貴が体温計を見ながら、一言そう言った。
その言葉にあたしが布団に潜り込みながらそう言うと、また兄貴が言う。

「せやかてな、昨日の夜あんな全身びしょ濡れで帰ってきとったら誰やって疑うわ」
「…」
「で、遊んどったら水槽ん中に落ちたって…健もそう言うとったけどな、俺はまだ疑ってんで」

そう言うと、やっぱり兄貴に対して嘘というものがつけないのか…チラ、と心配そうな目を向けられる。
そんな兄貴に、あたしが再度「大丈夫だってば」と一言そう言うと…

「…!」

その時。
ふいに玄関で、インターホンが鳴った。
その音に、静かに反応するあたしの側で、兄貴が「あ、お客さんや」と立ち上がって玄関に行こうとする。
だけどあたしは一瞬、物凄く嫌な予感がして。

「っ…ちょっと待って兄貴!」
「ん?」

なんとかその腕を、引き留めた。

「あ、あたしが出るから!」
「や、せやけどやなぁ…」
「風邪なんてほんとは引いてないんだし、これくらいはするよ。兄貴はゆっくりしてて」

あたしはそう言うと「わかった」と渋々頷く兄貴の横を通り過ぎて、ちょっとドキドキしながら玄関に向かう。
そしてドアスコープを覗いてみると…

「…?」

そこには何故か、誰もいなくて。
…あれ?
あたしはそのことに首を傾げると、今度は静かにドアを開けてみる。

「…健?」

多分、健、なんだよね?
いや、本当に多分なんだけど。
そう思いながら、そいつの名前を口にしてみても…そこには誰もいない。
しかし、その代わりに…

「…!」

不意に気がついた、ドアノブにかかっているその存在。
そこにはコンビニの袋がかけられてあって、中を見てみると…プリンとヨーグルト、冷えピタやレトルトのおかゆが入っている。

っ…これ…!

そしてそれと一緒に小さなメモ用紙が一枚入っていて、そこにはシャーペンでメッセージが書かれてあった。

『世奈ちゃんへ
昨日は本当にごめんね。
これ食べて、早く良くなって! 早月』

「…!!」

早月くんっ…!
あたしはさっきの音の正体が早月くんだということに気がつくと、急いで周りを見渡して、本当に早月くんがいないか再度確認する。
だけどやっぱりここにはもういないようで、あたしはパジャマのままでいるにも関わらず、袋を持ったままエレベーターに繋がる通路を走った。

…だけど、エレベーターの場所に到着すると…

「っ…早月くんっ…!」

あたしがエレベーターを見るなり、そのドアは閉まった直後で。
多分だけど、早月くんには間に合わなかったらしい…。
それでも、6階のこの場所から、しばらくしたらその姿が見えるのではと思い、そこから下を見下ろして、早月くんが現れるのを待ってみる。

…健が、部屋の場所だけ早月くんに教えたのかな。
それでもお見舞いに行けないことだけは告げたんだと思う。
普段のあたしなら、本当は冷や冷やモノなんだけど…。
そう思いながら待っていると、しばらくして早月くんがマンションから出てくるのが見えた。
その姿を見つけると、あたしは迷いなく下にいる早月くんに声をかける。

「早月くんっ…!」

あたしがそう呼ぶと、早月くんが少し反応して…辺りを見渡す。
だけどすぐに上にいるあたしの方に気がついて、早月くんが少し驚きながらも、いつもの口調であたしに言った。

「え、世奈ちゃん…!大丈夫なの!?っていうかどうしたの!」

風邪悪化しちゃうよ!
早月くんは、あたしを心配してそう言ってくれる。
だけど本当は風邪なんて引いていないあたしは、それは隠してとにかく伝えたかったことだけを早月くんに言った。
手に持っているそのコンビニ袋を、早月くんに見せながら。

「ありがと!」
「!」
「ありがとう、早月くん!」

そう言って、早月くんに大きく手を振る。
そんなあたしに早月くんも笑顔になって、あたしに向かって両腕を振ってくれた。

「風邪治ったら、またデートしようね!」

……しかし、そんなあたし達の姿を。

「…面白くない」
「ね、壊れちゃえばいいのにね」

昨日と同じ女子達が、見ているとは知らずに。

…………

もう一日休んだ方がいい。
そう言う兄貴を上手く交わして、あたしは翌日はいつも通りに登校した。
昨日は女子達に学校で会うのが怖くて行かなかったけれど、今日はそんなことよりも……。
そう思ってようやく生徒玄関に到着すると、そんなあたしに美桜が気付いて、言った。

「っ、世奈!」
「あ。美桜おは、」
「どうして今日学校来たの!」
「…え」

美桜はあたしの言葉を遮ってそう言うと、何故かいつもとは違って切羽詰まった様子であたしを見つめる。
どうして、って…?
そんな美桜にあたしが首を傾げていると、その時玄関の中で何故か集団で集まっていたたくさんの生徒達が、あたしの方を振り向いた。

「…え、世奈って…」
「もしかして、この写真の?」
「うわ、マジ本人じゃん!」
「これ超ヤバくない?」

「…?」

皆んなは口々に小さめの声でそう言いながら、あたしと玄関の大きな掲示板を見るから。
そんな様子に嫌な予感を覚えたあたしは、「見ない方がいい!」と言う美桜の横を通り過ぎて、その掲示板の目の前に立った。

…立った、その時だった。

「!?…っ、」

その瞬間、目に飛び込んできたのは。
明らかに誰かの手によって掲示板に乱雑に貼られた、たくさんの大きな写真達。

あたしと今までの元カレ達が写っている、“幸せな瞬間とき”の写真だった。








しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-が完結しました!(2024.5.30)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...