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お見舞いが危なすぎる件②
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たくさんの女子達を追い払って、ようやく早月と二人になった。
学校を出てから世奈のマンションまで、そいつはずっと上機嫌で鼻歌を歌っている。
…何ならこのまま一旦勇斗くんがいるカフェにでも連れてってやろうか。
俺は一瞬そんなことを思いついたけれど、もちろん俺の欲だけで勝手に動くわけにはいかない。
黙って俺がそんなことを思っていると、そのうちに早月が言った。
「世奈ちゃんて、家どの辺なの」
「…ここから歩いて15分くらいのところにあるマンション」
「へぇ、マンション住みなんだ。ってことは相沢さんはお隣さんとか?」
「や、俺は違う。俺は普通に一軒家だから」
「あ、そうなんだ。意外」
…意外か?
まぁ幼なじみだったら、そういう風にも考えるのか。
確かに家が隣同士ってのも憧れるけど。
俺はそう思いつつ、だけどやがてふいに昨日のびしょ濡れの世奈を何気なく思い出すと、早月に言った。
「…お前さ、世奈のことこれからどうするつもりなの」
「どうするって?あ、出来れば今すぐにでも彼女にしたくはある」
「…」
その早月の言葉に内心カチンときながらも、俺はそれをなんとか抑えて言葉を続けた。
「違くて。昨日、世奈がびしょ濡れとか…あんな目にあったじゃん。それやったのって、お前のことが好きな女子達の仕業だろ」
「…まぁそうだね」
「で、お前はそれ知ってこれからどう世奈のこと守んの。たぶんそいつらまた似たようなこと世奈にするじゃん」
「…」
「っつか、今日既に何か手打った?」
俺がそう聞きくと、早月は少しの間黙り込んで、何かを考える。
…正直、世奈は昨日女子達にあんな酷いことをされたばっかだから、俺としてはもしかしたら今日は仮病で…とかも疑っていたりする。
世奈は昔からそういうところがあったから。
クラスの誰かに嫌なことをされたから、今日は学校に行きたくないって。
するとやがて早月が、口を開いて言った。
「…言ったよ、今日。昨日の世奈ちゃんのこと、本人達に教室で問い詰めた」
「あ、なんだ。ちゃんと言ってんじゃん。したらそいつら何て?」
「“やってない”って、堂々と泣かれた」
「…は」
「“あたしらがそんなことするわけない”、“そんなに疑うんなら証拠見せてよ”ってはぐらかされたあとに…まぁ証拠なんて、持ってなかったから。
そしたら、“翔太くんがそんなこと言う人だなんて思わなかった”って。わんわん泣かれて、担任に見つかり、僕は職員室行き」
「…あー、」
早月はそう言うと、「勘弁してくれよもー」と両手で頭を抱える。
…まぁ確かに、世奈にあそこまでやる奴らだもんな。
そんな簡単に認めて反省する奴らじゃないか。
でも俺がそう思っていると、また早月が言う。
「っ、でも!世奈ちゃんのことは僕が絶対守るから!」
「!」
「それがもし火に油を注ぐことになっても、世奈ちゃんの無事だけは阻止する!何としてでも!」
それに、相沢さんには絶対に負けたくないしね。
早月はそう言うと、「だから余計な心配はしないでよ」と俺にそう言った。
…悔しいけど、世奈のことをマジで守りきってくれるなら、俺としてはそれでいい。
俺は早月のそんな言葉に、「わかった」とだけ返事をする。
「…あー、世奈ちゃん今頃どうしてるかな」
「…」
……あ、そういえば今のうちに、世奈にラインくらいしておこう。
今からお見舞いに行くこと、全然言ってなかったし。
俺は早月の言葉にふいにそう思うと、制服のポケットからスマホを取り出して、ラインの画面を開く。
するとそんな俺の隣で、ふいに何かを見つけたらしい早月が、ふとその場に立ち止まって俺に言った。
「……あ。相沢さん」
「?…なに」
「世奈ちゃん家行く前に、ちょっとここ寄ってかない?」
「…?」
…そう言って、早月が立ち止まったのは。
カフェ『Green』の前。
「!!」
…勇斗くんがいるカフェだ。
俺が少しびっくりして目を見開くと、早月は「ちょっとくらい平気でしょ」と悪気なくそう言った。
学校を出てから世奈のマンションまで、そいつはずっと上機嫌で鼻歌を歌っている。
…何ならこのまま一旦勇斗くんがいるカフェにでも連れてってやろうか。
俺は一瞬そんなことを思いついたけれど、もちろん俺の欲だけで勝手に動くわけにはいかない。
黙って俺がそんなことを思っていると、そのうちに早月が言った。
「世奈ちゃんて、家どの辺なの」
「…ここから歩いて15分くらいのところにあるマンション」
「へぇ、マンション住みなんだ。ってことは相沢さんはお隣さんとか?」
「や、俺は違う。俺は普通に一軒家だから」
「あ、そうなんだ。意外」
…意外か?
