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謎のイケメンと出会った件②
しおりを挟む嘘だと言ってほしい。
教室に到着するなり、黒板に書かれている座席表を見ると、なんとあたしはあの早月くんの隣になっていた。
席は出席順になっているけれど、どうやら縦ではなく横へ横へと決められているらしい。
…早月くんは、出席順はあたしの次。
うわー、これはマズイな。
そう思って独り頭を悩ませていたら、ようやく美桜もそれに気がついて言った。
「あ、良かったね!翔太くんの隣!」
よくない!!
あたしの席は、教卓から見て前から2列目の左端から2番目だし、
早月くんは前から2列目の一番左端(廊下側)だ。
あぁ、さっきあんなことがあったのにこれは気まずすぎる。
そんなことを思いながらも仕方なく自分の席に行くと、そこへたくさんの女子生徒達を引き連れた早月くんがやって来た。
ってか、あんなにモテてるのにあたしは今まで全く早月くんの存在を知らなかったなんて…。
なんかちょっと、そっちの方が今は不思議だな。
あたしはそう思いながらもなるべくそいつを見ないようにスマホを弄っていたら、早速早月くんの声が聞こえてきた。
「僕の席どこー?」
そんな早月くんに、教室にいる女子達がここぞと言わんばかりに積極的に言った。
「翔太くんはね、2列目の廊下側!」
「一番端だよ!」
「工藤さんの隣!」
女子達はそう言うと、早月くんを席へと案内する。
「くど…え、世奈ちゃん隣なの!?」
すると後ろからそんな嬉しそうな声が聞こえて、思わずあたしは身構えた。
来ないで、と唱えてみたけどきっと無理だ。
早月くんはだんだんあたしに近づいてくる。
あーもう、わざわざあたしの名前を出して「隣」なんて教えてくれなくたっていいのに。
いやそうでなくてもすぐバレるんだけどさ。
そう思っていたら、早月くんが背後からふっとあたしの顔を覗き込んできて、言った。
「よろしくね?世奈ちゃん」
「!」
早月くんはそう言って、ふんわり優しく微笑んだ。
「よ、よろしく…」
さっきのこともあって、あたしが目を合わさずにそう言うと、早月くんは突如「かーわいー!」とか言って叫び出した。
…わ、わけわかんない。
周りにいる女子達の視線が痛いくらいに突き刺さってくるけど、そんなの無視無視。
悲しいかな。こういうのはもう慣れてるし。
あたしが早月くんから視線を外したまままだスマホを弄っていると、懲りない早月くんは言葉を続けて嬉しそうに言う。
「ね、世奈ちゃん。これって運命だと思うんだけど、世奈ちゃんはどう思う?」
「!?…えっ、」
あまりにも早月くんがストレートに言うもんだから、あたしは思わず持っていたスマホを落としそうになった。
だけど慌ててそれを支えて、びっくりして早月くんを見遣る。
「…運命とかないから」
そしてあたしが思ったことを素直に口に出してそう言えば、「僕はあるって信じてるよ」と自信たっぷりにそう言われた。
ってか、運命って…。
早月くんて頭の中女子みたい。
運命なんてそんなの、あるわけないのに…。
そう思ってまたスマホの画面に視線を戻せば、あたしはフォトギャラリー内で、ある画像を見つけた。
「!」
それは、凄く大事だった五人目の元彼とのツーショット画像。
消せばいいのに、消せない宝物。
きっと今まで付き合った中で、一番と言って良いほどあたしが本気になった相手。
あたしはふいにそれを見つけると、隣にいる早月くんに見られない内にスマホを閉じた。
「…」
貴斗くん…。
元彼達はみんな、あたしを好きだと告白してくれて、それぞれ付き合っていた。
でもあたしは、特にほとんど本気で好きなわけじゃなかった。
それなりに楽しかったけど、あたしは自分が「愛されてる」っていう実感だけで満足だったのかもしれない。
だけどただ、五人目の元彼、貴斗くんだけは違った。
初めて、「愛したい」という人に出会えた。
その当時まだあたしは中学二年だったけど、子供なりに本気で好きだった。
でも…彼は兄貴に会った直後言ったんだ。
『…なんだ、俺なんかいらないじゃん』
『え、』
『ごめん。俺、世奈と別れる』
なんか急に自信なくした、と。
付き合っていたのは、20人の中で一番長い2カ月。
兄貴になるべく会わせないようにしていたのに、貴斗くんとのデート中に偶然兄貴に出会してしまったのだ。
『世奈!』
兄貴が、街中で大声を出してあたしを呼ぶから…。
独りそんなことを考えていたら、何やら視線を感じて隣を見た。
「…?」
すると、そこには壁に寄りかかりながらあたしに身体を向けて座る早月くんの姿があって…
それだけならまだ許せるかもしれないけど、早月くんはスマホをあたしに向けて構えていた。
げ、これってもしかして…!
「ちょっと!撮ろうとしてるでしょ!!」
思わず席から立ち上がって早月くんのスマホを掴んでやれば、早月くんは「あ~…」と残念そうな声を出す。
そして、キッと睨みつけるあたしに早月くんが言った。
「…撮ろうとしたんじゃないもん」
そう言って、拗ねたような顔をして、また一言つけ加えた。
「…動画撮ってただけだもん」
え、動画!?
「だ…誰の、」
「もちろん、世奈ちゃんの」
いや、結局撮ってんじゃん!
「ね、早月くん。それ盗撮って言って、犯罪なんだよ。知ってる?」
あたしはそう言って早月くんのスマホの画面を暗くすると、タン、とそれを早月くんの机の上に置く。
しかし早月くんは、きょとんとした顔であたしに言った。
「え、僕堂々と撮ってたよ」
「だってあたし知らないし」
「やだな、気づかなかっただけでしょ。何だか物思いに耽ってたみたいだし?」
そう言って、クックッと可笑しそうに笑うそいつ。
その言葉にあたしはそれ以上何も言いたくなくなって、「とりあえず、それやめてよね」とだけ言ってまた自分の席についた。
「はいはーい」
あぁ…早月くんといると何か調子狂う…。
何だか朝から凄く疲れたあたしは、もう隣だけは見るまいと決めて前だけを向いたのだった…。
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