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六章 第四皇子、白百合を冀う。
6-8 華燭洞房(三)*
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さっきよりもすこしだけ濡れて、綻んできたそこに、ゆっくりと指を入れる。ぬくぬく、と、乱暴にならないように気を配りながら、抜き挿しをする。
どうしても違和感はあるらしく、瓔偲はちいさく眉根を寄せた。そんな彼にくちづけをしたり、もう片方の手指で肌を撫でさすったりしながら、燎琉は次第に瓔偲をほどけさせていった。
やがて、三本入れた指をばらばらと動かしても、相手が蕩けきった表情しか見せなくなった頃、燎琉は指を抜き取った。
瓔偲は燎琉の腕にすっかり自分を預けきって、されるがままになっている。はあ、はあ、と、繰り返したくちづけのせいもあって赤く濡れたくちびるから、熱っぽい息を吐いていた。その呼吸すらもが、いとおしい。
「瓔偲」
名を呼んで、燎琉は瓔偲の膝裏を持ち上げた。慾をたぎらせて立ち上がった己のものを、瓔偲の入り口に擦りつける。
頬を上気させ、熱っぽい眼差しで瓔偲を見詰めた。こちらを見返してくるとろんとした眸に出逢った刹那、燎琉は、期待から思わず、こく、と、ちいさく喉を鳴らしていた。
「瓔偲」
もう一度呼ぶ。
ぐ、と、わずかに体重を乗せ、濡れてほころんだ瓔偲のそこに、ゆっくりと先端を呑み込ませた。
「ぅ、あ……あ……殿、下……」
燎琉の侵入を受け、瓔偲はちいさく柳眉をひそめた。身体がすこし強張る。
「だいじょうぶか?」
きつい内壁の締め付けにこちらも眉を寄せて、燎琉は瓔偲を慮った。
「ごめん……つらいな?」
動きを止めて問うと、瓔偲は忙しく呼吸しながら、けれども健気にも頭を振った。
「へいき、です……そのまま……」
言いながら、じっと燎琉を見詰める。
「うん」
燎琉は瓔偲の髪をさらりと撫で梳いた。
「ゆっくりするから……息をはいて。ちから、抜けるか……?」
燎琉が促すと、瓔偲は努めて大きく息を吐き出した。張り詰めていた身体からはわずかに力が抜け、ゆるむ。はあ、はあ、と、ゆるやかな呼吸を繰り返しながら、彼は燎琉を受け入れようとしてくれていた。
その姿に胸が詰まる。いとおしさが込み上げる。燎琉は身を倒して、瓔偲のくちびるにくちづけた。
急がず、ゆるゆると腰を動かしながら、奥を目指す。くちびるを重ね、身体に愛撫をほどこしながらしばらく抜き差しを繰り返すと、やがて莟は綻んで、次第に燎琉の熱をやわく包み込んだ。
微細な襞が燎琉の固い滾りに、熱くねっとりと絡みついてくる。たまらなく甘い刺激に、く、と、燎琉は歯を食いしばった。
「殿下……燎琉、殿下」
瓔偲がこちらを呼ぶ。その請うような眼差しに、燎琉は、身の内に渦巻く熱が一気に盛り立ったのを感じた。
「瓔偲」
押し拉ぐように瓔偲に重みをかける。ぐぅう、と、身体を撓め、最後は、とちゅん、と、最奥までを一息に貫いた。
「あ、ぁ、ァ――……ッ」
燎琉の昂りが奥へ届いた刹那、細い悲鳴じみた嬌声とともに、瓔偲の身体が軽く突っ張った。
彼はそのまま、ひく、ひくん、と、身をちいさくふるわせる。熱い内壁もまた、そのふるえに呼応するように、きゅう、きゅうん、と、蠕動し、痙攣していた。花茎もまたとろとろと蜜をこぼしている。
「……いったのか」
どうやら相手が軽く絶頂を見たらしいと気づいて、燎琉は瓔偲の顔を覗き込んだ。
