兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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謎のイケメンと出会った件①

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翌日。
今日からあたしは高校2年生にあがり、新しい一年がスタートする。
その前に生徒玄関に貼り出されているクラス表を見に行くと、そこには親友の汐崎美桜シオザキミオがいた。
美桜は、あたしが登校してくる姿を発見するなり笑顔であたしを呼ぶ。

「世奈ー!世奈おはよ!クラスあたしと同じだよ!」
「マジで!?」

美桜とは、高校にあがってすぐに出来た友達だ。
この高校に入ってから、あたしの中学の時の友達はみんな違う学校に行ってしまって、独りぼっちだったあたしに優しく声をかけてくれたのが、美桜だった。
美桜は基本誰にでも優しくて、人の悪口を絶対に言わない良いコだ。
それに見た目も清楚で、肩くらいまで伸びた綺麗な黒髪に、パッチリした目に長い睫毛だから超可愛い。
しかもメイクだって全然濃くなくて、寧ろナチュラルメイクを高校に入ってからずっと貫き通している。

…美桜が羨ましい。
あたしは髪の毛茶色に染めてるし(兄貴に「お前黒髪似合ってへんで」って言われた)、
メイクだって全然ナチュラルメイクじゃないし、「清楚」なんて言われたことがない。

あたしはそんな美桜の元に駆け寄ると、一緒にクラス表を見に行った。

あたしと美桜のクラスは、2年3組。
自分のクラス表を見ると、そこには本当にあたしと美桜の名前が書かれてあって、あたしは思わずほっと胸を撫で下ろす。
だけどあたしは、あたしと美桜の名前の間に書かれているある人物の名前にふいに目が留まった。

「…ねぇ」
「うん?」
早月翔太サツキショウタって、誰?」

あたしがそう問いかけると、美桜はびっくりした様子であたしに言う。

「えぇっ!?世奈、翔太くん知らないの!?」

あまりにもそう驚かれるから、「もしかして有名な人なのかな…」と思いながらあたしは首を横に振る。

「…知らない。初めて名前見た」

ってか、今日から2年生になったばっかだし、知らなくても可笑しくなくない?
あたしがそう返事をすると、美桜は「翔太くんって、女のコ達にすっごいモテるんだよ!」って力説した。

「…ふ~ん」

…ま、どーでもいいけど。
と、あたしが興味なさげに相槌を打った、その時だった。

「きゃあ~!!」
「!!」

突然、背後から女子生徒達の悲鳴にも似た声が、耳をつんざいた。
わ、びっくりした…!
その声にあたしが思わずちょっと目を丸くしていると、隣にいる美桜が言う。

「あ、ほら、噂をすれば翔太くん!」

そう言って、美桜はあたしの肩をぽんぽんと叩いて、その翔太くんとやらを指差した。
…え、何なにそんなに騒ぐくらいイケメンなの?
そう思って振り向いた時、生徒玄関に入ってくる早月くんが初めてあたしの視界に入った。

「!」

…カッコイイ、
と、いうか、可愛い?

「みんなおはよー」

彼はそう言うと、そこにいる女子生徒達に向かってニッコリ微笑んで、愛嬌を振り撒く。
…あぁ、申し訳ないけどちょっとあたしの苦手なタイプだな。
一目見た瞬間、そう思った。

「ねぇ、僕クラス何処かなー?」

早月くんは靴を履き替えながらそう聞くと、チラリと一番近くにいた女子生徒に目を遣る。
すると、その女子は全く違うクラスなのに笑顔ではっきり即答した。

「翔太くんは、2年3組だよ!」
「ありがとう」

そう言って、またふんわり笑う。
その笑顔にまたみんなが「きゃあ~!」と叫びだして、まるで人気アイドルがいきなり学校に来た時みたい。
ってか、イマドキ一人称が「僕」とか!
え、もしかして良いとこのお坊ちゃん的な?
そう思いながらその光景を眺めていたら、靴を履き替えた早月くんが「2年3組のクラス表」に近付いてきた。

「…」

…うん、やっぱ見た目的には、カッコイイ系ではない。
寧ろ可愛い系。
身長は…170㎝くらい?
わりと細身で、筋肉とかもなさそう。
髪型は…前髪は向かって右に分けられていて、後ろはちょい長めで、テッペンを遊ばせてる感じの、モテる王道な髪型だ。
それに、髪色は焦げ茶色で、目は美桜と一緒でパッチリしてて、例えたら何だろう…小動物系?

