兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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幼なじみが泊まりに来た件①

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早月くんと別れたあと、あたしは結局独りでマンションに帰った。
本当は健と一緒に帰る予定だったけど、健の部活が終わるのが遅い時間だったから、待てなくて。
本当はあれからそれを知った早月くんが、「家まで送るよ」と言って聞かなかったけど、あたしは早月くんに家を知られるのが嫌で断ったのだ。
何より、今日と明日のカフェのシフトが休みになっている兄貴と鉢合わせになってしまえば元も子もない。
万が一、ということで。

あたしがマンションに帰ると、兄貴は晩ごはんの支度をしている最中だった。

「ただいまー」
「おぉ、おかえり。遅かったやん、もうちょいで電話するとこやったで」
「ごめんごめん、」

兄貴は何を作っているのか、野菜を慣れた手つきで包丁を使って切っている。
…ニンジン、ピーマン、玉ねぎ…わ、あたしの嫌いな野菜ばっかりだ。

「…何作ってるの?」

お昼のお弁当箱を出しながら兄貴の傍でそう聞くと、兄貴はニンジンを切りながら、

「中華風野菜炒め」

と言った。
野菜炒め……あたし嫌いなんだよー。

「えぇ~…」

そう言ってあからさまに嫌な顔をして見せると、兄貴が「まぁそう嫌な顔すんなや」と話を続ける。

「今日のメインディッシュは、唐揚げやで」
「!」

唐揚げ!?

「え、嬉しい!」

兄貴が作る唐揚げ、超美味いんだよね。
そう思って、バンザイしながらキッチンを離れると、そんなあたしの背中に、兄貴が思い出したようにしてあたしに言った。

「…あっ、世奈」
「?」
「今日、健泊まりに来んねん」

そう言って、一旦手を止めてあたしを見るから。
だけどその情報をとっくに知っているあたしは、兄貴に言う。

「知ってるよー。健が言ってたの聞いた」
「あ、何や、それなら話早いやんけ」
「ねぇ、何で健が泊まりにくるの?」
「明日土曜日やからな。健も部活昼からみたいやし」
「…夜遅くまで2人でゲームってわけね」

あたしが全てを察してそう言うと、兄貴が「世奈もやる?」と聞いてくる。
だけど、残念。
あたしはそういうゲームとか、しないから。
その言葉に首を横に振ると、兄貴がまた不意に顔を上げてあたしを呼んだ。

「世奈、ちょお、こっち来い」
「?」

そんな兄貴に、あたしは疑問を抱きながらキッチンにいる兄貴に近づく。
何?と問いかけたら、兄貴が出来上がったばかりの唐揚げを箸で持って…

「味見。食う?」

珍しく、そう言った。

「食べる!」

あたしのそんな言葉を聞くと、兄貴が「口開け、」とあたしの目の前に唐揚げを持ってくる。
「熱いで」とか言われたけど、そんなこと気にしない。
兄貴が作った唐揚げ、大好きだし。
そして兄貴にあーんしてもらってそれを口に含むと、やがて兄貴が聞いてきた。

「めっちゃウマイやろ?」
「絶品!」
「よっし!」

…だけど、ほんとに珍しいな。
いつもは味見なんて、させてくれないのに。
あたしはそんな兄貴にそう思いながらも、それ以上は特に気にすることもなくキッチンから離れた。

…………

それから数時間後。
あれからあたしがお風呂に入っている間に健が部活から帰ってきて、兄貴が作ってくれた晩ご飯を3人で食べた。
健が泊まりにくるのは実は珍しいことじゃなくて、健は兄貴と今日みたいにゲームをするためだけにたまに泊まりに来たりしている。

…だから、何もない夜はリビングを独占されるから。
あたしは、別にまだ寝ないけど、いつもより少し早い時間に自分の部屋に行った。

「じゃあおやすみ~」
「いや、早すぎやろ。絶対まだ寝ぇへんやん」
「…音楽聴いてたらそのうち眠れるでしょ」
「…」

あたしはそう言って、兄貴に手を振って部屋の中に入る。
……健は、なんとなくまだ、避けられるんじゃないかっていう不安があるから、素直に手を振れない。
あたしはベッドの枕元にある音楽を聴こうと、やがてイヤホンで耳を塞いだ。

…………

「ほな健、手加減とかせぇへんからな」
「いやもうガチで来て。絶対負けない」

世奈が部屋に入ったあと、ゲームを起動させながら俺は勇斗くんにそう言った。
実はこのゲーム、俺がこうやって泊まりに来た時に必ずと言っていいほどやるゲームで、長い間ずっとハマっているゲームだったりする。

そしていつものようにもう見慣れたゲームのオープニング画面を眺めていると、そのうちに勇斗くんが俺に言った。

「……なぁ」
「うん?」
「多分、お前やったら何か知ってるんちゃうかと思てるから聞くけど、」
「…?」

勇斗くんはそう言いながら、テレビ画面を見つめたまま。
一方の俺はその画面から視線を外すと、勇斗くんを見遣る。
すると、見遣った瞬間に勇斗くんが言った。

「…世奈、今日何かあったやろ」
「!!」

そう言って、びっくりする俺に、やっと視線を合わせる勇斗くん。
…まさか、いきなり、そんなことを言われるとか。
俺は、予想すらしていなかったから。
余計に怪しくなるとわかっていても、つい勇斗くんから目を逸らしてしまう。

…内緒だって、言われたのに。
何ですぐわかるのかな。
やっぱり勇斗くんって凄い。

「今日、世奈の様子が何かオカシイねん。晩ご飯唐揚げや言うても、口では喜んでるけど表情はそこまで喜んでへん。
気のせいかと思って試しに味見させても一緒やった。笑った顔がいつもとちゃう」
「!」
「…や、嘘やろ?って思ったけど、その後からもおんなじやん。俺は普段から世奈の隣におるからすぐわかんねん、そういうの」
「…」
「世奈に直接聞いても、多分あの感じやとはぐらかされるだけや。なぁ健、お前何か原因知ってるんちゃうの、」

勇斗くんはそう言うと、本当に心配そうに俺を見つめる。
…本当は、何かあったって、モンじゃない。

“兄貴に言うと凄い心配しちゃうから。お願い”

世奈は、ああ言ってたけど。
俺はゲームのコントローラーをテーブルの上に置くと、やがて勇斗くんに言った。

「…実は、世奈…」
「…」
「今日の放課後に………」







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