「だいじょうぶか?」
囁き声で問うと、己の身体に起こったのがそういうことだと理解したらしい瓔偲が、かぁ、と、頬を染める。
「み、みないで、くださっ……こんな……は、したない」
いやいやと頭を振り、己の腕を顔の前で交差させて、赤らむ表情を覆い隠そうとした。が、燎琉はやさしくその腕をほどかせる。
「はしたないものか。かわいい」
「……うそ、です……そんな」
「己のつがいが、俺の身体を受け止めて、喜んでくれているんだ。嬉しくないわけがないだろう」
だから隠すな、と、そう言って、燎琉は瓔偲にくちづけた。
「ぜんぶ、這入った……お前の、中だ」
ほう、と、漏らす熱い吐息とともに、燎琉はうっとりと呟いた。
「殿下も……」
燎琉の下で、瓔偲がこちらを窺いながら小声で言う。
「殿下も、よい思いを、味わってくださっていますか……わたしの、中で」
躊躇いがちに問われ、燎琉は一瞬、目を瞠った。それから、とろ、と、笑みを深める。
「あたりまえだろ」
身体も心も一緒くたにとけててしまいそうなくらいだった。応えて、相手に軽くくちづけると、瓔偲はその薄いくちびるをそっと微笑ませた。
幸福そうな微笑に、燎琉はますます相手へのたまらない愛しさと、同時に慾とが募るのを感じた。切なく眉根を寄せて瓔偲に抱きつくと、燎琉の昂奮をくわえ込んだ熱が膨らむのでまざまざと感じるらしい瓔偲が、あ、と、ちいさく声をあげた。
「あ、あ……お腹の、中……殿下で、いっぱい……わたし、どうしたら」
戸惑うように口にしながら、さす、と、彼は己の白い腹を撫でさすって見せた。
「そんなの……もっともっと、俺でいっぱいになったらいいんだ」
じんわりと相手の内壁が馴染んできたのを感じ取って、燎琉はそう言った。
「腕、まわせ」
相手の手を取り、己の背を抱くように促す。まだどこか遠慮がちな瓔偲が、それでもおずおずと燎琉の背中につかまったところで、燎琉は彼を揺すぶる律動をやや大胆にした。
腹の内側の痼った箇所を擦りたてるようにしてやる。きもちいいところのはずだ。固く熱く滾った慾でぐりぐりとそこを刺激すると、瓔偲は途端に声をひっくりかえらせた。
「あ、ひぃ、っ……ひぁ、ア、ァッ、アン」
あ、あ、あ、と、瓔偲のくちびるからは、ひっきりなしに嬌声が漏れている。身体も、ひく、ひくん、と、ふるえを刻む。
「もっと、奥まで……いっていいか」
燎琉は言うと、けれども相手の返事を待つこともできず、改めて瓔偲の腰を抱え直した。そして、ゆさ、ゆさ、と、相手を揺さぶり、翻弄した。
「あ、ま、まって……殿下、あ、おく、奥に、あたって……ア、アァ、ンッ」
とん、とん、とちゅ、とちゅん、と、深くを突き上げる。ぬちぬち、と、粘膜が擦れ合う音が耳を侵すごとに、昂奮が高まっていく。
「瓔偲……瓔偲」
熱っぽく、切実な声で繰り返し呼びながら、燎琉は何度も何度も瓔偲の身体を攻め立てた。
「殿下、ぁ、殿下……わ、わたし、なにか、へん……へんです、あ、あ、あ、だめっ」
だめだ、と、そう言いつつも、瓔偲の声はとろりと甘い。眉を顰めるのは、ただ、これまで身体に覚えたことのない快美に戸惑うからのようで、決して苦悶からそうするのではなさそうだった。
身体に力が入らないのか、燎琉につかまっていた瓔偲の腕がゆるんで、褥に落ちてしまう。燎琉は相手のてのひらにてのひらを重ね、指と指を絡めるようにして押さえ込んだ。
身を倒して、くちづけする。深く重ね、ぬるぬると舌を絡めつつ、ずち、ずつん、と、律動も続けた。