…うん、やっぱ兄貴には負けるわ。
そう思いながらそいつを見ていたら、クラス表の真ん前に来た早月くんとふいに目が合った。

「…」
「?」

なに…?
早月くんはあたしを見るなりちょっと驚いたような顔をすると、そのままじっとあたしを見つめる。
なんなのよ、
そう思って少しうざったく感じていたら、早月くんが突如真面目な顔をしてあたしに言った。

「君、名前は!?」

え、名前?

「…工藤、世奈」

あたしがそう答えると、早月くんはふと2年3組のクラス表に目を遣って、「…あ」とだけ呟く。
どうやらあたしの名前を見つけたらしい。
そして、未だこの状況が把握出来ないでいるあたしにまた視線を戻して、はっきり言った。

「一目惚れした!僕と付き合って!」
「は…」

ひ…ヒトメボレ?
って、何?米?あ、お米のこと?
突然の言葉に、一瞬にして思考回路が停止してしまったあたしは、無い頭で一生懸命状況を整理する。
……いや、けど、やっぱ違和感。

待って!お米じゃない!
やっぱこの人いまあたしに告ってきたよね!?
しかも生徒玄関の新しいクラス表前っていうほぼ全校生徒がいるここで!
いや、てかそもそも冗談でしょ!?
冗談と言って!
あたしが内心そうパニクっていたら、それを見ていた周りの女子生徒達が騒ぎ出す。

「え~やだぁっ!!」
「冗談だよね、翔太くん!?」
「翔太はあたしのだよ!」

口々にそう言って、みんなが不満げな顔をして早月くんを見遣る。
大胆な女子は早月くんの腕に自分の腕を絡ませて、胸なんか押し付けちゃってるし。
や…っていうか、そうだよ。あたしだってわけわかんない。
彼はそうやって今までたくさんの女の子を口説いてきたのか。
こういう人って、遊んでそうな気がするし。
やっぱり苦手なタイプだ。

「ば…バカじゃないの、」

目をきらきらさせてあたしを見る早月くんに、あたしは吐き捨てるようにそう言うと、独り先にその場を後にして教室に向かった。

「あ、ちょっと世奈ちゃん…!」

そこで何故かいきなり軽々しく名前にちゃん付けされたけど、そんなの無視無視。
あたしは独りずんずんとその場を離れて行くと、ため息を吐く。

あぁ、なんか嫌な感じ。
何なのあれ!?
あの人はああやって人をおちょくるのが好きなわけ!?
それとも……何?またあたしが軽い子にでも見えた?

そう思いながら、新しい教室に続く階段を上っていると、背後から美桜に声をかけられた。

「世奈!」
「…美桜、」

あたしは美桜の声に立ち止まると、顔だけを美桜に向ける。
美桜は走ってあたしを追いかけてきてくれたみたいで、あたしの横に並ぶと半ば興奮したように言った。

「世奈凄い!翔太くんに即気に入られちゃったじゃん!」

そう言って、目をきらきらさせる美桜は可愛い。けど、今はちょっと複雑だ。

「…あんなの単なる悪ふざけでしょ。もう嫌。また他の女子に目つけられる」

美桜の言葉にあたしが小さくため息をついてそう言うけど、美桜は首をぶんぶんと横に振って言う。

「いや、きっと悪ふざけなんかじゃないよ!だって翔太くん、目が本気だったし!…まあ、確かに女の子は皆不満そうだったけど」

そう言ってあたしにニッコリと笑いかけてくれる美桜。
悪気のない笑顔。…うん、素敵。
だけどごめん、無理。
第一、あたし昨日失恋したばっかなのに、早月くんが仮に本気だとしても、あたしはすぐには気持ちを切り換えられない。
そんな単純じゃないんだ、あたしは。
美桜の言葉に、あたしは棒読みで「そっかそっか~」と相槌を打つと、やっと見えてきた新しい教室に入った。

只今の時間、朝礼開始10分前。
教室にはもう既にクラスメイトが何人かいて、あたしは黒板に書いてある座席表を見た。
えーっと、あたしの席は…。

「!!」

え、ちょっと待ってよ!!

黒板に書かれている座席表では、なんとあたしはあの早月くんの隣になっていた…。

「う、嘘でしょ…」






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