まぁ幼なじみだったら、そういう風にも考えるのか。
確かに家が隣同士ってのも憧れるけど。
俺はそう思いつつ、だけどやがてふいに昨日のびしょ濡れの世奈を何気なく思い出すと、早月に言った。
「…お前さ、世奈のことこれからどうするつもりなの」
「どうするって?あ、出来れば今すぐにでも彼女にしたくはある」
「…」
その早月の言葉に内心カチンときながらも、俺はそれをなんとか抑えて言葉を続けた。
「違くて。昨日、世奈がびしょ濡れとか…あんな目にあったじゃん。それやったのって、お前のことが好きな女子達の仕業だろ」
「…まぁそうだね」
「で、お前はそれ知ってこれからどう世奈のこと守んの。たぶんそいつらまた似たようなこと世奈にするじゃん」
「…」
「っつか、今日既に何か手打った?」
俺がそう聞きくと、早月は少しの間黙り込んで、何かを考える。
…正直、世奈は昨日女子達にあんな酷いことをされたばっかだから、俺としてはもしかしたら今日は仮病で…とかも疑っていたりする。
世奈は昔からそういうところがあったから。
クラスの誰かに嫌なことをされたから、今日は学校に行きたくないって。
するとやがて早月が、口を開いて言った。
「…言ったよ、今日。昨日の世奈ちゃんのこと、本人達に教室で問い詰めた」
「あ、なんだ。ちゃんと言ってんじゃん。したらそいつら何て?」
「“やってない”って、堂々と泣かれた」
「…は」
「“あたしらがそんなことするわけない”、“そんなに疑うんなら証拠見せてよ”ってはぐらかされたあとに…まぁ証拠なんて、持ってなかったから。
そしたら、“翔太くんがそんなこと言う人だなんて思わなかった”って。わんわん泣かれて、担任に見つかり、僕は職員室行き」
「…あー、」
早月はそう言うと、「勘弁してくれよもー」と両手で頭を抱える。
…まぁ確かに、世奈にあそこまでやる奴らだもんな。
そんな簡単に認めて反省する奴らじゃないか。
でも俺がそう思っていると、また早月が言う。
「っ、でも!世奈ちゃんのことは僕が絶対守るから!」
「!」
「それがもし火に油を注ぐことになっても、世奈ちゃんの無事だけは阻止する!何としてでも!」
それに、相沢さんには絶対に負けたくないしね。
早月はそう言うと、「だから余計な心配はしないでよ」と俺にそう言った。
…悔しいけど、世奈のことをマジで守りきってくれるなら、俺としてはそれでいい。
俺は早月のそんな言葉に、「わかった」とだけ返事をする。
「…あー、世奈ちゃん今頃どうしてるかな」
「…」
……あ、そういえば今のうちに、世奈にラインくらいしておこう。
今からお見舞いに行くこと、全然言ってなかったし。
俺は早月の言葉にふいにそう思うと、制服のポケットからスマホを取り出して、ラインの画面を開く。
するとそんな俺の隣で、ふいに何かを見つけたらしい早月が、ふとその場に立ち止まって俺に言った。
「……あ。相沢さん」
「?…なに」
「世奈ちゃん家行く前に、ちょっとここ寄ってかない?」
「…?」
…そう言って、早月が立ち止まったのは。
カフェ『Green』の前。
「!!」
…勇斗くんがいるカフェだ。
俺が少しびっくりして目を見開くと、早月は「ちょっとくらい平気でしょ」と悪気なくそう言った。
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