ぐ、ぐうぅ、と、最後に容赦なく奥を突き、深々と貫く。
「あ、ああ、燎琉さま……ア、ア、アァ――……ッ!」
ひきつるような喘ぎ声を上げながら、瓔偲は軽く身を突っ張らせた。
あ、あ、と、続けてしばらく身体をふるわせる。どうやら再び、今度は先程よりももっと深い絶頂を得たらしい。
「っ、くぅ」
きゅう、きゅうぅん、と、引き絞るように切なくこちらを締め付けてくる内壁の熱さに瓔偲が極めたのを悟った燎琉も、今度は強いて堪えず、瓔偲の中に気を吐いた。
「あ、燎琉、さま……おなかのなか、あったかい」
うっとりとした表情で瓔偲は言う。はあ、はあ、と、熱く荒い呼吸をまだ繰り返している相手を、燎琉はきつく抱き締めた。
「好きだ」
口に出すと、じん、と、胸が熱くなった。
「お前のことが、すき」
たまらない――……あふれだしてしまいそうだった。
「つがい、ですから……」
瓔偲は口許に手の甲を当て、掠れた声でこぼした。
それはいったい、肯定的な響きでそう言うのか、それとも否定的な意味を帯びているのだろうか。燎琉は手指を伸べて、するり、と、瓔偲の頬を撫でた。
「痕……見せてくれないか」
そう言うと、無言のまま、瓔偲はゆっくりと首を捻るようにして横を向いた。
白い項がさらされる。燎琉はそこをそっと撫でた。肌には、燎琉が牙を立てた後が消えることなく残っている。
いとおしい、と、思う。泣きたくなるほどだ。その、いま心のうちにある想いは、あの日、燎琉が瓔偲を咬んで、ふたりがつがいになったからこそ生じた感情なのかもしれなかった。
けれども燎琉は、たとえそうなのだとしても、別にそれでも構わないと思った。だって、いまこのとき、たしかに己の中に瓔偲への情があるからだ。
魂が呼びあう――……胸を満たすこのきもちが、贋物だとは思わない。
燎琉は瓔偲の項に残る痕を撫でながら、そっと瓔偲に微笑んだ。
「俺たちはつがいだから……この想いは、永遠だ」
瓔偲の首筋に懐くようにしながら言う。
「俺たちはつがい。永遠に切れない絆で結ばれている。だから、これから、いつか互いに年をとって、死が二人を分かつまで……俺はお前のことを、ずっと好きでい続けるんだ。ずっと」
それはとてもすばらしいことのように思えた。
「――……お前は?」
燎琉が窺うように問いかけると、瓔偲はどこかはずかしそうに目を伏せた。
「殿下を……お慕い申しております。きっと、死ぬまで……永遠に」
それでも、ほう、と、うっとりとした息をはくようにして口にされた言葉に、うん、と、燎琉は頷いた。
瞼がじんと熱い。あふれだしてしまいそうだ。けれども、こぼれてしまいそうな想いのすべてを閉じ込めておきたくもあって、だから燎琉は、瓔偲の細い身体を包み込むように抱き締めた。
つがったのが彼でよかった、と、おもう。
瓔偲を伴侶として迎えられてよかった。
離したくない。ぜったいに。
瓔偲は自分のつがい、永遠の伴侶だ――……そのひとを、この腕に抱いているのだという、この、至上の幸福。
ことばにならない――……しあわせだ。
でも、もっとつながりたい。
もっと深く、もっと、と、そう思ったとき、燎琉は再び瓔偲の首筋に顔を埋めていた。
ふわり、と、百合の香が匂い立つ。
清冽な、それでいてとろりと蕩けるかのごとく甘い、その芳香。
瓔偲の香りだ――……あの日から燎琉を捕えて已まない、その香り。燎琉は恍惚と目を眇めた。
「殿下……燎琉さま」
