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積み残し編……もうちょっと続くんじゃよ

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「なに……これ」

 ウルトに乗り込んだ先輩はウルトの内装を見て驚いている。

 現在のウルトの内装は、一番前は通常の運転席と助手席。
 本来寝台がある場所が消えて二列目のベンチシートとなっている。

 その後ろ、荷台部分は両側に長椅子、真ん中にテーブルと食堂風になっている。

「これが俺のトラックっす」
「おかしくない?  俺のと違いすぎない?」

 先輩が真顔で喋ってる。珍しいな。

「まぁ座ってくださいよ。茶くらいは出しますから」
「あ、どうもお気遣いなく……」

 先輩を荷台部分の長椅子に座らせて、俺も対面に座る。
 さて出発、と言おうとしたところで、助手席に座っていたイリアーナがやって来て俺の隣に座った。

「先輩、紹介しますね。俺の奥さんのイリアーナです」
「よろしく」

 イリアーナはぺこりと小さく会釈する。先輩の顔がだんだんと般若のようになっていく。

「朝立勲です……レオっち、レオっちは俺を怒らせた。こんな西洋のお人形さんみたいな綺麗な子を奥さんにしてるなんて許すまじ!」
「お人形さん」

 イリアーナは褒められたのが嬉しかったのか、満更でも無い顔をしている。

「この上美少女妹キャラにクール系美女、さらにミステリアスボクっ娘まで……羨ましいんだよぉぉぉおおお!!」

 えっと、美少女妹キャラが兎斗で、クール系美女が佳奈、ミステリアスボクっ娘は瞳かな。

 なんかウザイからトドメ刺しておこうか。

「あと5人居ます」
「え?」
「奥さん、あと5人居ます」
「レオっち……貴様……!!」

 先輩はプルプル震え出した。態とらしいな。

「知ってたでしょ?」
「5人も居るとは思わないよ。イリアーナさんがどこかの聖女だとして、あと2人は聖女が居るとは思ってたけどね」

 王国での俺の評価は三国の聖女を手篭めにした大悪党だからな。

「よっ!  ハーレム王!」
「侯爵ですよ」
「ハーレム侯!」

 なんだそれは……

「まぁあとで紹介してもらえるんだよね?」
「ええ。ちなみにイリアーナは元帝国の聖女です」
「元?」
「はい。先輩は聖女のことをどれくらい知ってます?」
「実はあんまり知らない」

 王国はあまりまともに説明したりしないだろうし、知らなくても仕方ないか。

「説明めんどいんで帰ってからでいいです?」
「扱いが雑!  まぁ恒例行事はこの辺にして、まだまだ聞かないことあるんでしょ?」

 先輩はなんでも聞いてねと聞く姿勢をとる。
 というかこのやり取り恒例行事になるの?

「わかりました。それで先輩は俺が消えてからどれくらいでこっちに召喚されたんです?」

 ウルトに乗り込み領都へと戻る途中、俺は先輩を質問攻めにした。
 その中には兎斗たちから聞いた話も混ぜており、両者の主張に齟齬がないかの確認も兼ねている。

「レオっちが消えてからは大変だったんだよ……俺も同じパーキングに居たからね。えっと、そのほとぼりが冷める前だったから、レオっちが消えてから丁度2週間くらいかな?」

 これは兎斗たちが召喚された時期と一致するな。

「この世界に来てからどれくらい経ちました?」
「そこに居る妹尾さんとか矢場井さんから聞いてないの?  こっちに来てまだ3ヶ月は経ってないくらいだよ」

 これも一致する。嘘をつく気は無さそうだな。

「召喚された時、なにか言われました?」
「最初はなん  王国、ひいては世界を揺るがす大犯罪者の捕縛に協力してくれって言われたよ。その時はなんてふてえ野郎だ!  そんな奴は俺様が成敗してくれる!  と思ってたし、そいつを捕まえるためにレベル上げてた時は楽しかったよ」
「それでそれで?」
「レベルも上がってきて、ところでそいつ何したの?  どんな奴なの?  って話になって、話聞いてるうちに『これレオっちのことじゃね?』って気付いてからは一気にやる気無くしたね」
「なんで?」
「レオっちがやらかしたなら、やらかされた奴が悪いに決まってるから」

 なんという信頼、キラキラしたとんでもなく澄んだ目で俺を見てきやがる!

 まぁ俺も王国や先代勇者に対して悪かったという気持ちは微塵も無い。
 勇者や王国に謝るくらいなら喋ってる途中にトドメを刺してしまった魔王に謝るね!

「いやね、俺も捕縛相手がレオっちじゃなかったら王国に協力してたかもしれないよ?  けどレオっちじゃん?  あの偉そうなデブが言うことなんて信用ならないじゃん?」

 あのデブ……国王はマッチョだったから宰相だな。

「レオっちのことすげぇ悪く言うんだもん。俺はピンと来たね!  これは嘘をついてるデブの顔だってね!」
「嘘をついてるデブの顔ってなんすか」
「分かるっしょ?」
「分かるけども」

 うちの会社の専務みたいなやつでしょ?  よく考えたら宰相と専務どこか似てるもんね。

「まぁ、だから話半分にしか聞いてないんだよね。【完全記憶】なんてスキルは持ってるけど、そもそも聞いてないから覚えるもクソも無いって言うね」
「マジ宝の持ち腐れ」

 まぁその話は兎斗たちから聞いてるから別にいい。矛盾は無いし。

 要は、布告文に書いてあった内容をこれでもかってくらいデコレーションした話をしていたらしい。
 兎斗と佳奈は覚えてなかったけど瞳が覚えていた。

 なんか瞳は先に召喚された人間でーって話の時点で俺の事だと気付いたらしい。
 気付いた上で話を聞いていると、自分の好きな人のことを乏しめる内容だったので腸が煮えくり返る思いで聞いていたそうだ。

 だから俺の捕縛に成功しても王国に差し出すつもりはサラサラなかったらしい。
 俺を攫って、兎斗と佳奈を撒いてどこかの森の奥辺りで2人で生活していくつもりだったらしいよ。
 ……愛されてるね俺。

 その気持ちには報いてやりたいと思うんだけど、アイツ男なんだよね。だからどうしたらいいのか分からない。
 とりあえずは何とかするって豪語してたからその結果を待つけどね。

 失敗したならそれはそれで仕方ない。
 子供は作れないけどたまに一緒の布団で寝ることくらいはしてやろうと思う。それ以上の事はしないけど。

 まぁ、話は逸れたが先輩の話と兎斗たちの話も概ね一致しているのでとりあえず先輩を疑うのは一時停止だ。

 それより何より王国は俺や教国に対して殺意が強すぎない?
 時間軸的にベラの後任の聖女が現れてすぐにレベリング、勇者召喚が出来るレベルになったら即召喚してるよ?

 その召喚した勇者も2ヶ月程みっちりレベリングしてから戦争を仕掛けてくる……もう完全に計画的犯行だよな。
 まぁ召喚した虎の子の勇者が全員寝返ったのはざまぁでしかないんだけど。

 雑談混じりに先輩から色々と聞き出しながら俺たちは領都へと戻って行った。
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