異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

文字の大きさ
上 下
213 / 266
積み残し編……もうちょっと続くんじゃよ

準備

しおりを挟む
 領地へと飛んだ俺は、庁舎代わりに使われている石造りの大きな建物へと足を踏み入れた。

 ここはウルトが【無限積載】の権能をフルに活用して作った建物で、完成した時には意味がわからなさすぎて混乱したものだ。
 なんで【無限積載】で家建てれるんだよ……

 まぁ橋も架けられる能力なのだ、今更言うまい。

 ちなみに領主屋敷だが、まだ建設も始まっていない。
 俺はウルトや転移で移動出来るので先に入植した移民たちの家を優先させている。

 ある程度それが落ち着いたら立派な屋敷を建てる計画である。

「御館様!  お疲れ様です!」
「お疲れ。マークとダニエルは居るかい?」
「はい、お2人とも現在執務中です」

 庁舎の前を警備している警備隊員に断り中へ、2人の執務室へと向かう。

「やぁ。お疲れ様、調子はどう?」
「御館様!  来られるなら言って下されば……」

 いいよ。出迎えとか堅苦しいもの。

「それより今日は2人に話があってさ」
「話ですか?」
「大事で面倒臭い話だよ。ウルトは?」

 またどこかで工事でもしてるのかね?

「ウルト様は近くの村の予定地の開墾作業に行っております」
「あいつもよく働くね……呼び出しても大丈夫かな?」
「特に急ぎの仕事ではありませんので、大丈夫かと」

 ウルトの行方をダニエルに尋ねると、スラスラと答えてくれた。
 中断させても問題無いようなので【思念共有】で召喚する旨を伝えて【トラック召喚】ですぐに喚び出した。
 ちゃんと室内で召喚すると伝えていた為に小さくなっている。

『お待たせ致しましたマスター』
「全然。じゃあ揃ったことだし話を始めようか」

 俺は2人と1台に王国からの要求と、教国の答えを伝える。
 2人は俺の話を聞いて苦々しい表情を浮かべていた。ウルトは黙っている。

「酷い言いがかりですね」
「王国は何を考えているのでしょうか?」

 そもそも王国は俺が力を失っていることなんて知らないはずなのに何を考えてるんだろうね?
 もしかして、力を失う前の俺にも対抗出来る切り札でもあるのかな?

「まぁそういうことだから、兵を100人ほど見繕って欲しいんだよね」
「お任せ下さい。よりすぐりのクリード家諸侯軍を編成してみせましょう」
「よろしく頼むよ」

 マークは力強く頷いた。任せても大丈夫だろう。
 確かまだ19か20なはずなのに有能な男である。

『マスター、提案があります』

 ヤバい、またこいつ何かやらかすつもりだ……聞くのが怖い。

「一応聞こうか」
『はい。マスターのお考えでは私は後方にて奥様たちの護衛とのことですが……戦場の状況次第では私の力が必要となる場合があるかもしれません』
「まぁそれは……」

 否定は出来ない。

 王国の勇み足なら問題無いが、何かしらの切り札を用意していた場合はこちらも対策が必要となる。
 その対策はウルトになるのも間違いない。

『そうなると奥様たちのことが不安になるかと思われます。ですので、例え1万の兵に攻められたとしても大丈夫なようにしておくべきです』
「お前が護衛する以外にそんな都合のいい方法があるのか?」

 1万の兵に攻められる……俺とジェイド、フィリップの3人でもかなりキツいというか無理だと思う。
 さすがに多勢に無勢が過ぎる。

『あります。この世界で最も堅牢な要塞をここの領地にご用意します。領地に残る警備隊で籠城すれば1万の兵に攻められてもビクともしない要塞です』

 へぇ、そんな要塞を用意出来るのか……
 一晩でこの庁舎も作り上げたウルトにならそれも可能なのかね?
 これだけウルトが自信満々なんだ、任せてもいいだろう。

「分かった、任せる。何日ほどかかる見込みだ?」
『2日ほど頂ければ……マスターに御協力頂けるのであれば1日で可能です』
「協力?  嫁たちの安全のためなら協力は惜しまないけど」

 よめーずのためならなんでもするよ?

『それでしたら準備が整いましたら呼びかけますので【トラック召喚】の使用をお願いします』
「【トラック召喚】?  どこかに行くのか?」
『はい』

 ふむ……まぁいいか。

「分かった」
『ありがとうございます。それでは行って参ります』

 ウルトは【飛翔走】を使い窓から飛び出して行った。
 どこまで行くのかしらね?

「さて……じゃあ諸侯軍の編成と後のことは任せるよ」
「お任せ下さい。御館様はこれからどうされるので?」
「とりあえず屋敷に戻るよ。あ、そうだ!」

 大事なことを伝えるのを忘れていた。

「ダニエル」
「はい!」

 呼びかけると元気よく返事をする。

「リンが妊娠した。おめでとう、これでキミも叔父さんだ」
「姉上が!?  御館様、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」

 2人は畏まって祝いの言葉を述べる。
 家臣でもあるけど、義理の家族でもあるんだからそこまで畏まらなくてもいいのに……

「しかし御館様……」
「ん?」

 ダニエルはなんだか言いづらそうにこちらを見ている。

「兄上にも子供はおりますので……私は既に叔父さんです」
「確かに……!」

 そういえばそうだった。
 ねだられて勇者と魔王との戦いの話したわ……

「申し訳ございません!」
「なにが?」

 どうやら家臣が当主に意見するというのは中々にハードルの高いことのようだ。
 今のは別に意見でもなんでもないでしょうに。

「まぁ気にするな。なにかあったら気軽に言ってくれて構わない。2人は家臣でもあるけど家族でもあるからさ」
「御館様……」
「勿体ないお言葉です……」

 2人は俯いて咽び泣く。大袈裟だなぁ……

「じ、じゃあ戻るから……後のことは任せる」
「「はっ!」」

 なんだか居心地がよろしくないので急いで憩いの場である聖都の屋敷へと転移した。
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...