名を呼ばれ、まるで誘いこまれでもしたかのように、燎琉は瓔偲の項にくちづける。いつか己が歯を立てた痕が残っている箇所にそっと歯を立て、その白くやわい肌に再び――今度はごくやさしく、甘咬みのように、あるいは誓いでもするかのように――そっと牙を立てていた。
どうしても違和感はあるらしく、瓔偲はちいさく眉根を寄せた。そんな彼にくちづけをしたり、もう片方の手指で肌を撫でさすったりしながら、燎琉は次第に瓔偲をほどけさせていった。
やがて、三本入れた指をばらばらと動かしても、相手が蕩けきった表情しか見せなくなった頃、燎琉は指を抜き取った。
瓔偲は燎琉の腕にすっかり自分を預けきって、されるがままになっている。はあ、はあ、と、繰り返したくちづけのせいもあって赤く濡れたくちびるから、熱っぽい息を吐いていた。その呼吸すらもが、いとおしい。
「瓔偲」
名を呼んで、燎琉は瓔偲の膝裏を持ち上げた。慾をたぎらせて立ち上がった己のものを、瓔偲の入り口に擦りつける。
頬を上気させ、熱っぽい眼差しで瓔偲を見詰めた。こちらを見返してくるとろんとした眸に出逢った刹那、燎琉は、期待から思わず、こく、と、ちいさく喉を鳴らしていた。
「瓔偲」
もう一度呼ぶ。
ぐ、と、わずかに体重を乗せ、濡れてほころんだ瓔偲のそこに、ゆっくりと先端を呑み込ませた。
「ぅ、あ……あ……殿、下……」
燎琉の侵入を受け、瓔偲はちいさく柳眉をひそめた。身体がすこし強張る。
「だいじょうぶか?」
きつい内壁の締め付けにこちらも眉を寄せて、燎琉は瓔偲を慮った。
「ごめん……つらいな?」
動きを止めて問うと、瓔偲は忙しく呼吸しながら、けれども健気にも頭を振った。
「へいき、です……そのまま……」
言いながら、じっと燎琉を見詰める。
「うん」
燎琉は瓔偲の髪をさらりと撫で梳いた。
「ゆっくりするから……息をはいて。ちから、抜けるか……?」
燎琉が促すと、瓔偲は努めて大きく息を吐き出した。張り詰めていた身体からはわずかに力が抜け、ゆるむ。はあ、はあ、と、ゆるやかな呼吸を繰り返しながら、彼は燎琉を受け入れようとしてくれていた。
その姿に胸が詰まる。いとおしさが込み上げる。燎琉は身を倒して、瓔偲のくちびるにくちづけた。
急がず、ゆるゆると腰を動かしながら、奥を目指す。くちびるを重ね、身体に愛撫をほどこしながらしばらく抜き差しを繰り返すと、やがて莟は綻んで、次第に燎琉の熱をやわく包み込んだ。
微細な襞が燎琉の固い滾りに、熱くねっとりと絡みついてくる。たまらなく甘い刺激に、く、と、燎琉は歯を食いしばった。
「殿下……燎琉、殿下」
瓔偲がこちらを呼ぶ。その請うような眼差しに、燎琉は、身の内に渦巻く熱が一気に盛り立ったのを感じた。
「瓔偲」
押し拉ぐように瓔偲に重みをかける。ぐぅう、と、身体を撓め、最後は、とちゅん、と、最奥までを一息に貫いた。
「あ、ぁ、ァ――……ッ」
燎琉の昂りが奥へ届いた刹那、細い悲鳴じみた嬌声とともに、瓔偲の身体が軽く突っ張った。
彼はそのまま、ひく、ひくん、と、身をちいさくふるわせる。熱い内壁もまた、そのふるえに呼応するように、きゅう、きゅうん、と、蠕動し、痙攣していた。花茎もまたとろとろと蜜をこぼしている。
「……いったのか」
どうやら相手が軽く絶頂を見たらしいと気づいて、燎琉は瓔偲の顔を覗き込んだ。
「だいじょうぶか?」
囁き声で問うと、己の身体に起こったのがそういうことだと理解したらしい瓔偲が、かぁ、と、頬を染める。
「み、みないで、くださっ……こんな……は、したない」
いやいやと頭を振り、己の腕を顔の前で交差させて、赤らむ表情を覆い隠そうとした。が、燎琉はやさしくその腕をほどかせる。
「はしたないものか。かわいい」
「……うそ、です……そんな」
「己のつがいが、俺の身体を受け止めて、喜んでくれているんだ。嬉しくないわけがないだろう」
だから隠すな、と、そう言って、燎琉は瓔偲にくちづけた。
「ぜんぶ、這入った……お前の、中だ」
ほう、と、漏らす熱い吐息とともに、燎琉はうっとりと呟いた。
「殿下も……」
燎琉の下で、瓔偲がこちらを窺いながら小声で言う。
「殿下も、よい思いを、味わってくださっていますか……わたしの、中で」
躊躇いがちに問われ、燎琉は一瞬、目を瞠った。それから、とろ、と、笑みを深める。
「あたりまえだろ」
身体も心も一緒くたにとけててしまいそうなくらいだった。応えて、相手に軽くくちづけると、瓔偲はその薄いくちびるをそっと微笑ませた。
幸福そうな微笑に、燎琉はますます相手へのたまらない愛しさと、同時に慾とが募るのを感じた。切なく眉根を寄せて瓔偲に抱きつくと、燎琉の昂奮をくわえ込んだ熱が膨らむのでまざまざと感じるらしい瓔偲が、あ、と、ちいさく声をあげた。
「あ、あ……お腹の、中……殿下で、いっぱい……わたし、どうしたら」
戸惑うように口にしながら、さす、と、彼は己の白い腹を撫でさすって見せた。
「そんなの……もっともっと、俺でいっぱいになったらいいんだ」
じんわりと相手の内壁が馴染んできたのを感じ取って、燎琉はそう言った。
「腕、まわせ」
相手の手を取り、己の背を抱くように促す。まだどこか遠慮がちな瓔偲が、それでもおずおずと燎琉の背中につかまったところで、燎琉は彼を揺すぶる律動をやや大胆にした。
腹の内側の痼った箇所を擦りたてるようにしてやる。きもちいいところのはずだ。固く熱く滾った慾でぐりぐりとそこを刺激すると、瓔偲は途端に声をひっくりかえらせた。
「あ、ひぃ、っ……ひぁ、ア、ァッ、アン」
あ、あ、あ、と、瓔偲のくちびるからは、ひっきりなしに嬌声が漏れている。身体も、ひく、ひくん、と、ふるえを刻む。
「もっと、奥まで……いっていいか」
燎琉は言うと、けれども相手の返事を待つこともできず、改めて瓔偲の腰を抱え直した。そして、ゆさ、ゆさ、と、相手を揺さぶり、翻弄した。
「あ、ま、まって……殿下、あ、おく、奥に、あたって……ア、アァ、ンッ」
とん、とん、とちゅ、とちゅん、と、深くを突き上げる。ぬちぬち、と、粘膜が擦れ合う音が耳を侵すごとに、昂奮が高まっていく。
「瓔偲……瓔偲」
熱っぽく、切実な声で繰り返し呼びながら、燎琉は何度も何度も瓔偲の身体を攻め立てた。
「殿下、ぁ、殿下……わ、わたし、なにか、へん……へんです、あ、あ、あ、だめっ」
だめだ、と、そう言いつつも、瓔偲の声はとろりと甘い。眉を顰めるのは、ただ、これまで身体に覚えたことのない快美に戸惑うからのようで、決して苦悶からそうするのではなさそうだった。
身体に力が入らないのか、燎琉につかまっていた瓔偲の腕がゆるんで、褥に落ちてしまう。燎琉は相手のてのひらにてのひらを重ね、指と指を絡めるようにして押さえ込んだ。
身を倒して、くちづけする。深く重ね、ぬるぬると舌を絡めつつ、ずち、ずつん、と、律動も続けた。
ぐ、ぐうぅ、と、最後に容赦なく奥を突き、深々と貫く。
「あ、ああ、燎琉さま……ア、ア、アァ――……ッ!」
ひきつるような喘ぎ声を上げながら、瓔偲は軽く身を突っ張らせた。
あ、あ、と、続けてしばらく身体をふるわせる。どうやら再び、今度は先程よりももっと深い絶頂を得たらしい。
「っ、くぅ」
きゅう、きゅうぅん、と、引き絞るように切なくこちらを締め付けてくる内壁の熱さに瓔偲が極めたのを悟った燎琉も、今度は強いて堪えず、瓔偲の中に気を吐いた。
「あ、燎琉、さま……おなかのなか、あったかい」
うっとりとした表情で瓔偲は言う。はあ、はあ、と、熱く荒い呼吸をまだ繰り返している相手を、燎琉はきつく抱き締めた。
「好きだ」
口に出すと、じん、と、胸が熱くなった。
「お前のことが、すき」
たまらない――……あふれだしてしまいそうだった。
「つがい、ですから……」
瓔偲は口許に手の甲を当て、掠れた声でこぼした。
それはいったい、肯定的な響きでそう言うのか、それとも否定的な意味を帯びているのだろうか。燎琉は手指を伸べて、するり、と、瓔偲の頬を撫でた。
「痕……見せてくれないか」
そう言うと、無言のまま、瓔偲はゆっくりと首を捻るようにして横を向いた。
白い項がさらされる。燎琉はそこをそっと撫でた。肌には、燎琉が牙を立てた後が消えることなく残っている。
いとおしい、と、思う。泣きたくなるほどだ。その、いま心のうちにある想いは、あの日、燎琉が瓔偲を咬んで、ふたりがつがいになったからこそ生じた感情なのかもしれなかった。
けれども燎琉は、たとえそうなのだとしても、別にそれでも構わないと思った。だって、いまこのとき、たしかに己の中に瓔偲への情があるからだ。
魂が呼びあう――……胸を満たすこのきもちが、贋物だとは思わない。
燎琉は瓔偲の項に残る痕を撫でながら、そっと瓔偲に微笑んだ。
「俺たちはつがいだから……この想いは、永遠だ」
瓔偲の首筋に懐くようにしながら言う。
「俺たちはつがい。永遠に切れない絆で結ばれている。だから、これから、いつか互いに年をとって、死が二人を分かつまで……俺はお前のことを、ずっと好きでい続けるんだ。ずっと」
それはとてもすばらしいことのように思えた。
「――……お前は?」
燎琉が窺うように問いかけると、瓔偲はどこかはずかしそうに目を伏せた。
「殿下を……お慕い申しております。きっと、死ぬまで……永遠に」
それでも、ほう、と、うっとりとした息をはくようにして口にされた言葉に、うん、と、燎琉は頷いた。
瞼がじんと熱い。あふれだしてしまいそうだ。けれども、こぼれてしまいそうな想いのすべてを閉じ込めておきたくもあって、だから燎琉は、瓔偲の細い身体を包み込むように抱き締めた。
つがったのが彼でよかった、と、おもう。
瓔偲を伴侶として迎えられてよかった。
離したくない。ぜったいに。
瓔偲は自分のつがい、永遠の伴侶だ――……そのひとを、この腕に抱いているのだという、この、至上の幸福。
ことばにならない――……しあわせだ。
でも、もっとつながりたい。
もっと深く、もっと、と、そう思ったとき、燎琉は再び瓔偲の首筋に顔を埋めていた。
ふわり、と、百合の香が匂い立つ。
清冽な、それでいてとろりと蕩けるかのごとく甘い、その芳香。
瓔偲の香りだ――……あの日から燎琉を捕えて已まない、その香り。燎琉は恍惚と目を眇めた。
「殿下……燎琉さま」
名を呼ばれ、まるで誘いこまれでもしたかのように、燎琉は瓔偲の項にくちづける。いつか己が歯を立てた痕が残っている箇所にそっと歯を立て、その白くやわい肌に再び――今度はごくやさしく、甘咬みのように、あるいは誓いでもするかのように――そっと牙を立てていた。
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