14 / 58
幼なじみが泊まりに来た件④
しおりを挟む
「抱いて、健」
あたしは健にそう言うと、健の肩に顔を埋めた。
…自分で言っておいて何だけど、こんなに照れるなんて…。
だけど、いきなりあたしにそんな予想外なことを言われた健も、内心凄く戸惑っていて。
なかなか言葉を、発しない。
「(…い、今、世奈俺に何て言った?“抱いて”とか聞こえた気がした、けど。え、それって聞き間違い?ただの俺の願望?)」
「…」
「(…と、とりあえずここは…俺どうしたらいい?女の子って下手にこういうの断ると傷つくんだっけ)」
「…ねぇ健、お願い」
「!」
…余程困らせてしまったのか。
長い間黙り込む健にあたしは待ちきれなくなって、一言そう言ってみる。
でも、さすがに恥ずかしさから健の顔は見れなくて、健の肩に顔を埋めたまま。
そのままじっとしていると、しばらくしてようやく呟くように健が言った。
「……そ、それって…さ」
「…?」
「お前…本心じゃ、ないだろ」
「!」
ふいにそう言われて、また体を離される。
その言葉にあたしが少し困惑しつつ、何を言おうか考えていると、その間に健が言った。
「お前が急に、そんなことを本気で俺に言うはずない。言うとしたら、今日みたいに…男達に襲われそうになった日、くらい?」
「…っ、」
「だから、俺が今世奈を抱くことによって、お前はそれで記憶を上書きしたいんだろ、」
そう言って、健は「違う?」と。
あたしの顔を覗き込んで、見事に見破ってしまう。
…健は、昔からいつもそうだね。
あたしの気持ち、わかってないようで、しっかりわかってたりするの。
だからあたしは健から目を逸らすと、渋々口を開いて言った。
「……だって、今ここで、独りでいたらどうしても思い出しちゃうんだもん」
「…」
「いきなり押し倒された時のこととか、体を触られてる時のこととか、なかなか誰も助けに来なくて、悲しかったこと…とか、全部」
「…」
「そんな記憶が頭の中に埋め尽されるくらいなら、あたしは今ここで健に触ってほしい。あの時嫌だった時のこと全部、健が上書きしてよ」
あたしはそう言うと、懲りずにまた健の背中に両腕を回す。
でも、健は戸惑っているようで。
そんなあたしの背中に腕を回してくれない。
「…世奈、」
代わりに、少し呆れたようにあたしの名前を口にするだけ。
だからあたしは、顔を上げて健に言った。
「っ…健は、あたしのこと好きなんでしょ?」
「そうだけど。でもっ…」
「だったらいいじゃん。健にとったら好都合でしょ?好きな女とヤレるんだから」
そう言うと、みっともないくらいに健を説得して。
頷いてくれるまで離さない。
…だけど、あたしの言葉を聞くと、やがて健が真剣な表情であたしに言う。
「…そうだな」
「!」
「確かに俺は世奈が好きだから、世奈からそうやって誘ってくれたら正直嬉しい。
それに、何も考えなくてもいいなら、今この場でお前をベッドに押し倒すことも簡単に出来るし、時間が許す限り、どこにでも何回でも…キスだって出来る」
「…っ」
「けど、もし途中で世奈が嫌がったとしても、俺は多分止められない」
「!」
「世奈が泣いても、暴れても、簡単に押さえつけてでもやめないかもしれない」
健はそう言うと、思わずびっくりして固まってしまうあたしの両肩に手を添える。
その手にすらビビっていると、健が言葉を続けて言った。
「…それでもまだ、上書きしてとか言える?」
「…っ、」
その問いかけに、あたしは今度は思い切り首を横に振る。
まさか健からそんな返答がくるなんて思ってもみなくて。
少し泣きそうになっていると、そんなあたしに気づいたのか、健がふとあたしを抱きしめて言った。
「…それでいいんだよ」
「…ごめん…」
「っつか俺、そういうことを世奈とするなら、ちゃんと両想いになってからがいい。
今は世奈の中に俺がいないの知ってるし、それじゃ意味ないだろ。世奈自身にとっても良くない」
そう言うと、ぽんぽんとあたしの頭を優しく撫でてくれるから、あたしは安心して健の背中に両腕を回す。
「…ありがと」
「ん。けどお前、俺以外の男に“抱いて”とか言うなよ。特に早月だったらマジで抱かれてたかもしれないからな」
「え、嘘~」
「や、アイツはそういう奴だから!世奈が知らないだけで、」
健はそう言うと、「とにかく他の男には絶対言うなよ」と念を押してくる。
まぁ、今回みたいなことは多分滅多にないだろうし、あたしも多分…二度と言わないと思うけどな。
それでも一応そんな健の言葉には、素直に頷いておいた。
「っつか、独りで寝れねぇんなら添い寝する?」
「うん、お願い」
「マジで?」
「…だって小さい頃はよく一緒に寝てたでしょ。それに…嫌なこと思い出しちゃうのは、ほんとだし」
「!」
そう言うと、あたしは「今日だけ一緒に寝よ」と健を誘う。
だって健は安全だもんね。
あたしがそう言うと、健は少し複雑そうに「まぁ…そうだな」と頷いた。
「…?」
そしてその夜は、狭いシングルベッドに本当に二人で寝たのだった。
…しかしその翌朝、そんなあたし達を見て、兄貴が勘違いして発狂したのは言うまでもない…。
あたしは健にそう言うと、健の肩に顔を埋めた。
…自分で言っておいて何だけど、こんなに照れるなんて…。
だけど、いきなりあたしにそんな予想外なことを言われた健も、内心凄く戸惑っていて。
なかなか言葉を、発しない。
「(…い、今、世奈俺に何て言った?“抱いて”とか聞こえた気がした、けど。え、それって聞き間違い?ただの俺の願望?)」
「…」
「(…と、とりあえずここは…俺どうしたらいい?女の子って下手にこういうの断ると傷つくんだっけ)」
「…ねぇ健、お願い」
「!」
…余程困らせてしまったのか。
長い間黙り込む健にあたしは待ちきれなくなって、一言そう言ってみる。
でも、さすがに恥ずかしさから健の顔は見れなくて、健の肩に顔を埋めたまま。
そのままじっとしていると、しばらくしてようやく呟くように健が言った。
「……そ、それって…さ」
「…?」
「お前…本心じゃ、ないだろ」
「!」
ふいにそう言われて、また体を離される。
その言葉にあたしが少し困惑しつつ、何を言おうか考えていると、その間に健が言った。
「お前が急に、そんなことを本気で俺に言うはずない。言うとしたら、今日みたいに…男達に襲われそうになった日、くらい?」
「…っ、」
「だから、俺が今世奈を抱くことによって、お前はそれで記憶を上書きしたいんだろ、」
そう言って、健は「違う?」と。
あたしの顔を覗き込んで、見事に見破ってしまう。
…健は、昔からいつもそうだね。
あたしの気持ち、わかってないようで、しっかりわかってたりするの。
だからあたしは健から目を逸らすと、渋々口を開いて言った。
「……だって、今ここで、独りでいたらどうしても思い出しちゃうんだもん」
「…」
「いきなり押し倒された時のこととか、体を触られてる時のこととか、なかなか誰も助けに来なくて、悲しかったこと…とか、全部」
「…」
「そんな記憶が頭の中に埋め尽されるくらいなら、あたしは今ここで健に触ってほしい。あの時嫌だった時のこと全部、健が上書きしてよ」
あたしはそう言うと、懲りずにまた健の背中に両腕を回す。
でも、健は戸惑っているようで。
そんなあたしの背中に腕を回してくれない。
「…世奈、」
代わりに、少し呆れたようにあたしの名前を口にするだけ。
だからあたしは、顔を上げて健に言った。
「っ…健は、あたしのこと好きなんでしょ?」
「そうだけど。でもっ…」
「だったらいいじゃん。健にとったら好都合でしょ?好きな女とヤレるんだから」
そう言うと、みっともないくらいに健を説得して。
頷いてくれるまで離さない。
…だけど、あたしの言葉を聞くと、やがて健が真剣な表情であたしに言う。
「…そうだな」
「!」
「確かに俺は世奈が好きだから、世奈からそうやって誘ってくれたら正直嬉しい。
それに、何も考えなくてもいいなら、今この場でお前をベッドに押し倒すことも簡単に出来るし、時間が許す限り、どこにでも何回でも…キスだって出来る」
「…っ」
「けど、もし途中で世奈が嫌がったとしても、俺は多分止められない」
「!」
「世奈が泣いても、暴れても、簡単に押さえつけてでもやめないかもしれない」
健はそう言うと、思わずびっくりして固まってしまうあたしの両肩に手を添える。
その手にすらビビっていると、健が言葉を続けて言った。
「…それでもまだ、上書きしてとか言える?」
「…っ、」
その問いかけに、あたしは今度は思い切り首を横に振る。
まさか健からそんな返答がくるなんて思ってもみなくて。
少し泣きそうになっていると、そんなあたしに気づいたのか、健がふとあたしを抱きしめて言った。
「…それでいいんだよ」
「…ごめん…」
「っつか俺、そういうことを世奈とするなら、ちゃんと両想いになってからがいい。
今は世奈の中に俺がいないの知ってるし、それじゃ意味ないだろ。世奈自身にとっても良くない」
そう言うと、ぽんぽんとあたしの頭を優しく撫でてくれるから、あたしは安心して健の背中に両腕を回す。
「…ありがと」
「ん。けどお前、俺以外の男に“抱いて”とか言うなよ。特に早月だったらマジで抱かれてたかもしれないからな」
「え、嘘~」
「や、アイツはそういう奴だから!世奈が知らないだけで、」
健はそう言うと、「とにかく他の男には絶対言うなよ」と念を押してくる。
まぁ、今回みたいなことは多分滅多にないだろうし、あたしも多分…二度と言わないと思うけどな。
それでも一応そんな健の言葉には、素直に頷いておいた。
「っつか、独りで寝れねぇんなら添い寝する?」
「うん、お願い」
「マジで?」
「…だって小さい頃はよく一緒に寝てたでしょ。それに…嫌なこと思い出しちゃうのは、ほんとだし」
「!」
そう言うと、あたしは「今日だけ一緒に寝よ」と健を誘う。
だって健は安全だもんね。
あたしがそう言うと、健は少し複雑そうに「まぁ…そうだな」と頷いた。
「…?」
そしてその夜は、狭いシングルベッドに本当に二人で寝たのだった。
…しかしその翌朝、そんなあたし達を見て、兄貴が勘違いして発狂したのは言うまでもない…。
10
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる